人で不足だ~と言いながらも、じゃあ在宅勤務onlyで、遠隔地の人を採用するとなるとかなり壁が高い。いや、高いのかどうかまだ試したことはないのだけど、多分そうはならないだろうとう確信がある。確信?、何がそう思わせるのだろうということを話してみたい。
1.連絡が取れなくなったら終わり
まあ近郊の社員だって、急に連絡が取れなくなったりして、焦って探してみると一人暮らしで体調不良で、連絡をつけられなかったみたいなことはある。あるけれど、最悪、現住所まで行ってみれば何とかなるかという最後の手段みたいなところはある。
ところが、遠隔の場合はそこまで行くのが大変だ。行くだけで結構な時間と費用がかかる。品行方正な方だったらいいけど、やはり最悪の想定もしなくちゃならない。物理的に離れている人はそれだけでリスクはある。
Web会議、メールやチャット、電話など、リモートでのコミュニケーションができる基盤はあるけれど、無反応になったときに途方に暮れやすい。
2.オフィスに呼び出しにくい
これは最悪の想定の延長だけど、勤務態度がイマイチだったり、成果物が適当だったりと、働く水準に達していないときに、直接指導をしなきゃいけない時がある。これがWeb会議 onlyだと、今一つ「圧」が出ない。大変なことになってるんだぞぅという雰囲気づくりが難しい。
オフィスに呼び出して、膝を突き合わせて、そして場合によっては上司の上司なんかも呼び出して改善を図るみたいなことは、日本企業ではよくある景色である。
それすらリモートで。これは覚悟が必要である。
3.会社の雰囲気がつかめないので、異動が難しくなる
オフィスに通ってると、他部署が見える。これが大きい。
正社員の場合、会社側が気軽に解雇できないので、場合によって異動がある。本人の責任ではなく、ビジネス上の理由であったり他部署の理由だったりもする。
週5で会社にいる必要もないとは思うが、全く通わないと何も情報が入って来ようにない。たとえ会社が情報発信しようが、ネットニュースと変わらないである。
今後、会社も社員をオフィスに集めたがると思う。ここ数年で会社の一体感が失われてしまったからだ。
結局は会社は、メンバーシップなのである。メンバーシップを守る上で、リモートしかできない正社員はハンデキャップとはなると思う。
>>
一方で、オフィスはオフィスでデメリットもあり、私は「うるささ」は否定できないと思う。他部署がコミュニケーションしだすと一気にうるさくなる。もし忙しくて、生産性重視で仕事量を確保しなければいけない場合、オフィスはむしろ邪魔だ。通勤時間もうっとうしければ、仕事環境としてももはや自宅のほうが上である。部屋は静かだしインターネット通信も会社より早い。
ただし仕事が暇になったときに、リモートだと一気にだらける。誰も見ていないからだ。やらなければいけない仕事は全部やってるよ、ということで余暇部分を業務以外の自由に使われたらとんでもない。
「リモート(在宅)勤務は今後容認しない」。電気自動車(EV)最大手のイーロン・マスク米テスラ最高経営責任者(CEO)が、5月末に幹部宛ての電子メールでそう通告した。「在宅勤務を希望する人は週に最低40時間オフィスで勤務しなければならない。さもなくばテスラを退社してもらう」と激しい言葉で「オフィス復帰」を命じている。
製造業は特にそうだろうな、とは思う。ITだとこんなに極端にオフィスに振らなくてもいいかなという感覚はある。
こういう会社もある。
ディー・エヌ・エー(DeNA)は6月3日、人材採用を全国に広げると発表した。渋谷・横浜オフィスから遠くに住む社員も出社しやすいよう、通勤交通費の上限を「月15万円まで」に変更するなど、首都圏以外に住んでいる人にも働きやすい環境を整える。
遠隔のリスクを、お金で解決する試みだ。
月15万円で日本全国から通える、というよりは、必要に応じて出社は必要で、交通費15万円以内で解決しなさいという話である。大阪-東京間の往復が3万弱なので、週に1回は許容する感じだろうか。
とはいえ、やってみて思うのは、ちゃんと働いてくれる人は全然在宅100%でもイケること。結局のところ、最悪の想定をするから、進まなくなるんだよねって話。例えば会社に慣れるまではオフィス近郊で多めに出勤して、条件をクリアしたらDeNAのように遠隔に住むことを認める・・みたいな話ならバランスがいいのかもしれない。
オフィスの機能を見直すことに関してはトレンドとなりそうなので、両方活かして、仕事の生産性向上を図ることは頭に入れておいたほうがよさそうだ。