orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

さようなら、インターネット掲示板

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原典:https://gigazine.net/news/20110415_nifty_serve/より引用

 

掲示板の終わり

Yahoo! Japanの掲示板サービスであるtextreamが終了となるそうです。

 

www.itmedia.co.jp

ヤフーは、掲示板サービス「textream」(テキストリーム)を年内いっぱいで終了する。「株式」「FX、為替」カテゴリのみ残して「Yahoo!ファイナンス」に移管し、そのほかのカテゴリは閉じる。

 

インターネットにおける掲示板の祖先というと、2ちゃんねるのことを思い出される方が多いでしょうがこれは違います。ニュースグループという存在がインターネット普及期にはありました。このニュースグループのクライアントですが古くはOutlook express、Netscape Communicatorなどにも搭載されていました。

 

ニュースグループ - Wikipedia

ニュースグループとは、ネットニュースにおいて話題のテーマや目的別に分けられた、記事の集まりのことである。あるグループを購読すると、そのテーマや目的に添った記事を読んだり、投稿したりすることができる。利用に関して、習慣的に「購読する」という言葉が使用されているが、ISP利用料以外は原則的に無料である。

 

日本にも、fj.*という巨大なニュースグループもあったのですが、いつの間にか無くなってしまったようです。

 

fj (ニュースグループ) - Wikipedia

京都大学のネットニュースサービスが3月をもって終了 | スラド

 

パソコン通信、ひいてはNifty Serveの掲示板の流れを組む、インターネット掲示板サービスは今回のYahoo!掲示板後継textreamの終了をもって、一つの区切りを迎えることになります。純粋な掲示板と言えば5ちゃんねるしか見当たりませんが、最近は世の中も5ちゃんねるを注目する機会も減りました。SNSの台頭が掲示板の衰退を招いたと言えます。

 

ネットワークにおけるコミュニケーションチャネル

私は20年ほど前に大学の卒論で、ネットワークにおける掲示板やチャットにおける人間の心理について書きました。そのときの結論が、「匿名性が高くなると他人への攻撃性が高くなりモラルが下がる」だったのですが、その時の仮説は当たってたなあという感想です。

卒論には、メディアにはいろいろ種類があり、特徴があるとも書きました。

・メール=非同期。相手は決まっている。1対(1or 多)のコミュニケーション。
・掲示板=非同期。相手は不特定多数。多対多のコミュニケーション。
・チャット=同期。相手は決まっている。1対(1or 多)のコミュニケーション。

メールについては、メールアドレスがあるので間違いなく、コミュニケーションを取る相手が特定されています。

掲示板については、投稿したとしても誰が読むかはわかりません。また、その掲示板トピックについてレスポンスがあったとしても、自分に向けて書いたものではない可能性もあります。誰かと誰かが言い争いを始めて、投稿者が置いてけぼりになる可能性もありました。そういう意味で多対多のコミュニケーションです。

チャットは、1対1か、もしくはLINEのグループチャットに似た1対多です。LINEは後から返信しても言い分非同期的な側面もあるのですが、基本は同期的なコミュニケーションになるのではないかと思います。なお、誰でもチャットルームに入って不特定多数の人と話すという形のサービスもあったのですが、長続きしませんでした。

本日時点で、掲示板サービスはどんどん廃れ、メールとチャットはまだ元気です。この違いは相手が不特定多数なのか、特定なのかという違いがあるのでしょう。人類は、知らない人とあまり関わり合いになりたくないのです。出会いは欲しいけれども、コントロールしたい。

SNSがその答えでありコミュニケーションする人を自分が主体的に選べる性質を持ちます。また、不特定多数へテキストを公開したい人はブログに移りました。

長い時間をかけてインターネットは、双方向コミュニケーションの形を最適化し、Yahoo!掲示板の延長上のTextreamが無くなるというイベントを迎えました。

 

なるべき姿に

この状況は、おそらく「匿名性が高くなると他人への攻撃性が高くなりモラルが下がる」と私が学生の際に思った結論が、人類にジャブのように効いていき、運営側もこんな殺伐としたサービスを継続する意味は感じられない、とモチベーションがダウンしていき、現在、なるべき姿になったという感想を持っています。

とは言え、匿名掲示板のような人間の暗い部分を体現したような場所は社会の精神衛生上一定の面積は必要と思われ今後も細々と残っていくのでしょうが、本件で一定の役割を終えたように思います。

さようなら、インターネット掲示板。

  

NIFTY‐Serveアクセスガイド〈’95〉 単行本 – 1995/7