orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

コンピューターには存在しない「精神力」と言うパラメーターを考える

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コンピューターという不完全なもの

コンピューター。

能力以上のことを考えさせると、途端に処理能力が落ちて仕事が積みあがってしまう。

覚えられないぐらいたくさんの仕事を記憶しようとすると、もうこれ以上仕事ができないと発狂し溜まっている仕事をランダムに投げ出してしまう。

引出しに物を入れすぎてもう何も保管できないとなると、途方に暮れてしまう。

なんとも愛すべき存在なのですが、人間も似たようなものなのかもしれません。

一台ではどうにもならなければ二台、三台と追加してなんとかしようとするところも含めて。

 

体力と精神力

コンピューターなら、CPU、メモリー、ディスク使用率、ロードアベレージぐらいを見ていれば何となく無理しているかどうかはわかります。しきい値を設けて、達した場合は仕事をそれ以上させないように台数を増やしたり、リソースを追加して障害に至らないように日々気を付けるのがシステム運用の大事な仕事です。

さて人間はどうでしょう。わかりやすいのは体力です。労働基準法を持ち出さなくとも休みなく一年中働き続けたら体を壊します。環境が悪ければ風邪もひきます。自分の体力を管理するのは基本的に自分の責任で、何か予兆を感じた場合は大事を取って休みを取る必要があります。無理をする人をたまに見かけますが、体力が低下すると仕事の質も量も下がりますし、他人に移す可能性もあるので絶対に休むべきです。そんな状況になっても仕事が回るように組織を整えるのが管理職や経営者の責任です。かつ、国民が無理な状況に置かれないように国家が強制力を持って企業に強いるため労働基準法があるのでしょう。また、年一回の健康診断など監視体制も制度化されています。運用設計の観点から見ても素晴らしい仕組みだと思います。

一方で。「精神力」というパラメーターはどうでしょう。コンピューターと触れていると思うのですが「精神力」に対応するパラメーターは人間独特です。コンピューターがモチベーションが下がっていつもできる計算ができなくなるということはありません。間違えるときは必ず間違えます。再現手順が確立された場合は必ず再現します。私のコンピューターが大好きなところはここです。必ず割り切れるのです。人間が割り切れないのはこの「精神力」というパラメーターの存在があるからだと思います。

例えば、同じ人に同じ言葉をかけたとします。条件や気分や、はたまた体調などによって全然違う反応や結果となります。また同じ仕事を繰り返しさせたときに、99回は成功しても100回目は失敗したりします。油断、飽き、慢心などと言う言葉がありますがコンピュータにはこの現象がありません。人間の場合は100回の間にロジックを組み替えたり省力化しようとします。コンピューターはプログラムを変えなければいつも一定の動作をします。学習すらプログラム化することもできますが、それもまたプログラムですね。

最近はRPAだAIだということでコンピューター目線で人の精神活動をシステム化することが流行していますが、逆説的に、人間の制度もこの精神力というパラメータを一切無視して企画化されている場面が増えていると思います。システム化したベストプラクティスを逆に人間の活動にも当てはめようとすることを意味します。

しかし、人とコンピューターは明らかに仕組みが違います。

どんなにプログラミングしたところで、人はコンピューターではないのです。

精神力、と言った時点で情報処理業界の常識は当てはまらないと思った方がわかりやすいし適当だと思っています。

 

精神力を意識して生活を送ること

ここからは、完全に私の主観的な意見です。精神力という言葉を企業で使うことはほとんどありません。最近はストレス、と言う言葉がよく使われるようですが、感覚としては近いと思います。

まず、自分は人間であることと、精神力というパラメーターが備わっていて有限であることを強く意識してください。

例えば、大勢の前でスピーチ/プレゼンすると、精神力は大いに減ります。連日終電で帰ったりして睡眠時間が減っても回復しにくくなります。職場で誰かと仲が悪くなると心をすり減らします。仕事で失敗を続けたりすると心が暗くなります。プライベートでも、想定外のことが起こると精神をすり減らします。いろいろと精神力が減るタイミングがあります。

精神力が減っているときは心の風邪をひきやすくなります。普段しないミスをしやすくなったり、誰かと話すのが苦しくなったりします。細かいことに神経質になったりプライベートでトラブルが起きやすくなってしまいます。

そういうときは、精神力を回復させなければいけません。有給休暇を取って旅行に行くのもよいでしょう。ゲームに一日没頭してもいいです。おいしいものを食べたりするのもいいかもしれません。人によっていろいろな方法があると思いますが、何しろ精神力を回復させるのが重要です。

回復させることについてはわかりやすいのですが、消費することについては意外と人は鈍感です。見えないので自分でもわかりにくいのです。大事な商談などの日は、日中にそれ以外の予定をできるだけ入れないこと。そうしないと、別の予定のせいで精神力がすり減り、大事な商談の時に力が想定外に発揮できないかもしれません。このように精神力のペース配分が大事なのです。これを無視して馬車馬のように精神を張り詰めて長時間働いている人が、心の大きな病気を抱えがちです。

プロジェクト自体が大きく長丁場になりそうなとき、トラブル対応などで顧客との厳しい折衝が待ち受けているとき、初めての技術を使う時でナレッジが無く困難が予想されるとき。やりがいがあるときは特にその高揚感やモチベーションの向上で精神力の消費感が麻痺して張り切ってしまいがちなので注意です。急に精神力がゼロになって、手が動かなくなりパフォーマンスが急激にダウンしてしまうことがあります。こういうときこそ、長くなるならばのらりくらり対応しなければいけません。もしくは、完全に短期決戦と割り切って、徹夜してでもケリをつけつつ、二日ぐらい休みにして完全回復するという方法もあります。マラソンと同じで、精神力を無計画に初めから消費していたらゴールまで持たない。

人それぞれ精神力の大きさには差異があるので、ベストな働き方は一概には言えないのですが、大事なことは有限であることを意識することです。有限なものを優先度や重要度に基づいて配分していくことは、コンピューターと同じです。自分をいたわるということはこのことです。ぜひ、自分の仕事を大きな目で眺めて、つまらないことには消費しないように気を付けること。大事なことには集中すること。休む時は休むこと。特にIT業界は椅子に座ってコンピューターを操作するので体力をあまり使わないため、精神力の浪費に鈍感になりがちです。そこから普段しない失敗が生まれ、さらに無駄な仕事が生まれます。

また、モチベーションが高ければ精神力の低下を防げるというのも危険な考え方です。突然ガクっときます。モチベーションが高いのはいいことですが、しんどいものはしんどいです。大きな心の病気は長期間の休養が必要になります。ぜひ、消費することと回復をひもづけて考え、大きい仕事・責任の重い仕事・自分にとって苦手なこと、など負担が重いときは、休養とセットで物事を考えましょう。それが長期的に考えて一番生産性が高い対処だと思います。

 

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