orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

そもそもデジタル庁という名前そのものがいびつというか・・

 

組織は目的のために作られますよね。

会社は利益のため。防衛省は国土の防衛のためだし、経済産業省は経済と産業のため。国土交通省は国土と交通のため。デジタル庁って、デジタルのために作られた庁、でいいんですかね。

この、デジタルのため、っていうのが問題の根源だと思うんですよね。デジタルって、手段ですよね。何かの目的を果たすために使われるのがデジタルっていう話です。

ところが、デジタルが目的になってしまっている。

何のために、というのは各省庁にあって、そのデジタル部分だけデジタル庁に集めたことによって、デジタル庁はいろんな目的のシステムを一手に引き受けることになってしまってるんじゃないかな、と思います。

ITインフラ庁、ならまだわかりやすかったのですが、例えばマイナンバーの件については、アプリケーションの要件まで入り込んでいますよね。目的自体は総務省にあるのに、デジタル庁がその目的の達成まで引き込まれてしまったので、アプリケーション部分まで理解しないといけなくなった、と思います。

そういう風に、要件や目的はデジタル庁の外にあり、それをデジタルだからと言う理由でデジタル庁に持ち込んでくるスタイルでは、きっと疲弊するだろうな・・と思っていましたら、やっぱり疲弊しているようです。

 

www.sankei.com

河野太郎デジタル相は9日の閣議後記者会見で、相次ぐマイナンバーを巡るトラブルへの対応のため「朝の3時、4時まで残業という者(職員)もいる」と明らかにした。デジタル庁は抱えるプロジェクトの多さによる人員不足が指摘されており、一連のトラブルの要因との声もある。河野氏は職員採用のスピードを早めつつ、トラブルの再発防止のため、情報共有の仕組みなど、組織体制を見直す方針を示した。

 

そりゃ、他省庁の全ての要件が、デジタル案件だからと言ってことごとく持ち込まれたら、そうなるだろう・・と。

また、当初から「アジャイル」にこだわっていたところもすごく気になっていました。

 

xtech.nikkei.com

 2つめの変更はプロセスだ。津脇企画官は行政サービスについて「サービスをリリースしたら終わりではなく、リリースしてからが勝負だ」と話した。そのためにも、デジタル化のプロセスについて「アジャイルで小さくつくるように変えていく必要がある。小さくつくってから発展させること、失敗をある程度許容していくこと、時にはやめることも大事だと考えている」(津脇企画官)とした。

 

上記は2021年9月にデジタル庁が発足する直前の記事ですが、この時点で不穏な空気がありました。現状のように多くの案件を抱える状況で、失敗の一つでもあれば完全にボトルネックになるだろう・・と。例えば、今のマイナンバーの問題を「失敗恐れず」なんて言えるのでしょうか。無理ですよね。不信が募っている現状では、些細なトラブルでもトップで報道されてしまうような状態です。

 

これも、デジタルそのものを目的にしてしまったツケなんじゃないかと思います。アジャイルかウォーターフォールかは私は「関係ない」と思います。どちらにしても、正しく動く必要がある。マイナンバーは国民の機微な情報であるし、それを扱う運用はかなり堅いルールと体制で臨む必要があった・・はず。そんなの、民間でシステムを預かっている私でもわかる。このシステムは甘く見ると危険だ・・と。

だから、「デジタル庁」ではなく、「マイナンバー庁」にすれば良かったんじゃないかと思います。そうすれば、マイナンバー以外の仕事は来なかったでしょう?。そして、マイナンバーをどう開発・運用するかを捉えた時に、アジャイルやらプロジェクトマネジメントやらの横文字に踊らされることなく、堅い手法を選択したはずだと思うんです。

簡単に言って、アジャイルは相性が悪いです。あんな重要なシステムに・・。

 

一度検討して欲しいものです。きっと「マイナンバー庁」って名前に変えた途端にうまく行き出しますよ・・。デジタルは手段であって目的じゃないから。どの省庁でもデジタルは必要なはずだから。