orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

クラウドロックインされない必要性が高まる世相

 

特定のクラウドサービスでしか使えないサービスはとても便利かもしれないけど、そのクラウドサービスを離れたら実装できない。つまり、そのクラウドサービスの基盤に依存したソフトウェアと言える。

これって、どの基盤でも動くソフトウェアと比べると、かえって劣っているんじゃないのかな。別の基盤では利用できないということだよね。

最近のクラウドベンダーの動向を見ると、ほとんどやっていることはソフトウェア開発会社と同じなんだけど、そのソフトウェアを他の基盤に持ち出せない傾向にある。

それなら、どこの基盤でも動くソフトウェアを持ってきて、組み合わせて実装したほうが安全じゃないのかなと思うんだけれど。

ソフトウェアはデータを生み出す。しかし、そのデータを処理するソフトウェアが特定の基盤でしか動かないとすると、その基盤とデータは一緒にないと利用できないということになるよね。

その基盤が将来的に永続するのか。他の基盤が、未来のある時期優勢になって、移行したい欲求がでてくるのではないか。そのとき、まずデータを動かせるのか。動かしたデータを他のソフトウェアで代替できるのかどうか。

もともとクラウドサービス自体はIaaS、つまり基盤(インフラ)から始まったんだけど、そこにいろんなソフトウェアで実装されたPaaS(プラットフォーム)やSaaS(サービス)が上に乗っかっていった。

私はクラウドサービスが出て来た当初から市場を見ているが、昨今はもはやIaaS自体は大きく変更されることはなく、クラウドベンダーはたいていPaaSやSaaSを拡張しては、先進性をアピールしている。

自社データセンターでもクラウドのワークロードを動かせると、自社データセンターにクラウドの基盤を置くようなトリッキーな構成もあるが、それこそ特定のクラウドサービスへの依存度をさらに深めることになる。

これはまさに「クラウドロックイン」の問題であると思う。クラウドサービスのインフラ基盤に着目し特定のクラウドサービスを選ぶところまでは良いが、そこでしか動かないソフトウェアを選ぶことで、特定業務がロックインされてしまう現象を言う。

クラウドベンダーは、ユーザーをロックインできると長期に安定収入を確保できるのでどんどん自社のクラウドサービスを拡張する。それで成長している間はいいのだが、中にはあまりユーザーに響かなくて赤字事業となってしまいサービスを止めてしまうことも実際にある。

また、ロックインされて困るのが、利用料の値上げである。支払わざるを得ないが、他に逃げられない。基盤選択の柔軟性をソフトウェア実装レベルで捨てているので、もし移動しようとすると大変な大型移行プロジェクトとなってしまう。

クラウドベンダーは競合に対する自社の優位性を高めるために、毎年イベントを開き多種多様なサービス拡張を行うが、ぜひ気を付けなければいけないのはクラウドロックインの傾向だ。その機能が単に便利だ、より便利なっていく以外にも、気を付けなければいけない点は多い。

できるだけ、基盤とソフトウェアは切り分けた方がいい。別の基盤でもそのソフトウェアが動くのか。データさえ別の基盤に移行すればワークロードは継続できるのか。そのソフトウェアが使えなくなるとしたら、別の代替ソフトウェアは存在するのか。

特定のクラウドサービスに心酔し、絶対に倒れない。未来永劫あり続ける。ユーザーに有利な取引条件を提示し続けてくれる。そんな幻想を、こんなに世界が混乱している状況でまだ信じているユーザーがいるとすれば信じられない。設計段階で、可搬性を異常に気にするぐらいでもはやちょうど良い。「それで動くことは分かった。では、そのクラウドサービスが3年以内になくなるとしたら、対応できるのか?。」という視点が今後とても大事になると思っている。