orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

クラウドサービスと長年お付き合いして感じること

 

インフラ基盤をクラウドサービスに載せて管理することに、かれこれ10年近く携わっている。10年は長いので感想を書いてみたくなった。

とにかく強調したいのは、クラウドサービス自体の仕様が日々変わり続けるということだ。サービス開始当初はかなり雑な変更もあったが、ここ最近ではかなり慎重になりつつある。1年前にアナウンスするとか、変更後も過去の構成を許すなど。ただ、これも全ての現在を保証してくれることはない。場合によっては逃げの手も許さずサービス廃止してくることもある。

管理者が行うべきことは、毎日、お知らせを見逃さないことに尽きる。

クラウドベンダーは、変更を通知さえすれば全て許容されると思っている。どんな変更も顧客に取って前向きな書き方をしてくるが、本来前向きな変更など、1つもないのである。一度構築して安定して動いているのに、変更なんて加えるな、機能追加などいらない、なのである。「ビジネス上の理由により」なんて言葉が出てきたら、ほぼベンダー都合である。

そこで、クラウドサービスに管理者が行うべきは、クラウドベンダーに苦情を言ったりSNSで愚痴ることではない。この些細な変更を速やかに察知し、そして変化に適応し続けることだ。こういう変更に対しては、こう行えばいい、と。何度か経験しているうちに、ああ、クラウドサービスを使い続けるとは、仕様変更に追随して変更を加え続けることなんだな、ということが身に染みてくる。だから、一度作ったら何もしないで動き続けることはないと思った方がいいし、あるとしたら単なるラッキーである。

クラウドサービスの裏には、たくさんのソフトウェアやハードウェアが隠れていて、それらのサポート期間もまちまちだ。クラウドベンダーもその調整の結果、サービス提供ができなかったり変化を余儀なくされる。また、あまりにもサービスが売れず、負担ばかりでビジネスとして成立しない場合は、停止したり他社へ移管する場合もある。

それなら、初めからリリースしないでよ・・というのはユーザー側の本音だが、自前でデータセンターを借りて構築したところで同じことがある。使っていたソフトウェアが販売停止・保守停止したり、他ベンダーに身売りするなど。オンプレで四苦八苦していた頃を思い出すと、変化は、クラウドサービスの方が穏やかだと思うことすらある。

クラウドサービスはたくさんのユーザーを抱え、そのユーザーの声を聴こうとしているので、ユーザーの痛みはクラウドベンダーも理解してくれている。したがって、年々、ユーザーが困るようなことはしないように、という目的のもと、品質は年々上がっているのは間違いないと思う。サービス当初に起こっていた色々なトラブルについて、内部的な知見が貯まっているせいなのか、同様の問題は起こさなくなった。新しいサービスをリリースする際も、周辺サービスに影響を及ぼさないような配慮をしてくれていると思う。今からクラウドサービスを利用するなら、サービス品質については期待していいと思う。それぐらい、ここ10年で彼らの運用品質は驚くくらいの成長がある。クラウドと言えば新機能追加ばかりが注目されるが、中の人のがんばりももっと注目されていい。

最近のクラウドは、インターネットには繋げないで会社のネットワークとだけつなぎ、閉域で利用されることも多くなった。この辺りは日本の通信会社を中心に、根気よく利便性を追求してくれた結果でもある。昔は中々大変だったこの工事も、最近はよりスムーズになった。データセンターを利用してオンプレミスで組み上げるときは、通信会社と協力してよく回線を引いたものだが、その感覚でクラウドの内部ネットワークと接続できるようになった。昔はこうはいかなかったので、ここ10年来の進歩だと思う。

10年前のクラウドサービスと今では、同じサービスでも中身は違うものになっている。これからも変化し続けるのだろうし、ついて来れるユーザーだけがクラウドサービスを利用し続けられる。IT業界とは「勉強し続けないといけない」とよく言われるが、当然のような話である。