叱り方はどうあるべきか
私も少し考えさせられました。上司に新人が叱られるという事象についてのお話です。
考察
この内容のミスであればもっと新人は反省するべき、という意見は横に置いておきます。これはこれでもう結論が出ている話です。
一方で、私が気になったのは、新人のモチベーションです。
モチベーションと言えば、モチベーションクラウドというサービスが最近有名ですよね。
各社員が心の中に持っているモチベーションを数値化し、客観的に分析できるサービスです。会社の中の部署ごとの比較はもちろん、リンクアンドモチベーションが今まで取得した日本全国のデータと比較できるのが面白いサービスです。モチベーションをビジネスにとって重要な要素であることを定義し、それをどのように測定、改善するかを示してくれる素晴らしいサービスだと思っています。
このモチベーションというパラメータ、全く無視できないです。全然見えないのに、かなりのパワーでものごとに影響してきます。
組織全体のモチベーションが低いと、単に上司が新人に起こっても、新人は無視するか反発するかしかありません。一方でモチベーションが高いと、反省し次につなげようとします。
これって能力でしょうか。いえ、能力ではないと私は思います。
能力のある人でもモチベーションは下がることがあり、ない人でもモチベーションが高いことで高い成長をすることがあります。
「やってやるぜ!」って思うか思わないかで、ずいぶんと心の中の景色が変わります。そうすると能力まで変わってくるというのだから恐ろしいパラメータだと思います。
しかも、私生活まで影響しているじゃないですか。私生活がうまくいってないと、「あの人元気ないな~」から始まり、いつもしないようなミスをするかもしれない。
システム運用の現場においては、些細なミスや見逃しが命取りです。できるだけムラのない機械に任せて自動化したいところではありますが、やはり人間が操作したり判断したりする部分は存在します。そこで百回やって百回成功する文化を生み出すためには、このモチベーションという見えない数値が、本当に本当に重要なのです。
どうやったらモチベーションが上がるか、という技術論より、まずは上司から叱られたときにこの漫画のようになってしまうことを考える必要があります。新人のモチベーションが低いというのはわかります。でも、上司のモチベーションが低い可能性もありませんか?
もし、組織のモチベーションを重視し、メンバーそれぞれの心の動きを重要と捉えるならば、叱ることそのものより、なぜ寝坊するのか、なぜ忘れるのか、なぜできないのかをもっと真摯に捉える必要があります。「そもそもやる気ないよね、どうして?」と言う言葉をメンバーがいる前で言ったとすれば、これは各メンバーに対しこの新人はやる気ないぞと広告しているようなものです。新人のモチベーションは下がるし、周りのメンバーのモチベーションも連れて下がるでしょう。もうこんな会社は嫌だ、ともなるかもしれません。それを予見できる立場の上司が、このような考慮点を踏まえず叱るとしたら、それは上司のモチベーションも低い可能性があります。
モチベーションが低いというのは、責任、ではないんですね。悪い、という話ではない。低い、という話なのです。
モチベーションを高くするためにはどうすればいいか、というのは経営者や管理職の重大事項となります。生産性に影響するためです。モチベーションの高い組織は生産性が高く、低い組織は生産性が低いです。やる気ねーなー、とみんな言っている会社では効率が下がるのは自明の理なのですが、残念ながらモチベーションが重視され始めたのはここ最近だと思います。
失われた20年、なんて言われたころは、どんな会社でも業績も上がらないし、日本全体のモチベーションがだだ下がりだったのではないかと推測します。
結論
モチベーションの低い新人に、激しい感情をぶつけて真剣さを伝えるのは一つのやり方だとは思いますが、ツイートのようにさらにモチベーションを下げる可能性があります。そうしたら、叱る方も途方に暮れ、叱られる方は絶望するという、最悪の結果となってしまいます。
モチベーションが低い、というとき誰が低いのかはきちんと定義する必要があろうと思います。もし新人側にあるのであれば、なぜ入っていきなり低いのか。そもそも社会人をやっていく心構えからして教わっていないのかもしれません。何が低くしているのかを上司として考え、豊富な経験で適確に指導していく必要性があろうと思います。
一歩上、上司のモチベーションが低い可能性も検討しなければいけません。本当に会社の成績を上げようというモチベーションが自分の中にあるでしょうか。新人をつぶしてもいいという志の低い考え方がないでしょうか。できない人は排除しできる人だけ残すというのは組織のモチベーションを下げます。ここでは詳しく説明しませんが、心理的安全が確保されないと個々のメンバーの心理はクローズドな方向に向かいます。そうすると建設的な意見は出ず、どんどん組織のモチベーションは低下していくことになりますね。
ということで、あまりこの件のレスポンスで触れられることのない「モチベーション」について指摘しました。
良い本をご紹介しておきます。
すべての組織は変えられる 好調な企業はなぜ「ヒト」に投資するのか PHPビジネス新書
「職場の変革において、彼の右に出る者はいない」――リンクアンドモチベーショングループ代表 小笹芳央
「このメソッドと出会えたことで、私の会社は復活した」――株式会社ネットプライス代表取締役社長 小谷北斗
サービスや商品の内容だけでは消耗戦に終止符を打つことのできない時代がやってきた。多くのリーダーが忘れがちなのは、この課題に対する根本策が「ヒト」への投資であるということだ。今、好調な企業はこぞって「ヒト」重視の施策を実施している。ある会社ではリーダーの声掛けを変え、ある組織では会議のやり方を変えた。組織改革の雄、リンクアンドモチベーションの気鋭のコンサルタントが明かす、組織をよみがえらせる7つの処方箋。
紙で買うと2,935円なのに、Kindleで買うと675円です(2019/5/29現在)。モチベーションを重視してみたいと思う方はぜひご一読をお勧めします。