orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

インフラエンジニアの仕事が無くならない理由

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私は今ではクラウド専門のインフラエンジニアの肩書だが、同業の人に読んでもらうと響くんじゃないかというマンガ、読み切り話。講談社の【2020年後期・第78回ちばてつや賞一般部門】入選作品、伊藤拓登氏のインスタントミュージック。

 

comic-days.com

 

ちょっと近未来の話で、作曲の世界が機械学習による自動作曲が中心になった、というあらすじ。いくら作曲を人間が学んでも、AIによる成果物の方が効率よく人間のニーズを満たす。しかも、その結果まで学習していくので永遠に人間はかないっこない、というのがベースの話です。

何度か読み返して思うのですが、インフラエンジニアってこの主人公と同じような思いしてるんですよね。

IT業界に入って初めて目の当たりにしたのが、9割の人々はプログラミングを基礎とする開発業務に行くということです。開発しリリースした後は運用保守に廻りますが、大きくはプログラミングを基礎としています。

一方でインフラエンジニアは全体の数%で、専門の会社でない限りはマイノリティーの立場です。サーバーやネットワーク、監視、バックアップ、性能やセキュリティー要件など、開発業務の方たちとは別のミッションがあるのですが、プログラミングとは疎遠です。シェルプログラムや、作業の自動化のためのコードなどは書くことがありますので、業界外からみたらプログラミングをやっているようにも見えるが、根本的に全く違います。

今から10年前くらいにクラウドがやってきて、オンプレミスの作業が徐々にクラウドに置き換わっていった時期がありました。私はそれに乗ってクラウドの方に主軸を移しました。ただ、全部クラウドになるとどこかのAWSが言っていた気がしますが、そうはならなそうな気がします。それは極端で、オンプレミスのワークロードと、クラウドのワークロードは共存していきそうです。特にデータの居場所が大事になって来た時代ですからね。

で、どうもクラウドが進化していけばいくほど自動化が進み、インフラエンジニアの仕事は無くなっていくというプレッシャーをしばらく受けていたことがあります。Webの中でポチポチってやっていればサーバーもできるし、セットアップも向こうでやってくれるから、最終的には仕事無くなるよね、と。

Kubernetesが有名になったときも、開発者がインフラも握るから、インフラエンジニアいらなくなるかもと本当に誰かが言っていたのを聞いたことがあります。

で、無くなりそうか。

全然無くなりません。むしろ、オンプレミスでもクラウドでも、最近のデジタル化でビジネスの根幹がITになったおかげで、それを面倒見るインフラエンジニアは引く手あまたとなっています。ただやっぱり、業界としてはマイノリティーなので絶対的な人数が少なく、いろんな現場がインフラ部分については四苦八苦しているのが現状です。

もし、頼りになるインフラエンジニアが目の前にいる現場は、その人を大事にした方がいいですよ。

さて、何で無くならないんだろう、と思ったとき、作品中のセリフが当てはまります。

「マシンが自分で曲作れる時代だっつーのによ。いまだに俺らが必要とされてんのはなんでよ?。それは俺らほどマシンを使いこなせる奴がいねぇからじゃねぇの?」

まあ、その通りなんですよね。やっぱりインフラエンジニアで活躍している人はマシンに対する執着が異常なんですよね。

仕事を超えるんです。

システムを動かすことが目的ではなく、システムが動いている仕組みをハードウェア、OS、仮想基盤、ネットワークなど、低いレイヤーまで理解し、よりよく動かしたい欲求があるんです。

だから仕事は手段に成り代わることがあり、その仕事を請けることで未知のハードウェアやソフトウェアに触れる、なんてことが動機になったりするんです。

で、今、いろんな便利なサービスが百花繚乱なんですが、それらを組み合わせてきちんと動くシステムを最終的に整え、そしてそれを安定的に動かし続けることって、未だに簡単なことではないです。自動化されている部分が多いからこそ、何かが起こった時に誰も何が起こったかわからなくなっている。

そのときに、これまで身に着けたいろいろな知識が、日々役に立っています。だから、やっぱり無くならないんですね、インフラエンジニアの立場って。

これからも、いろんな技術の進展があり、「仕事がなくなる」っていつも言われていくんでしょうけど、もう20年近く似たような話をされていて、全然無くなる様子もないので無視して今後も楽しみ続ければいいんじゃないかと思っています。