orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

AWSに挑む、っていうミスリード

 

日経にこういう記事が載っていた。

 

www.nikkei.com

さくらインターネットが国内のクラウド事業で外資大手に挑む。北海道石狩市内のデータセンター(DC)にGPU(画像処理半導体)を搭載し、生成AI(人工知能)に対応したクラウドサービスを始めた。日本のクラウド市場は米アマゾンが半分近くのシェアを握る。「政府クラウド」の提供事業者に国内勢で初めて選ばれた国産クラウドの一角として、経済安保でも重責を担う。

 

お気持ちはわかるけど、見出しがおかしい。Amazonに挑む・・ってのは筋違い。どんなにさくらインターネット(もしくは国内のデータセンター業者)ががんばっても、戦いにすらならない。もし、文字通り戦ったら踏みつぶされると思う。規模が違い過ぎる。八百屋とイオンぐらい違う(どちらが悪いとは言ってない)。

国内のデータセンター業者がやるべきは、戦うことじゃなく、国内資本企業だからできること。つまり、ここでも「経済安保」と言う言葉が出てくるように、国内資本じゃなきゃいけないことに徹底して注力すること、だと思う。

一方でむしろ、AWSやAzureなど、外資クラウドと徹底的にコネクションをつなぎやすくすることも重要だ。どうせほとんどの顧客は外資クラウドを使ってるんだから、連携しやすくすれば、国内でやるべきことが自然と集まってくる。外資クラウドでできることは全部もうそっちに任せて、選択と集中、である。

じゃあ、その「国内でやるべきこと」って何なの、という話だ。これは、まずはデータが全てだ。日本以外に流出したらいけないデータを守る蔵であること。全くわかりやすい。外資に人質に取られたらいけないものは、国内の資本の不動産に置くこと。

そして、置くだけではだめだ。そのデータを活用する計算資源自体も実は日本でおさえる必要がある。なぜかというと、データだけでは何も生み出さないからだ。最近流行のAIで言えば、AIのモデルがまずある。しかしモデルだけでは何もできずそれを利用してGPUが計算して結果がでる。このデータから計算して結果が出るところまでを、一つの「安保」として確保しなければいけないのが今回のポイントである。

いくら、データは日本国内の国内資本業者でカバーしてます、と言ったって、それを活用するGPUなどのリソースが無ければ今後、産業自体が立ちいかなくなる可能性すら秘めているのが現状である。

世の中がAIで生産性が良くなりました、って言った途端に、AIを動かすための資源が全て外資クラウドにあり、いくらモデルは内資側にあったところで活用できない、みたいなことが起こり得るのである。

今後の企業活動は、「AIのモデルを作り出す」ことに資源を集めていくはずだ。なぜかというと、企業は知的活動をできるだけ永続化したいと言う本能があるからだ。中身の人間たちはいつか亡くなるので、智を次の世代に渡すことは大きな課題となっている。しかも少子化問題が現実化している今、むしろ国が先頭に立って推進している。

そこで、国自体の智、みたいなものを外国の資本に渡すのは、これはおかしい。だからこそ内資のデータセンターに大きな期待がかけられているけれども、まるでAWS VS、みたいな見出しが付けられているのでそれは違うよ、という話である。

まあ、企業の智が生成AIとして構築される、というのはSF的な話だが、それならそれで、その智を守る箱としてのデータセンターが、あんなにデータセンター然としていたら敵から目を付けられ攻撃されちまうんじゃないか、みたいな物騒なことまで考えてしまう。むしろ、全然別の形をしてカモフラージュした方がいいんじゃないかな、ってね。