orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

今のクラウドネイティブ世代って、データセンターに入ったこともなければ物理機器を見たこともないんじゃないか

 

過去を振り返ると、私は7年間ほど、データセンターに入ってサーバーラックを開けて、物理機器を管理していたことがある。インターネット回線を引き込んで、ファイアウォールやロードバランサーで区切りつつ、ネットワークスイッチを散りばめたり、物理サーバーを設置したり。生身のインフラ基盤を触っていた。

ある日、クラウドが現れ、わざわざ物理的な対応をしなくても、Webブラウザだけでやるべきことができるとわかった。これは画期的だ、ということでのめり込み、今後はクラウドだということで、クラウド専任になった。もうデータセンターにも行かないし物理機器も触らないことにした。楽だ。

そこから時間が流れ、クラウド専任をITエンジニアとして名乗っても何の違和感もない時代が訪れた。ある程度のビジネス規模になり、一人では手に負えない規模になったので若手も手伝ってくれるようになった。順調そのものだ。

ただ、このストーリーの中で気になることがある。

若手が、データセンターに入ることも無い。どうやってセキュリティーを担保しているのか見たこともない。サーバーラックの前に立つこともない。物理機器のあの独特の匂いや騒音も知らない。緑やオレンジのランプで正常性が確認できることも知らない。全ての機器には電気がつながっていて契約している電力を超えて使い過ぎてはいけないことも知らない。電源を冗長化することの意味も知らない。

インフラエンジニアと言いながら、物理の部分が全て抽象化されてしまった。もう若手のキャリアは過去のインフラエンジニアとは違っていないか。確かに若手は着実に育ちつつあるが、彼らは物理の手触りがないので、何を把握できているのか。物理を全部抽象化できた分、仕事の仕方が本当にスマートになったんだけど明らかに抜け落ちているとは思う。

仮想サーバーだ物理サーバーだネットワーク機器だと言っても、Webブラウザにそう書かれているだけで、概念として実感しなければいけないのは少し気の毒なように思う。私は見てきた人であり、彼らは見たことがない。できれば、業務では使わないとしても安いサーバーやネットワーク機器を買い、若手に研修として構築させてあげたいような気もする。

例えばこんな、ね。

 

knowledge.sakura.ad.jp

 

若手たちにこのインターンシップ受けさせたいくらい。なぜこの部分の欠如を懸念したかというと、何か起こった時の想像力の問題。物理的にこういうことが起こったら、クラウドはこうなるだろうなと言う感覚が付かない。そりゃそうだよね。例えばサブスクで音楽はたくさん聴くけど、ライブに行って生音聴いたことない、見たことないってのと似てる。ギターの音は知ってるけどギターがどういう手触りでどう音が鳴るかなんて知らんよね。

プログラミングとノーコードの話とも似てるけれど、どんどん便利になるのはいいが何か問題が起こった時の想像力がどんどん奪われていく。

クラウドの専門家になるために、クラウドの勉強をさせるのではなく、そのもっと下のレイヤーの知識欠如を心配しなきゃいけなくなっている。何て難しい時代だろう。だって、それはやっぱり仕事場にはないんだもの。