orangeitems’s diary

クラウドで働くエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

ヨドバシカメラ経営の強さに着目する

f:id:orangeitems:20190403132245j:plain

 

ヨドバシカメラの強さ

アマゾンエフェクトが日本を席巻している中で、注目しているのがヨドバシカメラです。私が上京した約30年前、新宿駅に降り立って一際目立ったのが新宿西口のヨドバシカメラでした。田舎者で高校卒業したばかりの私にとってヨドバシカメラの品揃えの豊富さや店内POPの華やかさは、東京に全てのモノが集まっているということを教えてくれたものです。

そこから長い時間を経ても、ヨドバシカメラはヨドバシカメラで、基本路線は何も変わっていない印象です。インテリアや値札、商品の置き方は、商品自体のトレンドは大きく変わっているもののサービス自体に全くブレがない。店舗は必ず都会の一等地ですし、品揃えのこだわりは昔から一緒。BGMもあのリパブリック讃歌。店員の服装もブルーのシャツ、白のベスト、ベージュのズボン。変わっていません。大昔に感じたあの都会的なブランド力は均一に保たれています。市場が激変する中で変わらない強さは、変わらないからすごいのではなく、変わらなくても勝負できる普遍的な強さを持っていると思います。

経営面から見ても、ヨドバシカメラは他業種と比べて非常に盤石な状況です。非上場ですが、官報による2018年3月期の決算を見ると、以下の驚きの数字を持っています。

資本金 0.3億円
資本剰余金 1.8億円
利益剰余金 4302.37億円

売上 6406億
営業利益 476.83億
経常利益 495.92億 (経常利益率7.7%)
当期純利益 348.86億円

ヨドバシカメラは国内23店舗を持ちますが、全ての土地が自社所有です。しかもあの一等地ですから含み益もかなりあると思いますがそれは上記には含まれていません。

何がこの強さを生んでいるのか、社長である藤沢昭和氏、そのご子息である副社長兼CIO藤沢和則氏の記事をご紹介します。なお藤沢和則氏はECであるヨドバシ・ドット・コムを統括していらっしゃいます。

 

記事

藤沢昭和社長のインタビュー記事(2013/4/14 日経MJ)

messe.nikkei.co.jp

駅前に大型店を構え、きめ細かい品ぞろえとサービスで存在感を見せるヨドバシカメラ。リアル店舗志向に見えながらもインターネット販売へも素早く対応する。「売り上げより利益」を掲げ、商品の単品管理などインフラ力を磨いてきた藤沢昭和社長のぶれない経営は、家電量販店に吹く逆風を巧みにしのいでいるようだ。(聞き手は編集委員 中村直文)

 

こちらはもう5年前の記事にはなりますが、経営哲学が詰まった良い記事です。

 

藤沢和則副社長兼CIO氏のインタビュー記事

diamond-rm.net

家電量販店大手ヨドバシカメラ(東京都/藤沢昭和社長)のEC事業「ヨドバシ・ドット・コム」が好調だ。2017年3月期にはEC売上高1000億円を突破し、全体の売上高構成比15%を超えた(店舗事業も合わせた売上高は6580億円)。快進撃を続ける要因は何か、EC事業を統括する藤沢和則副社長に聞いた。

 

ヨドバシカメラの経営哲学がブレないとしても、EC事業に新たに取り組みどのように店舗を含めて顧客と向き合ったかがよくわかる記事です。社長のインタビュー記事と合わせて読むと非常にわかりやすいです。

 

考察(社長のことばより)

ヨドバシカメラの強さの源について、社長のことばからポイントを整理します。

 

売上ではなく利益を中心に置いていること

創業から長い時間をかけて「売上より利益」を追求してきた結果が、さまざまなビジネスプロセスにおいて生産性を向上させているんだということがわかります。

売上のために利益の上がらない仕事を取ることはビジネスの世界ではよくあることなのですが、これはご法度であるということを徹底するとここまで成長できるということを理解するべきだと思います。

シンプルな話なのですが、貫くのは難しいことです。

 

競合他社を見て行動を変えるのではなくお客様を見て行動すること

お客様がいて、どうやったら商品を購入してくれるか。Amazonを利用するお客様すらお客様と考えたとき、Amazonに匹敵するECを自前で持ち店舗と同じ値段とすることで使ってくれる。発想はごくごくシンプルなのですが、巨額投資も含めてジャッジしなければいけません。この判断をシンプルかつスムーズに実行に移せたことがポイントであると思います。

 

創業者経営であること

この決断をスムーズにできているのは、創業者経営であり、かつ非上場であり、かつご子息がキーとなるEC事業を発展させられる実力があることがポイントになると思います。

そういえば、大塚家具も創業者経営で成功しご子息が後継者となったわけですが、あの状況です。創業者経営の光と陰を感じる部分ではあります。

違いは、経営理念の共有にあると思います。

 

「少量・多品種・高回転」

本当の商売の秘訣というものは、奇をてらわずに基本に忠実にある。かつより数学的であることがわかります。どこを切っても原則がシンプルで、誰にでも理解しやすいのが面白いと思います。いろいろこざかしいことを言っているビジネスモデルは長続きしないと思います。創業者本人しかわかっていなくて、部下が育たないので会社が成長しない。社長がいないと何も回らないという会社にならないよう、ビジョンが誰にでもわかりやすくて行動に移しやすいというのは重要かと思います。

 

投資額が大きいほど見返りが大きい

これは簡単な言葉ですがとても難しい。見返りは大きいですがリスクも大きい。必ず勝てる投資とわかった場合は大きく勝負するべきだということになると思います。ソフトバンクも同じような思想かと思います。

 

自分なりの方向性とか考え方は、子育てのように言い続けなければいけない

まさに創業者の責任そのものだと思います。

引き継いだら終わり、ではなく、ビジョンは伝え続けなければいかないということですね。

 

考察(副社長兼CIOのことばより)

こちらはEC事業の内容に迫るものですが、いろいろと驚かされています。

在庫を持てば回転

藤沢 店頭と比較すると、1点当たりの単価は低いものの、買い上げ点数は多いです。金額ベースでは家電がいちばん高いですが、販売数ベースでは日用品、食品が最も売れます。
 日用品、食品は昨対で180~200%のペースで伸びています。在庫を持てば回転するというよい循環ができています。

これは社長の「少量・多品種・高回転」を具現化する言葉であると思います。ヨドバシカメラの強さの裏付けを感じます。

 

すべて自社

売上より利益、を追求するとこうなるという話だと思います。

自社で仕入れ、自社で販売しているものを、自社で配送する。とてもシンプルな考えです。

なんでもかんでもアウトソースするビジネスモデルのまさに逆です。アウトソーシングの方がモダンだと思うのですが、ヨドバシは全て自社。自社で賄うことで全てに責任が生じ、日々の生産性向上の効率が高まるのは当然です。

楽な部分だけ自社で、つらいところはアウトソーシングで、という企業は多いと思うのですが、つらいところすら自前でやることで顧客との接点を持ち、ビジネスにフィードバックしようとするところが、高付加価値を狙う社長の意思と一致していると思います。

 

お客さまに価格を下げてほしいと言われて下げているようではダメ

──オンラインでの価格設定はどのようにしていますか。

藤沢 家電量販店は価格比較サイトの洗礼を始めに受けました。価格交渉や価格比較への対応も慣れています。
 しかし、お客さまに価格を下げてほしいと言われて下げているようではダメです。ですから、ヨドバシカメラはオンラインと店頭で同じ価格にしています。

 オンラインと店頭で同じ価格を出していると、「競合店に対応されるのではないか」という懸念もありましたが、それよりも透明性を確保することを優先しています。

 競合店がどうあろうが、お客様の利便性を優先することで、付加価値を生む。考え方がとてもシンプルであることは時に、競合店等の動きも含めて迷いも生むと思います。これを排することで強みにつながっていると思います。

 

今後の強化カテゴリーはアパレルと生鮮食品

──今後、ヨドバシ・ドット・コムで強化する予定のカテゴリーはどこでしょうか。
藤沢 まず、アパレルです。専任バイヤーも自前で揃えます。すでにアウトドア商材は販売しているので、スポーツ関係のアパレルを先に揃える予定です。

 こちらは、今日の今日面白い動きがありましたよね。

 

www.asahi.com

家電量販大手のヨドバシカメラを展開するヨドバシホールディングス(HD)は3日、アウトドア用品のICI石井スポーツを買収すると発表した。ヨドバシの店に石井スポーツが入ったり、通販サイトでアウトドア用品を扱ったりして、家電以外の商品を強化する狙い。

 

本当に考え方が一貫していて面白いです。

 

物流や配送も含め、すべて店舗とオンラインは一体

──バイヤーはカテゴリーごとにいるのでしょうか。それともEC事業専任者がいるのでしょうか。
藤沢 バイヤーはカテゴリーごとにいます。バイヤーに限らず、店舗事業に重点を置くカテゴリー、オンラインに重点を置くカテゴリーがありますが、オンライン専業という社員は1人もいません。物流や配送も含め、すべて店舗とオンラインは一体でとらえています。

 顧客体験(UX)そのものだと思いますが、顧客から言えば物を買うという大きな見方をすれば、店舗もECも一つの流れです。どこから買おうが同じ体験ができるという安心感でヨドバシのファンを増やしていると言えます。そこにヨドバシ側の理屈はなく、顧客の気持ちを深掘りし、地道に必要なものをそろえていくのです。

必要とあらば、巨額の投資をする、ということ。

 

3つの原則

──競合対策として、どのようなことに取り組んでいますか。
藤沢 競合対策というわけではないですが、大きく3つあります。

 1つめは配送の品質を上げること。無理して上げるのではなく、無駄をなくすことで実現します。

 2つめは専門性。お客さまから迷わず、「ヨドバシだと安心」と思ってもらえるようにします。

 3つめは在庫の充足率です。お客さまが欲しいと思ったときに買えるように、つねに9割以上をキープします。

こちらは、まとめにもなる内容です。ECとなるとその機能や目新しさばかりに注目されるのですが、どう見ても店舗でも同じ内容が通用します。

上流から下流まで、社長の哲学が浸透するとともに、大きな決断を確信を持って実行するエンジンを感じることができます。

創業者企業は、トップダウンとなりがちなため、従業員はいろいろな思いが生まれるとは思いますが、経営スタイルはすばらしいと思います。

 

感想

アマゾンエフェクトにおいては各日本企業が相当苦労をしていると思いますが、ヨドバシカメラのこの戦い方こそが、本来、日本企業の得意とするところだと思います。

お客様観点に立ち、最善手を打ち続ける。記事中でも「シンプル」という言葉が出てきましたが、これまでのビジネスでこんがらがっているところをよりシンプルにすることにより、日本企業でもアマゾンに少なくとも国内では立ち向かえると思います。