orangeitems’s diary

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マイクロソフト製品のSPLA契約変更が意味するところを解説する

 

概要

マイクロソフト製品の契約変更について下記の記事が話題になっていますが、その意味するところをわかりやすく解説していきたいと思います。

なお、個人の解釈なので、影響を受ける企業は購入元へ確認をしてください。

 

blog.serverworks.co.jp

先日よりAWS公式サイトに気になる文言が追加されていることを確認しております。 AWS上で Microsoft 製品を利用している皆様に大きく影響する内容でしたので、こちらのBLOGで速報としてご紹介させていただきます。

 

変更となるのは何か

今回の契約変更について、マイクロソフト社のブログより、直接的に内容と意図が書かれている文書を引用します。

 

blogs.partner.microsoft.com

SPLAは設立当初、パートナー様が自社のデータセンターからホスティングサービスを提供することを目的としており、マネージドサービス プロバイダーがSPLAを通じて購入し、他社のデータセンターでホスティングを行うことは想定していませんでした。

私たちは、2022年10月からSPLAプログラムを変更し、プログラムの意図、および他の商用ライセンスプログラムとの整合性を高めています。ホスティング事業者のエコシステムを強化し、従来のアウトソーサーやデータセンター事業者を奨励するため、SPLAの条件を変更し、Listed Provider のデータセンターでSPLAライセンスをアウトソーシングする機能を削除する予定です。この変更により、従来のアウトソーサーやデータセンター プロバイダーは恩恵を受け、ホスティング パートナー様のエコシステムを促進することができるでしょう。この変更の影響を受けるSPLAパートナー様は、2025年9月30日までに、SPLAアウトソース ホスティングのListed Provider から移行するか、SPLA外のListed Providerからライセンスを直接取得する必要があります。

 

つまり、SPLA契約の内容が変わるということが今回のポイントとなります。

また、変わるのは2025年10月1日以降です。

それ以降に契約違反となる使い方となる場合は、それまでにその使い方をやめなければいけないということです。

 

SPLAとは

ここで、SPLAについて知る必要があります。

下記の記事が非常にわかりやすいです。

 

licensecounter.jp

マイクロソフト製品をパッケージや、ボリュームライセンスで購入した場合、ライセンスはお客さま自社での使用のみが許諾されます。

SPLA(スプラ)は、前述のようなライセンスプログラムとは違い、第三者であるエンドユーザーにマイクロソフト製品のソフトウェアサービスを提供できるライセンスプログラムです。

 

解説を加えておきます。

本来、マイクロソフトの製品というのは、利用者が購入し、利用者自身が使うことを前提としています。A社がマイクロソフト製品を使う時は、A社の名義でマイクロソフトと契約を結ばなければいけないということです。

しかし、中にはこんな会社もあります。例えばB社とします。B社は、データセンターを借り、サーバー環境を構築し、そこにWindows Serverなど、マイクロソフト製品を導入します。そしてB社は、いろんな会社をエンドユーザーとし、利用してもらいます。こういうB社のような会社をサービスプロバイダーと呼びます。

本来なら、B社が契約して購入したマイクロソフト製品は、B社の社内でしか使うことができません。B社の環境を利用するエンドユーザーは社外なので、契約違反です。

では、エンドユーザーごとにマイクロソフトから直接ライセンスを購入してもらい、B社の環境に持ち込むということはどうでしょうか。これなら問題ありません。

ただ、B社からすれば、自社で管理しているサーバーを貸し出すだけなのに、毎回エンドユーザーからライセンス持ち込みをしないと環境が作れないとなると、これは不便そのものです。

そこで、マイクロソフトは、SPLA契約というものを生み出し、B社のようなサービスプロバイダーに購入してもらうことで利便性の向上を図りました。

B社が、その月に実際にエンドユーザーに利用したライセンスの数を集計し、その分だけ毎月支払うことができるという、便利なライセンス形態です。

 

2025年10月以降にSPLAで禁止されることとは

ということで、SPLA契約なぞ知らんという人は、直接的には何の影響もありません。

問題は、B社のようなサービスプロバイダーに起こります。またはB社を利用しているエンドユーザーたちも影響を受けます。

ただ、もしB社が、自社のインフラ環境でサービスを提供しているなら、何の問題もありません。

問題があるのは、「Alibaba、Amazon Web Services、Google、Microsoft」のパブリッククラウド上でサーバー等を借り、その上でSPLA契約のマイクロソフト製品を動かす場合です。

上記を「Listed Provider」とマイクロソフト社は呼んでいます。SPLA契約をしつつ、上記のパブリッククラウドのサーバー環境等でマイクロソフト製品を動かすことをこれまでは認めていた、ということですね。

もともとマイクロソフトは、自社でサーバー環境を構築してエンドユーザーに提供するということを想定してSPLAを作ったのに、サービスプロバイダーがAWSやGoogle Cloudなどを借り出したから話がややこしくなった、という筋書きです。

マイクロソフトの記載を再掲します。

 

SPLAは設立当初、パートナー様が自社のデータセンターからホスティングサービスを提供することを目的としており、マネージドサービス プロバイダーがSPLAを通じて購入し、他社のデータセンターでホスティングを行うことは想定していませんでした。

 

ここまで読むとよくわかりますよね。

ですので、サービスプロバイダーの事業をされている企業で、SPLA契約を現在進行形で結んでいるのであれば、それが「どこのインフラ環境で動いているか」が重要です。AWSやGoogleなどを利用しているとすれば2025年10月より契約違反となります。

また、サービスプロバイダーを利用しているエンドユーザーも影響を受ける可能性があります。ただエンドユーザーはSPLA契約など知らないですよね。でもマイクロソフトとライセンス契約もしていないのにマイクロソフト製品を利用できているのなら、SPLAで動いている可能性があります。サービスプロバイダーが自社のインフラで動かしているというなら安心です。しかし「AWSで提供しています」というなら黄信号です。サービスプロバイダーがSPLA契約を結びそのライセンスでサービス提供している可能性があります(もちろん、SPLAじゃない方法で提供しているなら対象外です)。

私が懸念しているのは後者のほうで、案外あるんじゃないかな・・と思っています。

2000年ごろから「ホスティング業者」がかなり増えて、サーバーの貸し出しがビジネスになったんですね。その際はデータセンターを借りて、物理サーバーを買って、そしてエンドユーザーに使ってもらうというビジネスモデルでした。

そこから、AWS等のパブリッククラウドがかなり伸びたときに、このホスティング業者が、自社でインフラ持つの大変だし、AWSに移ったほうがよくない?、というので自社のホスティングに見せかけながらAWSに移行していったという歴史があります。また、元からAWS等のパブリッククラウドを前提としたサービスプロバイダーも今ではたくさんあります。

で、そういったパブリッククラウド前提のインフラを使って、SPLA契約を使って構築しサービス提供することについては、これまでListed Providerについて限定して問題なかったわけですが、これがダメになるということです。

まぁ、Listed Providerばっかりが有利な条項だった気もします。他のパブリッククラウドからは、なんで特定のクラウドばっかりListedされるの?・・という話もありますから。

なお、OSについては、Listed Providerが直接提供しているものを使っているでしょうから問題ないと思います。問題は、その上でOfficeやRemote Desktop Serviceなどを、SPLAとして利用している場合でしょうね。

だから、SPLAなんぞ知らん、って思っている人でも、実は自社がエンドユーザーであり、契約しているサービスプロバイダーがListed Providerを利用し、その上でSPLAでマイクロソフト製品を仕入れてサービス提供に使っていたりすると、二次的な影響をかぶるということはあり得るのかもしれません。