orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

自治体がRPAで仕事を省略しまくっている一方で非正規公務員が激増しているという現実が指し示すこと

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自治体とRPAの蜜月関係

もう食傷気味になるくらい自治体が仕事をRPAで省略していると宣伝してますが。

 

www.atmarkit.co.jp

東京都は2019年3月27日、「RPA(Robotic Process Automation)による作業自動化の共同実証実験」の結果を発表した。同実験では、みずほ情報総研と4社からなるNTTデータ自治体RPA推進チームが共同で、RPAに向けた業務分析やシナリオを作成し、東京都職員とともに効果を検証した。その結果、処理時間の縮減や正確性の向上、自律的な業務改善を確認したという。

 

japan.zdnet.com

埼玉県が15業務を対象に、富士通のRPA(ロボティックプロセスオートメション)ツール「FUJITSU Software Interdevelop Axelute」を4月に本導入する。定型業務の自動化で作業時間を最大92%削減し、政策立案時間の創出を目指すとしている。富士通が3月26日に発表した。

 

www.itmedia.co.jp

長野県は、富士通のRPAツール「Axelute」と公共工事の設計・積算業務支援ソフト「ESTIMA」を活用し、行政事務を効率化する実証実験を実施。RPAでは作業時間を最大88%削減するなどの効果を確認した。職務を単純作業から付加価値の高い作業へシフトさせ、行政サービスの品質向上を目指す。

 

news.mynavi.jp

愛媛県松山市と富士通は3月29日、職員の働き方改革の推進と市民サービスの向上を目的に、最新ICTの利活用による業務効率化に向けた連携協力協定を締結したと発表した。同協定に基づき両者は、2019年4月から7カ月、市役所業務を対象にRPA(Robotic Process Automation)を適用し、有効性を検証する実証実験やAI(人工知能)の導入可否検討、現場課題の可視化による業務改善に向けた検討の3分野に共同で取り組む。

 

ほんと、自治体って、SIerにとって絶好のRPAの草刈り場になっていますね。

まあ、どの自治体にも非生産的な業務はありそうですし、RPA適用時の効果も絶大な数字が出せますからね。今年度予算を取っている自治体もありそうですし、令和元年度はRPAが随分出そうです。

・・・と思っていたら気になるニュースを発見。

 

増え続ける非正規の公務員

「RPA導入で仕事減ったぜ!」の裏に、このニュースです。

 

www.asahi.com

公務員の「非正規化」が地方自治体で進んでいる。総務省の調査で長崎県佐々町が全国トップの66・0%に達するなど、93の自治体で非常勤や臨時採用の職員が5割を超えた。人件費削減で正規職員が減らされ、身分や収入が不安定な非正規職員が行政サービスを担うようになってきている。

 

なぜ非正規が自治体に増えるんだろうと理由を探したところ、こんな記事がありました。

 

toyokeizai.net

いずれにしても、行政の現場はいまや、「5人に1人が非正規」。規模の小さい町村などでは、「3人に1人が非正規」「半数が非正規」というところもある。

非正規職員が増えた背景には、自治体の財政難がある。2007年には、地方自治体財政健全化法が制定。都道府県や市町村などは、目に見える「成果」を求められるようになり、正規職員を、“安価”な非正規職員へと置き換えるようになった。

自治労(全日本自治団体労働組合)の実態調査によると、非正規職員の7割が年収200万円以下のワーキングプアだという。ボーナスなどがある正規職員の3分の1以下である。低賃金で、いつ雇い止めに遭うかわからない「官製ワーキングプア」を、自治体自らが増やし続けているのだ。

 

自治体が収支を気にするようになり人件費を圧縮することを進めた結果、非正規職員を「生産」してしまったと。そして、おそらく非正規職員が担っている煩雑な繰り返し仕事を今度はRPAが飲み込んでいき、最後は非正規職員の契約すら切られてしまうのではないか、という絵が浮かびました。

 

端的に言って、仕事がなくなるのかもしれない

人口減と、外国人受けいれ、AIやRPAによる仕事の効率化と、いろんな因子が絡まりあって未来予測が難しくなっています。ただ自治体だけを見ると、

・正規職員が減り非正規職員が増える(現在)
・繰り返し仕事がRPAに置き換えられる(近未来)
・非正規職員の仕事が減る(将来)

こんなシナリオがまっすぐ進んでいるように見えます。

世の中もこれに追随するとすると、本気でベーシックインカムをプランとして考え始めないといけなくなるのかもしれません。

 

www.itmedia.co.jp

AIとセットで語られるようになったのは、第3次AIブームが到来し、これまでのブームと違って広範囲に人間が仕事を失う可能性が見えてきたからでしょう。AIが浸透して失業者が街にあふれた世界を考える必要があり、そのための対応策としてBIの必要性が語られるようになってきました。 

 

一方でRPAはシステム屋さんには非常に評判が悪く、効率の悪いシステムや業務フローの延命策でしかないという声も耳にします。ただし延命されてしまうとシステム改修という飯のタネも減ることからRPAの悪い面を喧伝しているとも言えると思っています。

ただし自治体の動きを見ていると、ここ数年で語られていた「AIが人間の仕事を奪う」という話がRPAの登場で歪められつつ急激に進んでいるという認識を私はしています。AIとRPAは全く違う存在なのですが、RPAに奪われる仕事がこれだけ多いということは、AI並みの仕事すら人間がしていなかったということの裏付けであると(厳しい表現ながらも)思います。