国産クラウドを育てるとは言うけれど

 

ここで言うクラウドはIaaSのことという前提を切っておきます。

クラウドを語る上で一番偉大なのはAWSです。AWSのビジョンが、日本のIT業界が考えていたインフラの常識を凌駕していたのは間違いないです。

AWS登場以前は、データセンターは独立したものでした。会社のサーバールームのすごい版、であり、こんな立派な施設でサーバーを預かっているんだから。ということでハウジングなりホスティングなりという市場がかなり伸びました。2000年代ですね。

AWSが公開されたのは2006年7月。業界はかなり冷ややかに見ていました。冷ややか過ぎてこのころはニュースにもなっていません。そもそも、うまくいくはずがないと思っていました。複数のデータセンター間で通信ができたり、使った分だけ課金できたり、オートスケールできたりと、当時からは夢のような仕様だったのですが。

「技術的にもビジネス的にも早晩、行き詰るだろう」

とみんな言ってました。

日本のITベンダーのバイアスとして、「既存のソフトウェア製品の組み合わせで実装する」「リプレースが定期的にあり、大型化すると大変」という思い込みがありました。

AWSの仕様を、既存製品で実装するのは現実的ではなかったのです。自分たちが設計できないものを、Amazonなど小売りの会社がどう実装するんだ、とみんな思ってました。

 

www.itmedia.co.jp

 「クラウドコンピューティングで興味深いのは、クラウドコンピューティングという言葉が再定義され、われわれが既に行っているあらゆることが含まれるようになったことである。どんな発表を見ても、クラウドコンピューティングを標榜していないものはない。コンピュータ業界は、女性ファッション業界よりも流行志向が強い唯一の業界だ。わたしがバカなのかもしれないが、みんなが何を言っているのか理解できない。いったい何のことなのか、まったくわけが分からない。このバカ騒ぎはいつ終わるのだろうか。当社もクラウドコンピューティングの発表を行うだろう。わたしはこういったことに抵抗するつもりはない。しかしクラウドコンピューティングという点について言えば、当社の宣伝文句のほかに何が変わるのか理解できない。以上がわたしの考えだ」

 

レガシーなIT業界は、クラウドをバズワードだと思っていました

しかし、そもそものビジョン自体が、IT業界が無理だと思っていた実装の先を行っていたということだと思っています。

日本のベンダーは、レガシーなIT業界の方が明らかに安定し利用に足ると長く思っていましたし、ベンダーが丸抱えしていた日本の内資企業もそれに追随していました。

流れが変わったのは2011年、東日本大震災です。

かなりのインターネットサービスが止まったとき、AWSの実装が大活躍しました。とりあえず使えるなら使え、といろんな企業が実装してみたところ、非常に合理的に利用できることがわかりました。

一度、本番実装できるとわかった基盤で、かつ合理的なことを理解した先進的な企業がどんどん利用しだし、そしてAWSがそれを大規模イベントで公表します。

そうやって、どんどん利用が広がり、それを見ていたMicrosoftやGoogle、そしてその後に続く企業も、AWSのビジョンを吸収し実装していきました。

 

日本のITベンダーはと言うと、そもそもAWSのビジョンを自社で実装できるだけの資本も無ければ、海外顧客もいませんから、ここらで心が折れることとなります。むしろ、メガクラウドに乗っかれということで、自社クラウドは「なんちゃってクラウド」のままとし、メガクラウドの技術者を増やす方向に転換します。

インフラは捨てて、ソリューションの方に舵を切り、インフラ基盤はメガクラウドでもOKですよ、というふうにしたのです。

 

で、この前の国産クラウドを育てるという話。

なんだかつじつまが合わないということです。AWSのビジョンを日本の内資企業が実装できるのでしょうか。

例えば、中国で言えばアリババクラウドなんて、AWSの焼き直しながらも、世界的にはシェアを伸ばしています。

同じことを日本がするの?。それだけの資本力が日本にあるの?。海外営業力は?。

 

となるわけですね。

国産クラウドを育てるとは言うけれど、単にデータの置き場としての、なんちゃってクラウドになるような気がするんだけれども。

日本のクラウド事情は、すでに夕暮れで、これから長い夜が始まりそうな様子だが、ここから日が昇ることってあるのかな。