昔のオフィスは紙でできていた
25年くらい前、学生の時分に初めて日本のオフィスでアルバイトしたことがあったのですが、それはもうキャビネットにキングファイルがびっしりでした。パソコンもワープロが主要な使い方だった時で、ExcelやWordは使っていると「不正な処理ガー」とかブルースクリーンとかまあ、「あんなもんで仕事できるか」という風潮はありましたね。まだ一太郎も元気だったか・・。
そうすると、基本的なワークフローは紙で回っていて、経団連の会長室にパソコンが持ち込まれて話題になるくらい、昔の人は、紙、そして電話と会議が仕事の媒体だったわけです。
富士通のリストラ断行の話
そして、この話。
富士通は26日、2020年度をめどにグループ全体で5000人規模を配置転換する方針を示した。対象は人事や総務、経理などの間接部門で、成長分野であるIT(情報技術)サービス事業に振り向ける。非中核と位置付ける製造分野の切り離しも進め、事業の選択と集中を加速する。
「サービス事業に集中して伸ばしていく。その大方針は変えていない。ただ、そのスピードは少し遅かったかもしれない」。2018年10月26日、富士通が開いた経営方針説明会で、就任4年目の田中達也社長に笑顔はなかった。冒頭のコメントは就任1年目に掲げた「営業利益率10%」「海外売上比率50%」という経営目標のうち海外売上比率50%を撤回するに至った誤算を問われての回答だ。
そもそも、これは何が起きているかをシステム的に考える必要があると思います。
お客様の要望を「A」とします。
商品(検収完了)を「Z」とします。
すると、
A → B → C → ・・・・・→ X → Y → Z
というプロセスになります。
このとき、AやZに近い人が「直接部門」になります。
A(お客様の要望)に対して近づくのは営業部門ですよね。
Z(商品)に対して近いのはIT業界で言えば技術部門です。
そして、AやZに遠いのが間接部門です。(L、M、Nくらい・・)
で、外部からSIerなどがやってきて、
「ウチのシステムを入れれば、少なくとも D →・・・→ J くらいは、全部半自動化できますね・・D → F→ Jくらいにはなります」
なんて話があって、ステップが少なくなります。
そのうちに、
「この F の部分なんて、RPA使えばロボットがやってくれますね」
なんて話になって、そのうち、D → J までダイレクトに進んでしまったりします。
こちらがどんどん進んで行って、A → ・・・ → Zの中にあるプロセスがどんどんなくなっていくのが、間接部門の縮小化となります。
もちろん、営業はいないといけないし、技術もいなければいけないので、AやZに近いいわゆる直接部門が増えていき、その間はどんどん自動化されていくことで今回のこのニュースのように、「仕事が無いので直接部門へ転属させたい」となります。
そして、富士通とは、まさにこの仕事、つまりITサービスをメインにしようとしている会社なので、世の中で最もこのような事象が発生しやすい企業であると思います。
ただ、日本的な雇用文化のなかいくら間接部門の仕事が縮小しても雇用は維持しなければいけなかった、が、経営目標の見通しが危うくなる中、やらざるを得ないところまで追い込まれたということだと思います。
むしろ、競争相手となる新興企業においては、もともと間接部門を少なくしできるだけ最新のパッケージを用いてワークフローを組み立てますから、大企業が間接部門のコスト混みで提示するコンペでの価格で競争が不利に働き、小さな企業にコンペで負けてしまうこともあるのでしょう。単にマクロの利益確保の面だけではなく、A → ・・・ → Zをスリム化することでコストを下げるとともに、AやZに近い直接部門を増やすことで、売り上げ規模を上げていこうという戦略です。
数学的には、何も間違っていないです。
現場を見ていくと
ただ、ミクロに見ていくとすべては人です。バリバリの間接部門だった人が急に営業をやれ、技術をやれと指示されてついていけるかというと厳しいものがあります。だから転職のあっせんもするとあります。
間接的な仕事が無くなっていくのはもはや自然の原理であるし、無くなることを予見して新しいスキルを身に着けていき、価値を高めていくということは、実はIT業界にいると当たり前のようにやらないといけないことですが、なかなかこの5000人という数字を見るととてつもない人数であると思います。むしろ2018年の現在まで先延ばしにしてきた感のある数字に見えます。今、現場はどういう雰囲気なのでしょうか。
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