orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

厳格なルールを実装した結果、大変な状況になったデータセンターを見たことがある

 

とあるデータセンターで働いたことがあるのだけど。

私が常駐したタイミングにおいては、とてもカオスだった。8時半が始業で、他の職場よりもスタートが早かったにもかかわらず、みんな夜の10時くらいまで働くのが当たり前みたいな文化だった。

直感的にアホかと思ったけど、アホはアホなりの理屈があるのだろうと、2ヶ月ほどはほとんど黙って観察に明け暮れた。そんなに何をすることがあるんだろうか。好奇心もあった。

様子を見ていると、無駄が多かった。1を10繰り返すのに、わざわざ10を手順書に起こしてベタ貼りしていた。それをまた印刷して、そして有識者が、紙でレビューをしていた。赤ペン先生だった。その分厚い紙をまたデジタルで修正して、また印刷して。現場は紙まみれだった。

その分厚い紙がやっと完成し、次は役職員に印鑑をもらう、はんこリレーをしていた。役職員も一人だけではない。何人もいる。そしたらだいたい不在の役職員はいるので、待ちとなる。待つのである。手順書は完成しているのに、役職員が帰って来ないので自席で待機だ。アホだ。この待っている時間も業務時間になる。

その上に、このはんこリレー、形式的だ。分厚い紙を役職員がまじめに見るものか。彼らもいつも終電まで残っていた。そんな末端の作業の細かい手順までを理解できるほどの余裕もない。概要だけ聴いてポンポン押していた。たまに機嫌が悪いと詰問されることがあるので、機嫌が良さそうなときに持っていけ、みたいなテクニックも生まれた。ますますアホか。

あと、この分厚い紙がビルの一角に保管されていたんだけど、棚卸もせずにどんどん積み込んでいったので、一角が紙で溢れるということもあった。

ただ、間違ったことはしていない。

・作業は手順書を作成すること
・手順書は有識者のレビューを受け承認を得ること
・作業実施にあたっては、役職員の承認を得ること
・手順書は保管し、何を実施したか後から確認できること

基本だなと思う。どんな運用業務でも基本中の基本じゃないかな。

でも、これを雑に、大規模運用チームに当てはめると冒頭のようにアホらしいことになってしまう。ルールを厳格に適用した結果、そこに参加する人々がどんどん不幸になっていく。

なのに、これを守れなかったとき、不備があったときに、仕事の真剣さが足りない!。技術スキルがない!。みたいな詰めを喰らうという文化が存在していた。

ルールは素晴らしいのに現実が素晴らしくならないのは、スキル不足だ、モチベーション不足だ、みたいなロジックだ。

なんとも、アホな現場だったな、と思う。

最も大きな問題は、ルールが複雑過ぎたことだ。複雑なルールには原因があって、問題が発生する度にルールが追加されていったらしい。対応策が、新しいルールの策定と実施、というブームがあったためと聴いている。そしたらそうなるよね。ルールは増えて、増えて、そしてルールがどんどん肥大化し理解できづらくなっていく。だからルールを守れない人が出て、そして教育がなっとらんと、ルールの教育に当てる時間が長くなっていく。

みんな終電に帰っていたのに。もっと時間を使うのか、と。

そして、また人が増えていく。稼働が増えるのは人手が足りないからだ、と人がうじゃうじゃ増えていく。そしてまた問題が発生しルールが増えていき。

全くの悪循環だ。

私が当時取り組んだことを思い出しておく。

・定期的に行う作業は、徹底的に自動化した。作業手順書の作成をパラメーターだけ変えれば自動的に作成できるようにした。作業内容のうちシェル化できるものをシェル化し、手順としてはシンプルにできるようにした。定期的に行うということは、一度スリムにしてしまえれば何度もループするので、費用対効果が大きい。

・当日準備し当日やらないといけないような作業を減らした。依頼元にも、必要性がなければ断り延期するように働きかけた。予定作業をまとめて役職員に承認いただくようにし、はんこリレーの回数を減らした。

・たくさんの作業について、冗長となっている複数の作業の存在を確認した。1度でできることもたくさんあった。作業計画の時点で、作業が望ましいか吟味するようにした。

つまり、ルールが問題じゃなく、仕事の仕方自体が雑だった。雑なのにルールだけを当てはめた。雑だろうがなんだろうがルールを守ればいいという、雑な意識が現場を覆っていた。

あの、終電上等なブラックな雰囲気も、好きな人はいたっぽいしな。

そういえば、あの現場はどんどん改善していき、残業時間も大幅に減った。

おかげで人が過剰気味になり、私も含めて現場から離れていったというオチまである。

それが幸せなことなのかは知らない。

 

ルールを策定するのも大事だし、実施するのも当然なんだけど、中身の改善がまず大事。噛み合ってないと大変カオスな現場が生まれるが、まさにあの現場はそれを具現化したようだった。貴重な体験だったなと思う次第だ。