orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

ファーウェイを巡るアメリカと中国の貿易戦争をわかりやすく例える

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米中貿易戦争の本格開戦か

先週の米中首脳会談でトーンダウンするかと囁かれた米中貿易戦争は、全くそんなことはなくて、逆に双方が譲らず本格開戦したというほうが正しいと思います。週明けの株式市場の急落はどう見てもインサイダー的な下げ方であり、内部事情に詳しい投資家周辺は先に行動を起こしたと言えます。

 

こちらは今日12/6のニュース。

 

jp.reuters.com

[北京 6日 ロイター] - 中国の王毅国務委員兼外相は6日、前週1日にアルゼンチンで行われた習近平国家主席とトランプ米大統領との会談は「友好的かつ率直」で、両国間の貿易摩擦の激化回避につながるとの見解を明らかにした。

 

ほぼ同時のタイミングでファーウェイ副会長逮捕のニュース。

 

www.nikkei.com

カナダ司法省は5日、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の創業者の娘である孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)を逮捕したと明らかにした。米国が経済制裁を科すイランに製品を違法に輸出した疑いで、米当局が孟氏の拘束を要請していた。米国政府は今後、同社に制裁を科す可能性があり、米中摩擦の新たな火種になりそうだ。

 

もう、イケイケです。

 

www.nikkei.com

背景にあるのは米国政府・議会が急ぐ中国の通信・監視カメラなどハイテク企業を排除する動きだ。中国が通信機器を経由して米国の軍事技術情報を盗み取っていると見るためだが、対米関係を優先すれば、製造・部品調達の見直しにもつながるだけに企業には困惑も広がる。

 

強い同盟関係にあるイギリスがファーウェイ排除に動いたのも今週です。

 

jp.reuters.com

[ロンドン 5日 ロイター] - 英通信大手BT(BT.L)は5日、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]の製品を既存の第3世代(3G)と第4世代(4G)の基幹ネットワーク部分から排除し、第5世代(5G)のネットワークの主要部品としても使用しないと表明した。

 

米中首脳会談後、すぐにファーウェイへの締め付けが最高潮に達しているのは、明らかにアメリカ側の仕掛けだと思います。

 

なぜファーウェイなのか

今回の問題を、IT業界、特にインフラを長く見てきた私が例えます。

ファーウェイは、アメリカのシマ(領地)に手を出してしまったのです。

長い間、ネットワーク機器はサーバーサイドでもエッジと言われる端末側も、アメリカ起業の独壇場でした。日本では特にその傾向は顕著で、半分のシェアを米シスコシステムズが握っています。日本にいるとまだファーウェイの影響はわかりにくいと思います。

 

japan.zdnet.com

調査ではさらに注目すべき点として、シスコシステムズが各製品セグメントにおいてもそれぞれ50%前後のシェアを獲得していることを挙げている。

 

しかし、世界レベルで見ると、ファーウェイがものすごい勢いで成長しています。

 

ファーウェイ、世界のイーサネットスイッチ市場で主導的ポジションを維持 中国では3年連続で首位を堅持

IDCが発表した『Worldwide Quarterly Ethernet Switch Tracker (2017Q4)』によると、2017年の世界のイーサネットスイッチ市場全体の売上高は前年比5%増の約274.9億米ドル(約2兆9302億円※)にのぼりました。ファーウェイは世界シェアで第2位となり、上位3社のなかで最も高い対前年度成長率を記録しました。また、中国のイーサネットスイッチ市場では、3年連続で首位となりました。

 

既に去年のQ4の段階で世界シェア2位となり、かつ中国国内では独占的に扱われることも強い追い風となり、シスコを脅かす勢いです。

当然、反米的な国も世界には存在しており、その受け皿としても機能します。昨今のイラン密輸の件も同様のロジックです。

 

一方で、スマートフォンの世界もファーウェイが大旋風を起こしているのをご存知でしょうか。

 

www.itmedia.co.jp

HUAWEI P20 liteは、SIMロックフリー版も含めると、このところ総合ランキングがiPhone勢だけになることを何度も阻止している“iPhoneキラー”となっている。

 

www.bcnretail.com

「BCNランキング」日次集計データによると、2018年11月27日、SIMフリースマートフォンの実売台数ランキングは以下の通りとなった。

1位 P20 lite(Y!mobile)(Huawei Technologies)
2位 nova lite 2(Huawei Technologies)
3位 P20 lite ANE-LX2J(Huawei Technologies)
4位 R15 Neo 3GB(OPPO)
5位 AQUOS sense(シャープ)

 

私もこの前買ったばかりで使っていて思うのですが、iPhoneから変更したら不便になるかと思いきや、相当使いやすくてびっくりしています。しかもP20 liteは3万円台で手に入ります。新品のiPhoneの価格の3分の1で、性能、というより作りこみがきめ細かいのです。

ファーウェイ製のネットワークスイッチなどは私もまだ触れたことがないのですが、きっと相当にシスコの機能を徹底的に研究して、しかも廉価に販売しているのではないか、そう思います。

今年の春に、Interop Tokyo 2018にお邪魔したときも、ファイウェイのブースが相当広くとられていて、今年に入ってかなり、ネットワーク製品のシェアに食い込んできているのではないかと感じていました。

 

この状況は、わかりやすく例えられます。

もともとアメリカは中国の工場に生産を委託し安く作って外国に高く販売するというモデルで、蜜月関係にありました。中国はアメリカにとって、下請け会社のようなものでした。下請け会社の社員は、だんだん自分たちが何を作っているかを理解していきます。そのうち仕組みまで理解し、サポートも下請け側でできるようになります。元請けのアメリカも大助かりで、下請けの社員たちはどんどん知識を得ていきます。

そのうち、下請け会社も、「これなら自分たちだけで作れるんじゃないかな?」と考え元請けで作っていた製品と同じことができる機器を作り出します。初めはもちろん品質の問題もあったのですが、下請けの会社はただの下請けではありません。中国の会社です。中国政府は下請けが独自に作れるならば、中国で調達するものは全部下請けのものにしようとしてくれました。国内優遇です。12億人とも言われる中国市場は巨大であり、かつ単価も安いし、政府のコントロールが効く下請けの製品の方が都合がいいのでどんどん使われていきます。

使われていくと、いろいろな不具合も出てきますが、それをまた修正していくことでどんどん品質が良くなっていきます。結果的に、ファーウェイはシスコやアップルと言った元請けの会社と並びうる製品を開発し、しかも廉価で世界に販売することができるようになっていた。というわけです。

徒弟のフリをして堅実に下請けをしていた中国が、急に独立して自国の企業を脅かし始めた。元請けは怒りますよね。

 

www.bloomberg.co.jp

ホワイトハウスは首脳会談が「大成功」だったとし、米国が中国製品2000億ドル(約22兆7140億円)相当への関税率を10%で据え置き、来年1月1日から予定されていた25%への引き上げを先送りすると発表した。米国はトランプ政権が不満を持っている知的財産権侵害や非関税障壁など中国の貿易慣行に関して協議を直ちに開始することを望んでいる。

 

一連の状況を、アメリカは中国に「知的財産権侵害だ」と迫っているわけです。

ファーウェイは、このシンボルとなっていますし、実際それぐらい品質のいいものを出してしまったと思われます。アメリカの知的財産権を使わなければこんな品質のいいものが独自に出せるわけがない。と。

 

次のターゲットは・・

ファーウェイが具体的に締め上げられていますが、ITの世界で見た場合、次はアリババになるのではないかと思っています。

 

diamond.jp

 中国のアリババ集団とアマゾン・ドット・コムが目下、欧州で激しい戦いを繰り広げている。中核の電子商取引事業だけではなく、急成長するクラウド事業でもしのぎを削っている。

 クラウド世界最大手のアマゾンとアリババの競争は、欧州が米中ハイテク大手の主戦場と化している兆候とも言えそうだ。

 

下記記事を見ると面白いですよ。

 

qiita.com

 

zine.qiita.com

AWS経験者なら、Alibaba Cloudにもすぐ慣れる――エンジニアにとっての魅力

 

Alibaba CloudがAWSを狙い撃ちにしているのはよく知っていますし、アメリカはAmazonを防衛する必要があると思います。

 

ちなみに、ソフトバンクはファーウェイとかなり親密に取引していて、次世代通信技術5Gの開発においては協業関係です。

 

ファーウェイとソフトバンク、5Gを活用したトラックの隊列走行、遠隔運転に向けた実証実験を開始

ファーウェイ・ジャパンは、ソフトバンク株式会社と共同で、第5世代移動体通信(5G)技術を活用したトラックの隊列走行と遠隔運転の実現に向けた実証実験を、2017年12月から、茨城県つくば市で開始した。

 

ファーウェイと、ロボットにおける5Gの活用に向けた実証実験に関する契約を締結 | プレスリリース | ニュース | 企業情報 | ソフトバンク

ソフトバンク株式会社は、華為技術有限公司(以下「ファーウェイ」)と、ロボットにおける5Gの活用に向けた実証実験に関する契約を締結しました。両社は、インターネットを通じてつながるロボット「コネクテッド・ロボット」の実現に向けた検討や実証実験を2018年より実施する予定です。

 

アリババの大株主でもあるソフトバンク。

孫さんがトランプ大統領就任の際に飛んで面会にしにいったことが思い出されます。聡明である孫さんのことですから、現在の状況を予見していたのかもしれません。

 

gendai.ismedia.jp

 

日本も、米中の陰に隠れて‥というわけにはいかないように思います。