そもそも人材難というか人材不足というか、求人したところで応募数もたかがしれていて無力感すら感じている。それでも求人を行わない会社は時間とともにしぼむ一方である。何らかの理由で社員が退職することは避けられないからだ。
だからこそどんな会社でも求人は出すのだけど、ありがちな失敗をみんなしている。一流と言われている企業すらだ。
■会社概要を書くとき
→→求職者にアピールしたいので、とてもいい会社であることを強調したくなる。ビジネス的には、売上・利益の成長率。成長市場に切り込んでいること。優良企業が取引先であること。残業が少ないこと。ワークライフバランスに理解があること。リモートワークなど先進的な働きかたを実践していること。社内が融和的な雰囲気であること。女性でも働きやすいこと。オフィスがきれいなこと。働く環境が整っていること。教育環境が整っていること。キャリアパスがしっかりしていること。
■求人条件を書くとき
→→高い収入を提示すれば応募が来るのがわかっているが、既存の社員の給与テーブルを無視できない。だから、上限をそんなに高くするわけにもいかない。また、そもそも中途でどんな能力の人が来るのかバラツキがありすぎる。したがって、300万~1000万、みたいな幅を持たせて書く。
→→欲しい人材の特徴を思いつく限り書く。こんなスキルあんなスキル。経験がたくさんあったらうれしいな。書けば書くほどスーパーマンになっていく。あれ、こんな人材うちの会社にいるんだっけ。ま、いいか。
こんな具合である。
まず会社概要がインフレしやすい。求職者にアピールしたいので、いかに自分の会社がいいかアピールする。悪いことは一切書かない。写真は、奇跡の一枚を集める。いいことは許される範囲で素晴らしく書く。清書を重ねるごとに、なんだかこんな会社ほかにはないよね、という状況になる。もともと自分の会社には愛着がある人が求人を作るので、インフレしがちなのである。
また、欲しい人材の特徴というのも、今いないからこそ、理想が並び、これもインフレする。そりゃ、来てくれる人の能力が高いに越したことがないのである。この能力は必須、この能力は歓迎。この歓迎のところにもうたくさん盛り込むのだ。そりゃ、素晴らしい会社で仕事するんだから、素晴らしい能力があって当たり前だよね、と。
そして、条件のところで急に、スンと現実に戻るのだ。だって、もう雇っている社員もいるからここだけは現実的にならざるを得ないよね、と。また、高い給与を支払っても雇ってみたら能力が低い、みたいなリスクも多いよねって。
こうなるとどうなるかというと、すげー理想的な会社に、理想的な能力を持った社員、そして現実的な待遇と、待遇だけがケチくさく見えてしまうわけである。なんでこんないい会社に高い能力の人が呼ばれ、で給料低いの??。この不調和のある求人が、やけに多いわけである。
そもそも求人を出す側が考えてほしいのは、待遇がそこそこであれば、求める能力もそこそこにしなければいけないという大前提である。求人側に高望みし過ぎなのだ。マネージャー?リーダー?いやそれならそれなりの待遇を提示しなければ、もう誰も見向きもしないスパム求人の出来上がりなわけである。会社からは転職サイト運営へお金だけが出ていくのみだ。
いや、そうすると、求人の待遇条件を上げる前に、既存の社員の給料を上げないと理屈に合わない・・と思ったあなたはご正答。その通りで、昔のレートで雇った社員は大事にしてほしい。それでも転職しないんだからありがたいと思った方がいい。
もしくは、もう未経験優遇で、一から育てて廉価なマネージャーやリーダーを求めるしかない。
山のような求人を見ながら思ったこと。こんな待遇で、何でこんなアピールと視座と要求水準だけすごいの?。