あえて具体的な例は出しませんが、どんな市場にも「お、儲かるんじゃないか?」という成長性が認められる場合、市場参入が相次ぎます。
そこに初めからいてシェアを持っている場合に、競合が入ってきて、ウチの事業は大丈夫なのか?となりざわつきます。これまで競争もなく順調に売り上げを伸ばしてきた会社が浮き足立つことがあります。
特に自社がベンチャーや中小企業だったときに大手が参入してくると、大丈夫かとなりがちです。
大企業は特にテレビCMや全国の支店網などを通じて大量に宣伝を仕掛けてきますから、これまでリーチできなかった層に短期間に売り込み急にシェアを伸ばしてきます。どちらかというと先駆者のシェアを奪いにいくのではなく、新しいユーザーを呼び込むことで先駆者に追いつこうとします。料金も赤字前提で安く設定するとともに、サービス内容もクローンかと思うほど似せてきます。
だとすれば大手が勝つんじゃないかと誰しも思いがちですが、結構な割合で先駆者は逆にこの競合の動きは味方になります。なぜか。
それは、概して競合のサービスが劣化サービスになりがちだからです。立ち上げて急にユーザーを取得した結果、いろんな不具合や不便に晒されます。始めてみたものの今一つ使いにくくそこで初めて、別のサービスはないか探し始めます。そのときに先駆者たる自社のサービスが目に入り移行を考え始めるのです。
つまり、大手の競合は、中小ベンチャーが営業できなかったホワイトスペースに大量の資金で入り込み市場を拡張してくれ、そしてその部分がそっくり将来の潜在顧客になるのです。
競合に対して、
「一緒に市場を盛り上げてくれるという意味で歓迎します」
という反応をする社長のコメントを良く見ます。それはこのような意味です。
もちろんこの現象を起こすためには重要なポイントがあります。先駆者のプロダクトやサービスがかなり練り込まれ改良を重ねていて、かつ日々進化していることです。
SaaSなどのサービスは外見の仕様をまねればクローンプロダクトがすぐ作れるような気になりがちですが、実際は地道な改善を繰り返し続ける必要があります。先駆者はプロダクト投入から様々な困難や要望に晒され、理屈があっていろんな改良を施していますから、外見や仕様だけ真似しても、劣化サービスしかできあがりません。そして競合大手が資金を投入して営業活動している間にも、先駆者は地道に改良していきます。
メルカリの山田CEOのインタビューが印象に残っています。
西村氏:ビジネスサイドだと「差別化なんてないよ」という話がよくあると思います。機能のコピーも簡単にできてしまう。
山田氏:GoogleやFacebook、Snapchatなど世界的に成功しているインターネット企業を見ていると、例えばマークザッカーバーグが全てのアップデートを把握しているわけではなく、エンジニアがどんどん改善をしているんですよね。
今FacebookとTwitterを見ていると、もはや追いつけないぐらいの差が開いている。
GoogleとBingも同じですね。そういう1%の改善をどれだけ繰り返せるか、それができる組織をつくれるかが重要です。
メルカリにおいても、そこが強みになっているかなと思いますね。
つまり、もし先駆者であっても改善を積み重ねられる組織やマネジメントがないと、大手に市場を飲み込まれてしまうか、買収されてマネジメント自体を乗っ取られてしまうということにほかなりません。
フリマアプリに限らず、いろんな市場で似たようなことが起こっています。大手の競合が現れた際に、これをチャンスにもできるということをおぼえておくべきです。