orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

巨大資本が事業の将来性を省みず、損を出しながらトータルで成り立たせる方法論の終了

 

AmazonやApple、GoogleやMicrosoft、最近だとMetaもそうだが、巨大資本を持っている企業がやりがちだったこと。新しい事業を始めるときに、その事業の将来性を細かく検討しない。とりあえず水平にたくさんのことをやって、その中からうまく行くものだけを育てる。だから結構いろんな企業が、いろんな事業を途中でやめてる。

10年前に聞いた話では、Appleは自動運転できる車を発表しているはずだ。AmazonはiPhoneに代わるスマートフォンで市場を席捲しているはずだ。Googleは気球でWi-Fiを張り巡らすと言っていた。他の会社にもそういう、すごそうだけど実現できなかった事業がたくさんある。

そういう、お金がかかった上で、かつ勝てる見込みが無さそうなものはスンとやめればいいんだけど、いろいろ、微妙な事業はある。会社トータルとしてはその事業は損だけど、他の儲かっている事業を支えるためにはしょうがないよね、みたいな損して得取れみたいな領域がある。

Amazonに取っては、それはアレクサ事業だったようである。

 

jp.reuters.com

米紙ウォールストリート・ジャーナルは10日、米アマゾン・ドット・コムが、音声アシスタント機能「アレクサ」を擁するデバイス部門を含む不採算事業部門を見直していると報じた。コスト削減が目的という。

報道によると、アマゾンは数カ月に及ぶ見直しを経て、複数の不採算部門の従業員に対し他部署への異動を検討するよう指示した。また、特定のチームからより収益性の高い分野への配置転換を進め、ロボットや小売りなどの分野でチームを閉鎖している。

 

今月ブラックフライデーセールがあるが、そこでもAmazon Echoなどのデバイスが安売りされるんだろうなと思っている。この不採算ぶりだと、売っても売っても黒字化しないんだろうなと予想する。しかも昨今の原材料高で、きっと無理は更に必要なんだろう。

アレクサをキーにして、Amazon Music Unlimitedを売るぐらいの発想しか浮かばないが、きっとその先には、アレクサと話をして声でAmazonから商品を発注し、プライムで即日に自動配達するぐらいのビジョンはあったと思われる。

そして、技術的にはできてはいる。

 

netshop.impress.co.jp

 

ただ・・、きっと、アレクサ事業の赤字を穴埋めするほどのキラーコンテンツにはならなかったということだと思う。そして、その赤字を放っておけるほどの経済状態じゃなくなったという話だと理解した。

そもそもだけど、LINEがやっていたスマートスピーカーが終了するという話を聴いて、おやおやと思っていたところだ。

 

www.watch.impress.co.jp

LINEは、スマートスピーカー「CLOVA」シリーズを10月31日を持って販売終了する。また、CLOVAシリーズにおける音声アシスタント「CLOVA Assistant」も2023年3月30日をもって停止する。

 

昨今、大企業が有り余る体力でごり押ししてきた不採算事業が、軒並み見直しになっている姿を見ると、大企業の君たちじゃなくて、もっと優秀なスタートアップが手掛けていたら未来は違ったかもよ、みたいに思うこともある。

なんとなく、事業というのは資本の大きさだけで決まるものじゃないような気がするからだ。iPhoneにしろWindowsにしろ、ドラクエにしろゼルダにしろ、長く続くプロダクトというのは、バージョン1のころから今と同じ形をして同じように動いていた。始まりで結構いろんなことが決定づけられていると思う。デザインの為すパワーはすさまじい。

ところが、資本を持って優秀とされる人がかき集められ、はい、これが将来売れるはずだから、作ってね、として、うまく行くものもあればうまく行かないものもある。この雑なプロセスで、競合のスタートアップは、ああ、あの大企業が始めるんだったら勝ちようがないなと競争をやめてしまう。

だから今回、大企業がいろんなヘボい事業を畳み始めるのを見ていて、実は彼らがごり押しできないようになった環境って、優秀なスタートアップにおいては追い風なんじゃないかと思う。競争相手がいないんだもの。しかも、大企業にありがちな「なんでも無料」をやってこないと来たもんだ。

巨大資本が事業の将来性を省みず、損を出しながらトータルで成り立たせる方法論は、少なくとも今は終わった。それなら、個人でもベンチャーでも、今手掛けると目立てるんじゃないか、と思う。