IT業界は人材難、というのは現在の状況としては正しいのだけど、さて、未来もそうなのかというと風向きが大きく変わっているようだ。
米国でIT(情報技術)関連企業による人員削減が広がっている。新興勢の2022年のレイオフ(一時解雇)は過去2カ月あまりで倍増し、4万人を突破した。現時点ではソフトバンクグループ(SBG)傘下のファンドが出資する企業などによるコスト削減策が中心だが、他の分野に波及するとの観測も浮上している。
いや、アメリカの話だよね、と解釈するのは早合点だと思う。
日本にはアメリカ資本、いわゆる外資のIT企業が非常に多い。そして、近年は外資系企業への転職がブームだった。給与水準が高いからだ。昨今の円安でもっとその状況は高まる・・と思っていたが、肝心の本社が現在、大幅な人員削減に動いている。
ということは、グローバルで人員削減に動く企業も多いと言うこと。
外資系の場合、グローバルに事業展開をしているケースが多く、グローバル側の判断で国内法人の組織が大きく変更されるということもよくあります。このような組織再編の結果、ポジションが消滅するような場合に退職勧奨が行われることもよくあります。
このパターンが今後増えるんじゃないかと危惧している。本社は日本法人の維持に執着しないからだ。そして本社を削減するのに支社は手付かずということはあり得ない。日本の労働法の性質から即解雇はできないが、平気で退職勧奨をする文化があるのは間違いない。今まで長年うまくいっていたからこそ、うまくいかなくなったときの彼らの行動が知られていないというのはある。
もう一つ記事を紹介しておこう。
市場が悪化すれば全てが変わる。他社からの誘いはなくなり、ソフトウエア開発者は力を失う。転職の機会がなければ、失職を恐れて少なくとも週2日のオフィス勤務も受け入れるだろう。
アップルのリクルーター削減には警告の意図があり、社員に対して「いい気になるな。自分は思っているほど安全ではないかもしれないぞ」と伝えるものだ。
人材を巡る競争と、多くの人が会社を辞める「グレート・リジグネーション」のトレンドに伴い、給料は大幅に増えてきた。経済が悪化する中、報酬が永久に増え続けるわけにはいかない。企業は給料や賞与、個人の経費、交通費、無償の食事提供や福利厚生を削減するだろう。リクルーターの削減は、今後起きることを示す予兆だ。
日本における外資系IT企業の人員削減は、きっと、日本の中小企業にとってはチャンスとなる。今は求人倍率が恐ろしい状態で、特にブランド力のない中小企業は求職者に相手にしてもらっていない。それが逆回転し出す。むしろ給与水準が下がってもいいので安定した仕事を、という状態が将来作られるのなら、優秀な人材を確保する機会となるかもしれない。
人々は、過去の事実や統計をもとに未来の行動を決めるものだが、こういう潮目の変わり目には通用しない。新しい状況への適応が必要とされる。日本に余波が来るのはもう少し後になるとは思うが、人材不足に悩む企業としては国内の状況の変化に注目し、チャンスが来れば動けるようにはしておきたいものである。