orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

「残業」に対する世間の認識は、現実を反映していない

 

残業は悪だ、みたいな論調は根強い。しかし、私が体験した若手の残業観は少し世間とは異なっているので紹介してみたい。

みな残業は嫌いだ、というので残業時間をゼロにしたことがある。全ての業務を見直し効率化・自動化できる部分を最大化した。その上で少ないメンバーでも、皆が効率的に動けば残業時間は著しくゼロに近い数字にできた。

残業がほぼゼロなので、メンバーはモチベーション高く仕事できるいい職場ですね!とは残念ながらならなかった。以下の弊害が明確になった。

 

・業務時間内の忙しさが激しくなった。やたら効率がいいのはいいが、気が抜けない。気を抜くとマネージャーから矢が飛んでくる、緊張感が生まれた。

・自分のペースより、チームのワークフローが優先された。

・あふれる仕事はマネージャーがてきぱきこなす、ということが前提になったので、チームワークよりも仕事を片付けるほうが優先された。

・残業代がないので給料が減る

・空き時間がないためにコミュニケーションにかけられる時間が減った

・残業がない職場なので、「暇な職場」扱いを会社から受けるようになり、人員増を言いにくくなった。

 

いろいろあるものである。行き過ぎた残業規制は、結局はメンバーの活気を無くしていく。残業のない楽な職場なはずなのに、幸福感が失われていく。

ここ最近、以下のマネジメントスタイルにしている。

 

・法的に問題になる残業時間をメンバーが把握した上で、残業時間のコントロールはメンバーにある程度任せる。※不自然な数字の場合はもちろんマネージャーが介入するが

・仕事が忙しいときに、残業をする断りは入れなくてよいとした。

・仕事を任せる際のマネジメントを薄くして、チームに権限を与え、どう仕事をこなすかについてはチームで議論し進めていくようにした。そこに残業時間の使い方も加えた。

 

残業一つで仕事のさせ方も大きく変わる。残業ゼロにすることと引き換えにマイクロマネジメントを決行し、優秀かつ繊細なオペレーションで結果を残し残業はゼロになるも、チームメンバーの主体性まで奪っていた。

だから、残業をゼロにすればいいってものじゃない。

プロセスの改善も含めて、チームに権限を与え、その中に残業の最適化も組み込ませてあげないと、彼らは「必要な残業を取り上げられた気分になる」ということである。どんな手段を使ってでも、残業ゼロを実現・・のような雰囲気になってしまった。

そこに、収入減も合わせて降ってくるものだから、チームメンバーにとってマイナスの感情が生成されてしまうのである。必要な残業なら残業をさせる権利を与えないと、やる気もなくなるわ、不満も貯まるわで、いくばくかの残業代が会社にとって利益になるくらいのメリットしか産まないのだ。それと引き換えに彼らのやる気がなくなるのであれば、こんな不条理な取引はない。

 

チームメンバーだって、無制限に残業はしたくない。そして、何も用事がないのに座って残業代が欲しい、なんて浅ましい考えの人も少数である。ほとんどの人が、忙しいから残業をしてきっちり仕事を終わらせたいと思っている。

その能動的な気持ちを大事にしながら、法的に問題のない範囲で残業を許し、かつそれでも収まらない場合は仕事を調整したり、人員増を画策したり、という方向性にないと、残業削減は、薬ではなく毒になってしまうから注意である。

ま、私は残業ゼロがポリシーなんだけど・・。他人にポリシーを強制したら、そりゃうまくいかないよね。