orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

感想:検査仕様書なしでシステム開発するとどうなるか?

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まずは下記を読んで頂きたく。

 

anond.hatelabo.jp

 

いろいろと違和感を持ったので、感想を書きたいと思います。

 

納品前のチェック体制がない

筆者の会社(自社)が受注しているにもかかわらず、顧客に納品後に大クレームになったということは、自社の納品体制はずさんです。

つらつらとテスト品質の悪さとそれをもたらしたPMの悪評が書いてありますが、なぜこんなに社内標準を無視して顧客に成果物が届いてしまったのでしょうか。

納品する前に、まず部門内で確認し、それを社内の品質管理部門が再確認すべきです。会社として成果物の品質を担保するためには、担当者が直接成果物を納品するようではいけません。担当者によって品質のばらつきが大きくなってしまうためです。

社内標準と言う以上は、その標準が担保されているかを内部的に統制するしくみが必ず必要で、仮に壁に貼っていたところで飾りにしかなりません。

 

派遣はおそらく誤り、どちらにしても未払いはおかしい

また、この「派遣」という言葉もおかしくて、業務実績に不満があったとして支払いを行わないのは明らかに違法です。指揮命令系統は自社にあり、自社PMが派遣へ指示を行いその通り師事していたのですから、支払いうんぬんを後から拒むのはいけません。勤務記録として出社した時間分は派遣契約時の条件通りに支払う必要があります。また、契約期間も守るべきです。派遣契約に業務内容があるとありますが、これは業務内容が当初と違うと派遣社員が困るから、であって、指示自体は現場で自社PMから行われたのですから、指示が優先されて然るべきだと思います。

で、多分これは「派遣」ではなく「SES」なのでしょう。SESは請負の一種ですが成果物責任はありません。善管注意義務の中で専門的技術を時間精算でサービスする、というこの契約は、両社間で取り決められた業務を遂行するのがポイントで、今回は特に自社PMの指示に従っているので、これも支払われないのは話がおかしすぎます。

どちらにしても、自社PMの指示がおかしかったとして、それがパートナー会社に責任の一端を被せるのはひどい話だと思いました。

 

テスト仕様書は、テスターが書くものではない

パートナー会社の社員の役割は、テストを実施するテスターだというのは明らかです。

では、テスターがテスト仕様書を書かなければいけないかというと、私は違うと思います。何を合格とするかについては、製品仕様を熟知しないといけないからです。製品仕様を網羅したテストをするためには、より上流の観点が必要となり、PMは設計者に近い人物をテストリーダーに指名しないといけません。

テスト仕様書をまとめたうえで、では現場がどうそれをテストするかについては、手順書やエビデンスの作成をパートナーに任せるのはよいでしょう。

ただ、その成果物もテストリーダーが確認をしていく必要があります。テスターはどうしても「成功させて仕事を完結したい」というバイアスが入るので、項目が抜けたり、手順が抽象的だったりします。

テスト仕様書と手順書・エビデンスが一致するのかが重要ですし、それを自社が確保するプロセスが重要です。テストに関する全プロセスを、SESなどでパートナーに丸投げしているように見え、PMとしても自社としても無責任なプロセスをまわしているように見えました。

 

進捗確認についてPMまかせ

これはどの会社でもあることですが。

PMと呼ばれる職位がこの企業ではかなり上級だったようで、進捗率が100%にならないと問題が発覚しない体制を取っています。

きちんとした体制としては、要件定義完了、設計完了、実装完了、単体テスト完了、統合テスト完了、運用テスト完了、のようなマイルストーンを置きます。それぞれで第三者的な確認ポイントを設け社内で合意が取れた時を持って進捗率の数字を増加させます。

したがって、品質管理体制がプロジェクト中であってもずさんであり、よいPMがやれば平和に終わり、悪いPMがやれば顧客がクレームを上げて大炎上して始めて会社が気付く、という状況のように見えます。

これは、企業の品質管理としては幼稚な状態と思います。

 

これは火消しとは言わない

結果として、問題PMを詰めて会社から追い出し、パートナー会社には未払い。

プロジェクトメンバーを入れ替えて解決・・とありますが、これでは今後再発すると思います。

私が考える再発防止策です。

・PMには社内標準を説明したうえで理解度を確認しておく。

・各プロジェクトについてマイルストーンを設け、到達したとPMが判断した場合、社内の判定会議にて合否を判断する。合格しない場合は次の工程に進ませず、かつ進捗率が低い場合は別途会社として人員増強など早めのリソース投入を実施する。

・あくまでもパートナーは自社業務の技術援助が目的であり、テスト仕様書の作成など品質に関わる部分は自社で対応する。自社で対応できない場合も、指示を正しく行い、結果は自社が担保する。

・顧客に納品する前には、社内で第三者的な確認を行い、社内標準を満たさない品質のものは外に出さないことを徹底する。

・パートナーの品質については、定期的に評価を行い、著しく結果が悪い場合はエビデンスを示すことができるようにする。

これぐらいかな、と思います。何しろ、誰かを悪役にして追い出すのは火消しとは言わないと思います。プロセスがおかしいと考えなければいけません。

罪を憎んで人を憎まず、という言葉そのものです。