orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

この天才、心当たりがある

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天才

はてなブログのトップに上がっていたので読んでみたのですが。

 

www.yutorism.jp

ここ最近、天才と一緒に仕事をしている。

 

この類の社員を「天才」と比喩することについて批判が上がっているようですが、私の伝えたいこととは逸れるので横に置いておきます。

この「天才」と私も1年半ぐらい仕事を一緒にやったことがあるので懐かしくなって、気持ちをまとめます。

 

思い出

事情があって私に部下が必要になりまして、それでとある場所に相談しにいったところ、「彼はどうだろうか。ただもう2か所から『一緒に仕事できない』とクレームを受けた人材なんだが、ただ学歴を見ると優秀なんだ」と。私も人を選んでいる余裕はなかったし若い方だったので教育すれば大丈夫だろうと引き受けることにしました。

で、このブログを読んでいらっしゃる方ならご存知の通り、仕事はシステム運用の現場です。運用の場で、ハンバーガーをチーズバーガーにするなんて自殺行為です。

で、怒号・・というか、たくさん怒りました。そんなことするな。ダメだ。なぜダメなのか。なぜ言ってくれないのか。

そして、過去言ったことが守られなかったとき。あの日あの時にあんなに伝えたあの話を、なんで無視したのか。無視するような存在なのか俺は。

別のフロアに私が叱っている声が何度も響いて、私は「実は怖い人」という扱いをしばらく受けるようになって、偉い人から「お前、叱ってばかりだとモチベーションさがるからな」なんて軽く説教を受けた思い出がございます。

ただ、この天才。叱られることに対して異常に耐性があって、食い下がってくるんですね。でもこうじゃないか、私はこう思っていた、うんぬんかんぬん。この耐性を知っていたから私も全力で彼を叱ったし、私も本気だってわかってくれていたので、彼は彼で私や仕事から逃げずに付き合ってくれていたと思います。

ただ、周りの職場の人たちから見れば、「またやってるよ」的なリージョンでした。もう多分あそこまで本気で人を叱ることもないとしみじみ思います。

彼がジョインして数か月、あまりのじゃじゃ馬っぷりに、システム運用の現場では危ないと思い、半年間はほとんど私の仕事を後ろで見させるだけ、にしました。一切システム運用におけるオペレーションをさせなかった。だって、怖いです。ハンバーガーをチーズバーガーにしてしまう人を、システム運用させたら何が起こるかわからない。今起こらなくても時限爆弾のように何かが埋め込まれ、数か月後に重大事故が起こることも想起された。

すべての「なぜやってはいけないか」を説明することは無理です。「なぜやるべきか」をいくら説明しても新しいことは次々起こる。そのたびに説明しますが「なぜやってはいけないか」まで到達するには時間と経験が必要です。経験の無さが、チーズバーガーにしてしまうのはわかるのですが、彼のレベル上げのために重大事故は起こせません。

彼も自分の能力に対する評価は高いものだと推測されたので、仕事を与えず私の後ろで見てるだけ、はつらかったものと思います。

でも彼は耐えてくれて、一年ぐらいしたら発言が見違えるような感じになってきたので、仕事を少しずつ与えこれなら今後伸びるかもなあと思うところまで来ましたね。

 

で、彼は今どうしているかというと、私の部下ではありません。どこかに転職してしまいました。すごく必死に叱り一人前かもと呼べるかもしれないところまで来たのに、その能力を活かして大空に羽ばたいていきましたね。

まぁ、私はそれでいいと思います。ここにいると、半年仕事をやらせてもらわなかった小僧の記憶が生々しいし、よそでリセットしてここで学んだことを社会に活かし自己評価に合致する仕事ができるかもしれない。

一方の私もかなり勉強になって、今後部下がついたとしても、とにかく自分の仕事をどんどん見せて、「教える」には含まれないいろんな情報を見せてあげたほうが良いと。

例えばパワーポイントを立ち上げて資料を作るにしたって、ショートカットキーなどいろんな経験があって操作しています。それをあまり経験のない人が見ると「ああそんな操作方法があるのか」なんて発見してくれることがあります。

最近だといろんなツールが発達して、チャットや課題管理やスケジューラーで人と人との直接のコミュニケーションを省略しがちなのですが、実は最もメッセージが伝わりやすいのって、人の仕事を観察させることなのではないかと思うことがしばしばです。

おそらく「天才」と呼ばれる人は、少しの情報から多くのアクションを膨らませることができるのでとっかかりは速いのですが、そのロジックが独自なために汎用性のない独りよがりな行動が目立ってしまうのでは、と思います。

ここはじっくり、標準動作を一定時間観察させ、アウトプットをさせないこと。やり方を見せながら、「なぜこれはこうするかわかるか?」と質問し、ちゃんと理にかなった答えを返してくれるか確認を重ねること。

そういうディープラーニングにおけるトレーニングのようなことを施してあげることで、天才は教育されうるのではないか、と思います。

 

楽しかった

何だか大変そう、と思った方は正しくて、確かに彼との仕事は大変だったのですが、きちんと育ってしまうと多分優秀の部類に入るのではないかと思います。それだけに優秀じゃないと入れないような転職先に転職してしまったのですが、まぁそれは彼の幸せのためになるんじゃないかなぁと達観しております。

また、新しい天才と出会うことがあるかはわかりませんが、あんな刺激的な期間はなかなか無かったなと思います。楽しかった思い出です。