orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

「ナッジ」理論がビジネスで大流行する?

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ナッジとは?

また新しいキーワードが出てまいりました。

AI、IoT、RPAと小難しい言葉が流行していますが、今回は「ナッジ」です。ただ今回はIT関連じゃないのでご注意を。

 

www.nikkei.com

政策現場で「ナッジ」と呼ばれる手法が広がり始めた。行動科学の知見を生かし、文書の文面を変えるといった心理に働きかけるちょっとした工夫で人々を動かすことを狙う。補助金や規制などの従来の手法よりコストも手間もかからず、中央省庁や地方自治体の期待は大きい。

 

政治の世界ではIT自体は主役ではなく、国民を正しくリードすることが主役ですからそれにつながる理論は政府も敏感です。

このナッジと呼ばれる手法について、関連記事をまとめましたのでご参考になればと思います。

 

関連記事

 

日本経済新聞(2017/12/28)

www.nikkei.com

環境省は人の心理に働きかけて行動を変える「行動科学」を使い、高齢者が普段の生活で出す二酸化炭素(CO2)を減らす実証事業をこのほど始めた。自治体の公共施設に高齢者が集まるように後押しし、自宅で冷暖房や照明に使う電気を節約する。病院の業務部門など他の取り組みとの合計で2021年度までに年間数十万トンのCO2削減を狙う。

 

ナッジ自体は2017年のノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大のリチャード・セイラー教授が理論化したものです。その内容はすでに上記のように早々に政策に取り入れられ現在に至るというわけです。

 

週刊医学会新聞(2019/6/24)

www.igaku-shoin.co.jp

 職場の残業時間を減らそうと定時の退勤を呼び掛けてもいまひとつ効果が現れない。でもこれ以上,人手は増やせない――。

 適切な労務管理や健康支援,ワーク・ライフ・バランスやキャリア形成など,働きやすい職場環境の整備に向け,医療機関とその管理者は日々試行錯誤を重ねていることでしょう。職場ごとのさまざまな課題を前に,改善の有効な一手はないものでしょうか。

 そのような期待に応える新たな政策手法として今注目を集めるのが,行動経済学の知見に基づき人の特性を利用した「ナッジ」(MEMO)1)です。本紙対談では,行動経済学の医療への応用について『医療現場の行動経済学』(東洋経済新報社)にまとめた行動経済学者の大竹文雄氏と,医療勤務環境改善にナッジの利用を提案する小池智子氏が,職場・職種の特性に応じたナッジの選択と設計について検討しました。改善に向け,そっと背中を押してくれるアイデアとは?

 

かなり具体的なナッジ理論の応用がまとめられていて、良い記事です。人間の行動を変えるきっかけを作ることで、実際の結果が大きく変わっていくというナッジの目的を学ぶのに有用です。

特にITではなかなか生産性向上がやりにくい、医療・介護・教育・地方自治などの分野で効率を上げている様子です。IT業界にいると何でも自動化の方向に持っていこうとするのですが、人間の行動を最適化する考え方も持っておくと、相乗効果が期待できると思います。

例えば、ポップアップやWEBの文言一つとっても、ナッジ理論を応用すればユーザーの行動を誘導する品質が向上しそうです。

システム設計の上流工程から活躍しそうなナッジ理論です。

 

Yahoo!ニュース(2019/6/12)

news.yahoo.co.jp

5月21日、経済産業省(METI)はナッジユニットを設置すると発表した。イギリスやアメリカ等ではすでに先行事例があるナッジの政策応用について、その費用対効果を検証した論文があるので、そのひとつを紹介したい。

 

こちらは外国でのナッジの事例についてまとまった記事です。

ナッジ理論はより良く利用すれば良い結果がもたらされるものの、悪意を持って利用することもできると言います。スラッジと呼んでいますが確かにこの点は重要です。本質的に何を目的とするかを見逃さないことが重要だと思います。

 

JIJI.COM(2019/5/4)

www.jiji.com

働き方改革関連法が4月1日に施行され、罰則付きの残業時間の上限規制が始まった。国家公務員についても民間企業と同等の上限規制が人事院規則で定められ、24時間体制で事件・事故に備える警察でもワークライフバランスの向上が急務となっている。
 警察庁中部管区警察局の岐阜県情報通信部は2017年5月から、ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授が提唱する行動経済学の理論「ナッジ(nudge、そっと後押しする)」を用いて休暇取得を増やす取り組みを実施。成果を挙げている。

 

少し決まりを変えるだけで、人の行動が大きく変わってしまうナッジ。これはITを使わなくても生産性が向上するよ、というシグナルでもあります。

何でもITを使おうとするIT業界人からすれば、盲点となりうる考え方です。これを逆手に取ってITにナッジを活用することで、よりよいシステムづくりができるという裏返しでもあります。

 

PR TIMES(2019/6/18)

prtimes.jp

デロイト トーマツ リスクサービス株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長 木村研一、以下DTRS)は、スマートフォン向け運転診断アプリ「D-rive GO」(以下、アプリ)の機能を活用し、企業・団体等を対象に従業員向け「D-rive GO安全運転ナッジ*1 サービス」の提供を2019年6月より開始します。

 

こちらは、ナッジを利用したスマートフォンアプリサービスです。ITとナッジは相容れないものではなく、両方認識することでよりよいシステムを構築することができると思います。

 

ナッジ理論を学ぶには

いくつか本が出ていますが、まずは下記の本をお勧めします。

いわゆる「原典」でリチャード・セイラー教授の代表作です。 

 

実践 行動経済学

 

あとは「行動経済学」というキーワードで周辺のわかりやすそうな本を手に取ればいいと思います。

  

ITシステムを作る側の方もシステム化後の導入効果は重要だと思いますので、このナッジ理論や行動経済学を学ぶ効果は大きいと思いますがいかがでしょうか。