orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

今のままでは子どもが増えることはないと言える理由

 

40代後半、もうすぐ50歳が見える私。この年になると上の代から下の代まで見渡せる。

私たちの年代は、世代ごとハシゴを外された経験を持つ。親世代はいわゆる団塊の世代。高度経済成長期において、たくさん働いて、そして給料もぐんぐん上がって行って、しかも終身雇用で年功序列で、将来をすごく楽観的に考えていた人たちの群れだ。だから、我々の世代の人口は他の世代と比べても多い。

ところがバブル崩壊なんて起きちゃった。その頃私は10代だったけど、そこから日本経済の長い低迷が始まった。ざっくり言えばバブルが弾けるまでは日本は過剰投資が起きて、生産能力も過剰になった。でも、とにかく投資すればもっと価値が上がる、というシンプルな理由で、さらにさらに生産能力が上がった。日本製品も良く売れた。

ところが、色々な理由でバブルが弾けて、残ったのは生産能力。過剰設備と過剰人員。各会社はどうしたかというと、新卒採用を大いに絞った。リストラと言う言葉も同時に流行したが、あれは配置転換のことを示すのであり解雇までは意味しない。新卒を絞りながら、会社のスリム化・適正化を進め、高い給料をもらっていた年配の方は、希望退職・早期退職を行ってできるだけ出て行ってもらった。

私の年代から下は、そもそも楽観的な親世代のために人数が多かったのに、急に新卒採用を減らされ大混乱に陥った様子を、人は就職氷河期と呼んだ。同時に非正規の制度が拡充され、正社員になれない同世代も大量にいた。だって、人数が多かったから。その頃、「あなたがいなくても代わりはたくさんいる」は本当に私、聴いたことがあるからね。若手の頃。

私が二十代のころ、おかげで周りの皆は、将来を悲観したし、子どもを作ることへの不安感を強く感じた人も多かったはずだ。一方、共働き、いわゆる二馬力じゃないと暮らしていけないと考える夫婦も増え、子どもは一人もしくは作らない、そして両方働く、みたいな選択肢を、たくさんの人が取ってしまった。それが、今の少子化問題につながっているのを知っている。みんなサイレントに選択をし、長い時を経て今の社会に突き付けている。つまり、今の状況は手遅れの結果である。今の少子化の状態を心配するのなら、ざっくり二十年遅い。何を今さら、と大いに思う。長い間かけて世代(私も含まれる)ごと圧迫し、過剰生産設備が解消してから、「え?子どもが少ない!?」なんて誰が言っているのか、ちゃんちゃらおかしい。

 

2006年、今から17年前。朝日新聞の記事を引用しておく。

 

www.asahi.com

 少子化に歯止めをかける政策は何か。朝日新聞社の世論調査から、目先の政策ではなく、ライフステージ全体を見据えた総合的な対策を望む民意が浮かび上がった。結婚や出産、保育への個別支援よりも「子育てしやすい労働環境」が必要だと考える人が4割近くで最も多い。経済支援策について聞くと「保育・教育費補助」がトップで、将来への不安ものぞく。

 

この記事をどう思うか。まるで、今論じられていることと同じ、ではないか。

この頃に既に気が付いているのに何もしない、もしくはやっても失敗した国が、今何かできるはずはない、と思っている。

バブル崩壊後に日本を統治していた人たちが考えた、日本経済のソフトランディングの道が、あの頃の私たちに大いに犠牲を与え、それが今の少子化を呼び寄せた。

今何が起きているかというと、少なくなった若手の奪い合い。どの会社も、今後の会社の継続性が保てないと言う危機感が強く、若手をいかに採るか。そして長く働いてもらうかということが経営の重要課題になっている。これは間違いない。しかしあと何年かすればもっと立ちいかなくなる。もっと少子化が進みつつ、上の年代はどんどん引退していくのだから。

我々の世代の恨み節は、どうせ聴いても仕方がない。ただ、1つおぼえていて欲しいのは、今の少子化対策など、二番煎じ、三番煎じなのである。そんな対策で解消するのなら、とっくの昔に解決している問題である。

 

 目指すのは「産めよ増やせよ」ではなく、産みたい人が産める社会。そのためには、企業や地域も巻き込んだ総合的な対策が必要だ。

 

と、2006年の新聞が書いている。どれだけ、長い間、この問題に対して何もしてこなかったのか、ということの証拠となる一文である。