orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

田舎で仕事ができるかどうか

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私の定義する田舎

私は田舎出身です。

と言っても、30年ほど前の話なので、そのころの田舎はまだ活気がありました。大型スーパーが進出し商店街が寂れていく現象が起こり始めていたころでした。

小学校は一学年2クラス、中学校は3クラスあり地元社会はそれなりに立派に見えていました。ただ、同級生は何となく悟っていて、高校なり大学なりを卒業し就職するときには都会に出なければいけないことを覚悟していました。地元に産業は無く、役所か病院で働くしかありません。農業や漁業などの第一次産業は商売にならず幸せにならないと親世代は考えていたに違いありません。そういった地域の卒業式は都会のそれとは確実に違っていて、遠くの地域に行かなければいけない宿命が現実となり、散り散りになる仲間たちが決心をする式典なのですから、なかなか過酷だったと思います。

今、その田舎はどうなっているかというと、当時独立した町だったのが市に統合され、役場は出張所になっています。役場が無くなるということは地域としての拠点が無くなるということで、影響は小さくなかったように見えます。行政として効率は良くなったのかもしれませんが、町全体の活性化と言う意味では大きなマイナスだったんだろうと結果だけ見れば思います。

町に5つあった小学校、2つあった中学校はそれぞれ1つの小学校、中学校に統合されました。それでもクラスは1学年に1つしかなく、それでも数人しかいないそうです。広い町だったので徒歩で通えるはずがなく、スクールバスが毎日生徒のお出迎えをしているそうです。

私の知っている田舎はもうなくて、里帰りすると形は不思議なほど昔のままですが、いろいろなものが朽ちていたり平地になっていたりして、おそらくあと数十年ほどすると町ごと無くなっているのかもしれないなと本当に思っています。

 

ITと田舎の経緯

20年の間IT業界にいて、インターネットが出現したりデータセンター、クラウドという流れを経験しながら、もしかして田舎でも仕事ができるのではないかと思った瞬間もありました。特にこのCMのことをよくおぼえています。


1999年CM-IBM-e-buisiness2.mp4

インターネットにつながれば場所に関係なくビジネスができるということで、この世界観はすでに現実のものとなっています。サーバーサイドも、インターネットさえ引き込めば都会に機器がある必要もなく、IT業界に所属する会社員も田舎で仕事できる日がやってくるかもしれない、そう思ったときもありました。

しかし、そうはなりませんでした。データセンターが田舎にある場合、まず機器の保守が大変です。面倒を見る人が田舎に常駐しなければいけませんが技術者はまず田舎にいません。また保守部品を取り寄せるのも大変で、物流拠点が都会にある以上都会にあるデータセンターのほうが安心です。したがって、人と物が大量にある都会にデータセンターが作られ、そこにまた人と物が集まり、というループが発生したように思います。

かつ、インターネット上でビジネスをやりたい!、と思う顧客も都会にいます。ということは営業拠点は田舎におくことはできないので、営業所は依然として都会に設置する必要があります。当時はリモートでのコミュニケーションは電話とメールぐらいしかなかったので開発拠点を田舎に置くわけにもいかず、結局は都会にIT業界は集まってしまいました。

これが私が知っている、都会一極集中の経緯です。

 

今はどうか

ブロードバンドという言葉そのものも忘れられるようになり、多少の田舎であっても帯域の広いインターネットがつながるようになりました。この状況であれば、営業拠点は相変わらず都会においても、技術拠点は田舎に持つことは不自然ではないと思います。

事例もたくさん出てきました。

 

www.itmedia.co.jp

Sansanが徳島県神山町にサテライトオフィスを設置してから4年3カ月。そこで実際に働く人々はどのような成果を上げ、企業としてどんな価値が得られたのか。徳島の市街地から30キロほど離れたその地に向かい、“中の人”たちに聞いてきた。

 

www.huffingtonpost.jp

自然に囲まれた田舎で生活や仕事をしたいけど、都会の暮らしも捨てたくない。

そんな"いいとこ取り"ができる「2拠点居住」と呼ばれるライフスタイルが、注目を集めている。

長野県富士見町の移住者向け共同オフィス(コワーキングスペース)「富士見 森のオフィス」を拠点に、東京と長野の生活を両立する人たちが体験を語るイベントが、2月27日に東京都内の「DIAGONAL RUN TOKYO」で開かれた。

 

news.yahoo.co.jp

「都会へ出ていかず、地元で進学・就職したい若者が増えている」

「働き盛りの世代で地方移住に興味を持つ人が増えている」

最近、こんな話を聞いたり、身近な人の動向から実感したりすることはないだろうか?

マクロで見れば、東京圏に人口が一極集中している状況は相変わらずだが、一部では仕事を通じて地方と関係を結ぶ人や企業の動きが生まれ、それが地方活性化に挑む地域の活力にもなっている。四国の山間地域にサテライトオフィスを置く都市部の企業、副業として地方の企業の仕事をする首都圏在住の社会人を取材した。

 

ある程度成功し余裕のある企業が田舎にサテライトオフィスを構えて希望者だけ移住させるパターン。フリーランスであれば契約主が都会にいるので、週数回だけ都会に出向き、あとは田舎でリモートワークするパターン。この2通りが大勢のようです。

前者の企業のサテライトオフィス化については、リスクがあるとすればその企業に元気がなくなった場合です。つぶしがきかない、という表現が最も正しいかと思います。結局は都会に戻らなければいけない、そんなリスクを抱えて田舎に生活圏を構えなければいけないのは間違いありません。

後者の、2拠点移住については、これは得られるものと失われるもののバランスが重要です。2拠点である分どうしても移動時間や、移動にかかるコストが必要になります。そうすると、都会にいるフリーランスの方が単価面でも実働面にも有利になります。田舎に拠点を持つことで集中でき明らかに生産性を上げる。そんな覚悟がないと戦っていくのが難しいのではないかと想像しました。

どちらにしても、現実にトライされている方がいらっしゃって、すでに実現できていることは興味深いです。得られる部分、つまり田舎暮らししながらIT業界に関わっていくということは魅力的です。単純に、「いいなあ」と思います。田舎の持つ、自然の美しさや人々のおおらかさは都会にはありません。

 

福岡にIT業界が集まる

まあ田舎はいろいろあって難しいよね・・、でも東京ほど都会じゃなくって、ちょうどういい都会なら、デメリットがいろいろ軽減されていい感じじゃない・・?

 

nulab-inc.com

 

ということで、ここ最近福岡が注目され、実際にIT業界の人が増えていると聞きます。

福岡は何度か行ったことがありますが、オフィス、住居、交通、商業地のバランスが秀逸で、成長力を感じる街です。

ただ、福岡ばっかり成長したら結局は第二の東京、大阪になるわけで、私としては「本当の田舎に住みながらIT業界に携わる」ことに憧れますね。

冒頭のIBMが作ったCMの、砂漠でも仕事ができる。まだそんな時代にはなっていませんが、あのときの「もしかしたらそうなるかも?」という直感は大事にしたいと思います。5Gという新しい技術がついに実現する状況で、次の可能性を考えていきたいと思っています。