orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

「Oracle Alloy」オラクルのメッセージは市場に届くか

 

最近、テクノロジー業界全体がガートナーハイプ・サイクルで言うところの幻滅期に入っている気がしてきていて、メタバース、NFT、Web3、Kubernetes、仮想通貨、いろいろな新技術が世界を席巻すると思ったら、伸び悩みどころか伸びてもいないんじゃないかという雰囲気もある。

そんな中、今日のOracleのニュースは面白かった。

 

ascii.jp

 オラクルの年次イベント「Oracle CloudWorld 2022(OCW 2022)」が2022年10月17日~19日、米国ラスベガスで開催された。

 今回もOracle CloudInfrastructure(OCI)、Oracle Cloud Fusion Applicationに関する多数の新発表が行われたが、中でも注目すべき発表は「Oracle Alloy(アロイ)」だろう。日本を含む世界各国でソブリンクラウド(各国/地域ごとの法規制、データ主権に対応したクラウド)へのニーズが高まっているが、その課題に対するオラクルならではのユニークなソリューションだからだ。

 本記事ではこのAlloyについて、OCW会場で聞いた3氏の話からその特徴やオラクルの狙い、日本市場における展開などをまとめてみたい。

 

Oracle Alloyについては上記記事を読むと理解が速い。手っ取り早く言うなら、パブリッククラウド環境の設備全体を、ユーザーのデータセンターにまるっと置くことができるというソリューションだ。ただ同様の話はずっとあった。AWS OutpostsやAzure Stackと言ったところは有名だが、今一つニッチなところで収まっているように思う。

今回のOracle Alloyについては、コンピューティングリソースだけの間貸しして、管理はあくまでもクラウドベンダー・・・ということではなく、アカウント管理・課金請求・ポータル画面までローカル管理ということで、いわばオンプレミスの世界でクラウドを動かすような発想だ。

ソフトウェアもハードウェアも両方持っているOracleらしい発想で、保守の問題がどうなっているかはよくわからないが、面白い。

 

「われわれの経験から言って、おそらく3種類のパートナーがAlloyを採用することになるだろう。1つめはソブリンティやデータコントロールに対する(法規制の)課題がある企業。テレコムやテクノロジー、ヘルスケアなどの大手企業が(規制を順守しつつ)自社ブランドのクラウドサービスを持てる。2つめがSIer。SIerは、15年前には自社のデータセンターを持って(アウトソーシングなどのサービスを提供)していたが、競争力低下で他社のパブリッククラウドを採用するようになった。だがAlloyであれば、再び自社でクラウドサービスを持つことができる。そして3つめが、自社開発のアプリケーションをサービスとして提供できるインフラを持ちたいISV(ソフトウェアベンダー)だ」(マグワーク氏)

 

よく、国産クラウドはメガクラウドに機能が劣ると言われたが、今回のスキームであれば機能自体は同様となる。もし、導入が簡易なのであれば、特定地域に根差したローカルなクラウドを構築することが可能になる。インターネットと完全に切り離すことだって可能なのだろうかはわからないが、コンセプト的にはできそうな気がする。

あまりに気になったので、公式ホームページまで見て来た。

 

Oracle Alloy発表: クラウドのパワーをあなたの手に

Oracle Alloy Partnersは、自社のクラウド・プラットフォームを独立して運用できます。パブリック・クラウドでは通常満たされない規制やセキュリティ要件など、特定の顧客、業界または市場のニーズを満たすためにクラウド運用を制御できます。また、既存のリソースと統合するプロセスを制御したり、ビジネス要件をより適切に満たすことができます。たとえば、パートナーは、カスタマー・サポートと運用のために人材配分を使用し、パッチ適用、アップグレードおよびロールバックを制御できます。

 

読めば読むほど、SIerがビジネスしやすいコンセプトだな、と思う。

リスクもある。保守のしやすさだ。ハードウェアもソフトウェアもバージョンアップして行かないといけないが、どれぐらいの手間がかかるのか。また、市場が広がらないとって撤退することはないのか。

一度、ローカルでクラウド環境を作って顧客に提供し、そこでサービスが止まる要素が少しでもあればなかなか手を出しづらい。こういった大型のリソースを収容するような施設の場合、競合のサービスに移行するのも大変だ。

まぁ、パブリッククラウドは巨大なだけに止めるということをしづらいので、そのテクノロジーをそのままオンプレに持ち込むというロジックなら、サービス辞めます、とはなりずらいのはわかる。

未来永劫続けるクラウドサービスを始めるための基盤というよりは、何かの大型プロジェクトの基盤として使われることはあるのかもしれない。自治体のインフラ基盤などなど・・。システム構築込みで、更改ごとにハードウェアやソフトウェアごと変えるのなら、リスクも限られる。導入時に保守期限も確認できるだろう。

パブリッククラウドか、それとも完全にオンプレか、みたいな極端な議論にここ10年は巻き込まれた感もあるので、Oracle Alloyのような発想は実は歓迎である。実際、テクノロジー企業がパブリッククラウドをこれ以上拡大して自前で面倒を見続けるのは、限界があるのかもしれないね。テクノロジー企業はテクノロジーだけ売っていたいと思うのも不思議じゃないと思う。今後も注目したい。