OracleとGoogleの10年戦争
過去特集した、グーグルとオラクルの裁判の件が動き始めました。
経緯は下記の通りです。
最高裁審議が始まる
あの件どうなったかな、とふと思い出したら、ちょうど昨日ニュースになっていました。
ついに最高裁判所での審理がスタートし、2020年10月7日に行われた口頭弁論では「Googleが不利」との見方が優勢だと海外メディアのArs Technicaが報じています。
グーグルとオラクルの米IT(情報技術)大手が著作権をめぐり10年にわたって繰り広げてきた大型訴訟が、米連邦最高裁判所に舞台を移した。2021年夏ごろに出る判決によってはグーグルはソフトウエア開発での対価の支払いを求められる可能性がある。米議会などが独占などでIT大手への批判の目を強めるなかでの訴訟は業界関係者の注目をにわかに集めている。
GoogleとOracleとの間で争われている「Android」関連の裁判の審理が米国時間10月7日、米連邦最高裁判所で始まった。膨大な金額が絡むこの裁判の結果は、企業各社による将来のソフトウェア開発に多大な影響を与える可能性がある。
解説
この件でOracleはGoogleに1兆円の賠償金を要求しているのだとか。
別にGoogleがJavaのソースコードをパクったわけではなく、JavaのAPIをAndroidでも使えるようにして、JavaのプログラマーがAndroidで開発しやすくした、という話です。
実装は全く別だけど、APIが同じなら便利よね、という発想。
当のOracleも、Amazon S3のAPIを勝手に使っとるやん、という話もあるそうです。
ニュースサイトArs Technicaが、APIの著作権侵害によりGoogleを訴えているOracleも、AmazonのAPIを無断で使用していると指摘しています。
APIに習熟することそのものが、その言語の習熟と比例するのは現代の常識です。過去の言語は基本的な計算動作しか実装していなかったので、ユーザー自らが共通ライブラリーを作りプログラミングすることが常識でした。フレームワークとも言います。SIerごとにフレームワークがあったりして、転職したり現場が変わったりするとそのたびにローカルなフレームワークをおぼえなおさなければいけませんでしたし、お作法を破ったりするとコードレビューで怒られるみたいな理不尽な状況でした。フレームワーク自体の品質が悪かったりすると実装もハードルが上がり、十数年前のデスマーチ流行の原因はその辺にあったのではないかと思うことがあります。
下記の小説は当時の状況が良く書けています。
さて、2020年にもなると、言語自身がフレームワークを定義していることも増え、できるだけ世界共通な仕組みを利用しようというのがデファクトスタンダードになっています。APIの登場です。
そうしたAPIの広がりがあり、今やAPIを公開しない理由がなくなっています。コンシューマ向けに限らず、ビジネス向けにおいてもAPIを公開することでうまくいっている事例が増えています。幾つかのメリットがありますが、まずビジネスのスピードがアップすることがあげられます。従来のすべて自前で開発する主義を捨て、APIを使うことで開発工数や期間の低減が実現できます。また、企業提携においてもAPIが活用されるようになっています。お互いがAPIを利用し合うことで、素早い提携が実現できています。FinTech周りでは企業提携し、提携した企業だけに限定してAPI公開が行われています。
で、API自身は非常に業界の発展に寄与しました。広く知られたAPIはどこの現場でも役に立ちますから、開発者も大喜びです。
ですが、今OracleとGoogleの間で争われているのが、このAPIセットまるごと、パクっていいのかどうかと言う話です。
もしOracleが買った場合は、APIセットを持っている技術を保持している企業、コンテンツ保持側が強まることになります。Googleが買った場合は、他社のAPIセットを取り込むことは社会の発展に寄与する、という考え方になります。
もう10年も戦っているこの話、結果によって、業界の今後を左右すると言っても過言ではありません。APIのコピー自体はいたるところで行われていますから、これが争議の種になるとしたら大騒ぎになろうと思います。
来年2021年には最終判決が出るとのことで、今後の動きに注目です。
そして衝撃のオチ。