ちと業界が、下記のニュースで騒がしくなっています。
デジタル庁は26日、中央省庁や地方自治体が使うデータをインターネット上で管理する「ガバメントクラウド」(政府クラウド)の先行事業で、米アマゾン・ドット・コムの傘下企業と米グーグルのサービスを利用すると発表した。3社から応募があったが、安全面や事業継続性など約350の要件を満たした両社を採用した。
なんで、国家の情報を、外国のクラウドが担うの?と。
採択結果について、牧島かれんデジタル相は同日の記者会見で、イスマップなどに触れた上で「基準をしっかりと満たしていただいたところが今回の採択につながった」と説明。国産クラウドサービスに関しては「基準を満たす国産がしっかりと育っていくことを一つの可能性として感じている」と述べた。
開票速報の中で、牧島氏と中継がつながると、ひろゆき氏は国内で政府や地方自治体が使う情報基盤「ガバメントクラウド」のサーバー事業者について「日本の事業者ではなくアメリカの事業者を選んだということは、日本に落ちるお金がアメリカに行っちゃうことになる。国内事業者を選んで、そこを育てた方がいいと思うんですが、なぜそれをやらなかったんですか?」と尋ねた。
これ、私なりの考え方を言います。
むしろ日本は、NTTデータ、富士通、日立、NECなどをはじめとした国内SIerに相当投資をしてきたと思います。
ところが、AWSやAzure、GCPのようなサービスは出てこず、コンサルやSIのような、いわゆるビッグユーザー向けのシステム構築にフォーカスしていきました。
なぜこうなったか。これは、ハードウェアやソフトウェア、そしてその組み合わせによるシステムの寿命が短いからだと考えます。
普通の感覚だと、5年で刷新を考えます。
なぜ5年かというと、ITの世界が5年を単位にライフサイクルを考えているからです。ハードウェアの標準保守は5年で切れ、そこからは「部品があれば」という状態に突入していきます。ソフトウェアも何らかの政治的な事情が発生しなければ5年でサポートを切り、バージョンアップをしないと保証をしないという態度のベンダーは多いです。
結局、ベンダー側も、バージョンアップし続けてもらわないとお金が入ってこなくなるので、定期的に買い換えてもらうビジネスモデルを業界全体で構築しているのです。
ただ、業務側は実は5年でビジネスモデルが様変わりするなんてありません。
5年でリプレースするためには、実質2年前から要件定義を始めないと間に合わないのが普通ですから、情報システム部門に勤める方は経験されているとは思いますが、年中リプレースの話を廻し続けることになってしまいます。
これを、日本の経済界はとても無駄なことだと思っています。
日本郵便の郵便局向けシステム基盤刷新が2020年1月までに一段落した。社内全体の「ベンダー丸投げ」体質を、新CIOが一変させた。保守費などを見直し、郵便局共通の「局システム」のコストを80%削減した。
こちらは去年のニュースですが、ベンダーの慣習に乗っかっていては、高コスト体質は抜け出せない。だからこそコントロールを内製化し、見直しを行ったところコスト8割減、というお話です。
これを、デジタル庁はやりたく、ベンダー理論から離れることができているのが、AWSでありGCPであるというのが私の理論です。
Amazonも、Googleも、ハードウェアベンダーとは独自の付き合い方をしていたり、ハードウェア部分を内製化したりと、コストコントロールが別世界の活動をしています。
これが、国内クラウドとなると、国内ベンダーそのものが運営していることもあり、このコスト削減が実質できません。
つまり、政府はシステムのほとんどは5年ではなくもっと長く使えると睨んでいて、それを利用しながら塩漬けにできるクラウドを選びたいと思っているはずです。
それぐらい、税金はシステムの食い物にされてきたのは間違いないと思います。これは国産ITベンダーが口をそろえてシステム保守ロジックを守ってきたことにたいする、ディスラプション(破壊)が、今回のAWS、GCPの採用だと思っています。
だから、もしAWSやGCPと比肩する国内クラウドが出てくるとしたら、それはハードウェアレベルまでコントロールできないとできません。それができるのは恐らく、今のPCアーキテクチャーでは無理です。ほとんどの部品がアメリカ製品ですから、主体的な製品構築ができないからです。
今後ベンダー側が、5年のライフサイクルを見直し、20年くらいに悔い改める、なんて話になるとぐっとユーザー側も保守コストが下がるでしょう。それが可能になったころに、逆に国内ベンダーの採用が始まるのではないでしょうか。結局はビジネスの話であって、国内ベンダーの技術水準が低いという話ではないと思っています。