orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

クラウドサービスの信用ならないところ

 

クラウドサービスは、現在たくさんの選択肢が溢れてて、一般の方にはさぞ便利に見えていることでしょう。おかげでクラウドサービスの資格試験は出題者側も問題作成が楽だと思います。薄く広くサービスのことを問えば、まるで体系的な知識のようです。年次のイベントでは毎回新種のサービスやアップデートの話題にあふれ、今日も絶好調のように見えます。

ただし、です。私はエンドユーザーの希望に合わせ、クラウドサービスを選択し、組み合わせソリューションを提供するITエンジニアの立場です。今や、クラウドサービスベンダーが毎度語るように、豊富な選択肢から便利なサービスをチョイスし、パパっとWebブラウザから実装すればたちまちサービスイン、という世界に踏み込めたでしょうか。それはちょっと違います。下記のニュースはリスクの象徴のような事例です。

 

gigazine.net

Googleは2013年には「Googleリーダー」を終了、2018年には「Google+」を終了といったように多数のユーザーを抱えるプロジェクトをバッサリ終了してきました。新たに、IoTデバイス管理サービス「Cloud IoT Core」のサポート終了がひっそり告知されています。

 

これは、Google Cloudだけに起こる話ではありません。いかなるプラットフォームも、1年前にサービスを終了すると告知するのは日常茶飯事です。記事ではGoogleが・・とシニカルに表現されていますが、どのクラウドサービスで起こります。

例えば私のような立場だと、構築のお仕事を頂いて、それで「こんな便利なサービスがありますよ!」とエンドユーザーにご紹介します。いいね!大手のクラウドサービスだし、それでいこう、と。それで実際に実装して試験して、よしサービスイン。普通の構築案件です。ところが急にこういったサービス終了のレターを受領し、顔が青ざめる。エンドユーザーに恐る恐る伝えると「クラウドだからこういうこともあるか」と諦め半分でがっかりされるところまで、目に浮かびます。

この場合誰が悪いのかという話ですが、クラウドサービスベンダーが悪いのかと言われると、彼らは規約に基づいてサービス運営しているだけです。選んだ私が一番悪いんだろうな、と。エンドユーザーはクラウドサービスの目利きまで含めて信頼してくれていたわけですから。だから、どんなにイベントで、キラキラプレゼンで新サービスを案内されても、全然響かなくなってしまったことを、全世界に向けて宣言しておきたいですね。

ソフトウェア業界は一方で歴史も長いので、リリースしたら少なくとも5年は使え、その後もアップグレードパスを示すという慣習があります。クラウドサービスのように1年後に突然利用不能になることは通常ありません。Internet Explorer 11ですら閉めるときは相当慎重にやってますから。

だから、やっぱりクラウドサービスも、仮想サーバーを借りて新しいOSの上にソフトウェアを導入して・・という手組みの構築が未だ持って主流です。だって、他のクラウド基盤に持っていったり、オンプレミスに移行するのも簡単ですから。特定のクラウドベンダーでしか動かないサービスに依存すればするほど、単純にリスクを受け入れることになります。

ちなみに、エンドユーザーに「移行しなきゃいけないんで、作業費がこれくらいかかるんですけど・・」と相談したら、「いい商売だね」と切り替えされるのがオチで。それでも必要ならばそうしますけど、信頼はもうそこで落ちてるので、そのタイミングで他社に切り替えられるのは覚悟しなきゃいけないです。

まぁだから、本来クラウドサービスベンダーも、サービスを1度リリースしたら10年間はアップグレードパスを示すことを確約することを検討してほしいですね。上記のGoogle IoT Coreは2018/2/21正式リリースですから、5年でクローズです。かつ、リリースして時間が経ってから使い始めた人もいらっしゃるでしょうから。構築してエンドユーザーに渡すプロダクトとしてはあまりにも・・です。

クラウドサービスを選択し構築することは、テクニカルな面ばかりがもてはやされるのですけど、こういったビジネス上の目利きが大事になってきます。いくら便利でも、信頼とか信用とか評判とか、目に見えないものまで変数になってくる。

「なんでクラウドサービス、もっといろいろメニューがあるのに、いつもこんなド定番で設計するんですか?」という質問には、こういったバックボーンありきでお答えしてますね。「信用ならないから」って。