ベテランの方へ。
若手が、こちらが思っている意図を組んでくれないで行動し、やきもきすることはないだろうか。普段の仕事ぶりには概ね満足している。でももっと、経験を積んで技術や知見を身につけてほしい。その時々の判断根拠が薄いし、勉強をもっとしてほしいな。そんなことを思っていないだろうか。
普段の仕事ができているので、理解は進んでいるはずだ。それなのに甘さが出るのはなぜだろう、と感じることはないか。何をしてあげればいいのか。
最近私が感じたのは、若手は、何がわかっていないのかをわかっていない、ということだ。わかっていないと、わかる努力をする必要を彼らは感じないのだ。
しかし、若手が何がわかっていないかをベテランはどうやって知ればいいのか。特に、仕事ぶりがいいので、わからないことがわからないのは、若手だけではなくベテランも同じだというオチである。
そうやって、ベテランと若手が膠着状態に陥る。仕事がまわっているからいいか、伝えることはないか、となる。しかし、ある時若手の知識不足が露呈したときに、ベテランは途方に暮れるのだ。なぜこんな判断をするのか・・と。
こういう状況の打破方法は一つだということがわかってきた。
とにかく、ベテランは若手を呼んで、自身が知っていることを全部話すのである。
その中には若手がすでに知っていることもあるかもしれないが構わない。とにかく気にせず必要な知識を話していく。
そのときに、できるだけ抽象的な、全体の話から入ること。いきなり細部の話を仕出したら若手も意味がわからない。
全体としてこういう話で、そのうちこの部分を話していくよ。そうやって、1面から最終面まで順番にこなしていく。
この作業をやっていくとわかることがある。案外、何も伝わっていないということに。若手は知ってくれているだろう。わかって発言しているんだろう。それらが実はかなりのベテランの思い込みだったことが、やってみたらわかる。
何を教えるべきか、ということの悩み自体が無駄なのである。全部だ。悩むならその順番であって、範囲ではない。
そして、解像度をいたずらに上げないことも重要だ。いきなり細部に入り込むと、全体を説明することができなくなる。多少の粗さを持って、重要性の高いことを順番に話していくことが重要だ。
この方針を最後までやり遂げると、若手はさすがに、わかる。わかっていないことがたくさんあり、それらの解像度を上げていかないと今後仕事に差し支えると。そしたら効果的に彼らは勉強しだす。しかし伝わっていないことについてはいつまで経っても、必要だということすらわからない。
ベテランは、若手に何を伝えればいいか。内容が膨大すぎてまとめきれない、と悩んでいる方も多いだろう。そうやって様子を見ている間に時間はどんどん過ぎてしまう。若手が若手の時間も限られているのに。それより、悩むより先にとりあえず定期的に時間を作って、ベテランが若手に一方的に話すタイミングを用意しよう。そして受け手である若手にいろいろ教えながら聴いてみたらいい。どれだけ、自分が伝わったと思っていたことが伝わっていないのか痛感するはずだ。こういうことも知らないでよく仕事をやってきたものだ、という逆の感心すらあると思う。その発見こそがお互いにとって重要なのである。
きっとベテランが、そういう発信の機会を増やすことによって、若手やチームの成長を感じる場面が増えるはずである。知るということは全ての現実を拡張してくれる。その機会を若手に与えることがきっと、今のベテランに求められている。若手に何を伝えるかではない。全部伝えることで道は開ける。伝えてみよう。