orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

つながらない権利はシステム運用担当者に実装できるのか

f:id:orangeitems:20210927113010j:plain

 

つながらない権利、言っていることはよくわかります。

 

www.nikkei.com

新型コロナウイルス禍のなか、就業時間外の業務連絡を受けない「つながらない権利」が世界的に注目されている。テレワークが定着して私生活との境界が曖昧になり、長時間労働のリスクなどが高まったためだ。欧州などで法制化を進める国が増えた。日本も労組などが必要性を提言。柔軟な働き方と働き手の健康を両立させるルールづくりが求められる。

 

システム運用担当者はスマートフォンやノートPCを私生活に置いても持たされている例は全く珍しくありません。システムは24時間動いていますが、人間は一日8時間しか労働できないし、しかも土日や祝日など休みも取ります。完全に矛盾しているのですが、そこを通信環境の整備で何とか取り繕っているというのが現代社会です。

重厚長大なシステム、例えば金融などの世界においてはそれは許されないので、夜勤シフトなどを組んでオフィスに技術者を常駐させることをします。本来は昼も夜も同じだけの技術メンバーを揃えたいのはやまやまですが、そうするとかなり不規則な仕事になってしまうので、夜の時間帯は人数を抑えるのが普通です。大きな病院の当直のようなもので、何かあった時に対応できるようにしています。

どんなシステムでも本当はそのようにすればいいのでしょうが、大半はそこまで人を割けません。かつ、人間の生理的欲求として、できるだけ夜勤はしたくないのです。昼働いて夜寝たいし、土日は休みたい。仕事だからと年中夜勤だけしていたら、休みの日も夜起きなければいけなくなり私生活はぶっ壊れてしまいます。家庭を持った時に、配偶者も子供も、夜生活しますか?。夜通う小学校はありますか?。ですから完全夜勤なんて働き方はほとんどなくて、一か月の間に数日アサインされ、夜の間も仮眠の時間を設けるなど、できるだけ昼夜のリズムを壊さないような対応が求められます。

また、夜だけではなく土日祝の問題もあります。ざっくり言って、週5で働いている人は一年の3分の1休んでいます。だから、全ての日に人を張り付けたければ今の人数の1.5倍は技術者が必要です。人件費も1.5倍になります。

このように、システム運用の世界で、大真面目にシステムが24時間動いているから人も張り付かせよう、としたときには、平日昼だけの人数と比べてかなりの増強が必要となります。

つながらない権利を保障しようとして、出勤者だけでシステムを動かしていくと仮定するとこのように人件費がどんどん積みあがっていきます。

しかしシステム運用の世界は、何もトラブルがなければ夜間は特に作業をしないものです。夜に出勤したのに、何も仕事をせず帰ることになり、非効率だなという思いが技術者に残ることになります。

これを非効率として、基本何も起きないことが前提であれば、夜勤や休日勤務などは特別な場合は無くして、平日勤務だけにすれば人はそこまでいらない。人件費は大きく削減でき、システムにかかる費用も安くできるはず。

この考え方が大半の企業のシステム運用に対する考え方なのだと思っています。安く請けている会社はこうやって運用費を削っています。

ただ、これでは真面目に人を張り付けている企業は競争上不利です。真摯にやっているのに他所と比べて高いと言われてしまう。大手はやっぱり高いんですね、と。そりゃちゃんとやっているからとは言いたいけれど、実際システム運用の技術者が何をやっているかなんて、顧客には何もわからないのが悲しいところです。

平日、ちゃんとシステム運用をやっていれば、夜間休日は何もおきないよねぐらいに言われてしまいそんなことないけどと言いながら、価格の方を優先しているというのが現実です。

よく、いろんなシステムでトラブルが起きた時に、ツイッターなどで「・・が障害!、早くなんとかして!」みたいな投稿があふれるのですが、その裏では運用担当者がコールされあくせく働いています。でもそれは出勤しているときとは限りません。自宅から対応しているケースもたくさんあると思います。

「つながらない権利」ねえ・・。そんなのあるわけないじゃん・・。現実を知っているだけに無理なんじゃないかと。もしくは、ちゃんと実装するなら、社員が稼働している時間しかシステムを動かしちゃだめ、帰るときには電源を切って!、みたいなことにならざるを得ないんです。

それは無理だと思うし、システム費用が高くなるのは顧客も望まないし、そして技術者も昼勤を望んでいる。で、そこから降って沸いたような「つながらない権利」は多分永遠に実装されないと思いますけどね。