orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

営業と現場がかみあっていないと、業務提携は破談する(した)

 

みずほとLINEの業務提携が破談した。

 

linecorp.com

LINE Bank設立準備会社では、「LINE」の月間利用者数9,400万人を超えるユーザーベース、ユーザビリティの高いUI/UXと、みずほ銀行が培ってきた銀行業におけるノウハウを活かし、LINEアプリ上で全ての銀行サービスが完結する他にはない“スマホ銀行”の提供を予定していました。

今般、社会・経済環境における金融DXの進展や、提供サービスの安全性への関心の高まりなどを踏まえ、両社で慎重に検討した結果、安全・安心で利便性の高いサービス提供には、更なる時間と追加投資が必要であり、お客さまのご期待に沿うサービスのスムーズなご提供が、現時点では見通せないとの両社見解に至りました。 

 

2018年に発表してから、中止するのに4年強もかかったということだから、まあ中ではいろんな葛藤があったのだろう。「メンバーの音楽の方向性が違った」と言ってバンドが解散するのと似ているが、そういえばまだデビューすらしていなかった。一曲も歌うこともできなかった。どれくらいのお金を使ったのかわからないが。

私も似たような状況を経験したことがある。ある会社の技術役員がクラウド化にやけにこだわり、私の会社との商談になった。打ち合わせを何度も重ねたが、その度に違和感が生まれた。打ち合わせの参加者には、その役員と一緒に数名の現場の技術者が出てきていた。その技術者たちの態度が明らかに、クラウド化に消極的なのである。

そもそも要件を出してきたのはその会社なのに、要件そのものに、現場の技術者がケチをつけ始める。

もしクラウド化したら、こんな問題が起こる。メリットはなんなのか。それ以降の運用は。等々。

あれ、話がおかしくないですか。と思ったのは4回目の打ち合わせだったかな。どう考えても、技術役員と現場の技術者の間がおかしい。技術役員はクラウド化に安直に飛びつき、そして当社もそれに乗った。しかし、具体的に話を煮詰める前に現場の技術者たちを説得する必要があったが、それすらも当社に丸投げされてしまったかたちだ。

完全に状況を把握したので、当社から商談のお断りの話をさせていただいた。まだ契約に至っていなかったので、むしろこんな話を受けていたらきっと、相手の会社の政治的な戦いに巻き込まれる。技術役員がオーダーしたベンダーのせいで、現場は大混乱だ、というストーリーを描かれている可能性があったので、取引しない権利を行使したというオチである。

今回のみずほとLINEの間で、どんな葛藤が起きたのかは知らない。ただ、一つだけ言えることは表向きに語られる理由と、実際の破談の内容は、絶対に一致しないということだ。表向きはきれいごととして語られるが、裏はもう大変である。現場の誰かと誰かが、思いっきりぶつかり、おおごとになった結果沈静化するまでにいくらかの時間を要し、さて再始動するかといろいろ策が練られなんとか再開したものの、また同じような、もしくはまた違った問題が起こって、もう無理じゃね、となった、と。

大事なことは「肩書が偉い人同士の会社間合意」ほど、正確性に欠けるということだ。本当に現場を動かしているキーマン同士が、腹を割って話し合ったのかということ。うまくいくはずのないお見合いが、政治的戦略によってまかり通ってしまう世の中だが、うまくいかんもんはうまくいかんのである。

まぁ、現場同士が奇跡的にかみあったみたいな例もあるので、握手することそのものは否定しない。ただ、本当にかみあってから営業的な発表をするといいよね。メディアを大量に呼んでスティーブ・ジョブズみたいに華々しくやりたい営業サイドの気持ちはわかるけどさ、現場の技術者は気難しいのがどの会社でもデフォルトだよ。