orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

データセンター勤めで不毛な作業だったと思うこと

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はじめに

私はデータセンターで働いていた時代があって、いろんな仕事を経験して貴重な財産を得ました。ただ、ああ、あれは無駄だったなあという記憶は種々あり、下記の記事を読んで思い出語りをしたくなったのでまとめておきます。

 

blog.father.gedow.net

今月、とうとうオンプレミス環境がその役割を終えたので、当たり障りのない範囲で思ひでを記録しておこうと思います。

だいたい 2002年 から運用が始まったので18年ほどの歴史でしたが、血と汗と…… 血と汗くらいですかね滲んでるのは。さぁ振り返りです。

 

 

あれは不毛だったな

私がいたデータセンターは、ある大きな会社が自社システムを動かすために構えた建物でした。したがって、サーバールームの中にあるすべての機械はいろんな部署が担当している自社所有の資産でした。

資産ということは減価償却ありきなので、機械が正しくビジネスに利用されているかを定期的に確認する作業が必要です。機械を持っていても使っていなければ、それは資産ではありません。ただの鉄の塊です。経理上、正しく資産管理をしていることは重要なので、機械がちゃんと稼働し、想定している場所にあって、電源が付いているということは、技術者が思っているより大事なことなのです。

この辺りに詳しくない人のためにもう少しだけ解説すると、100万円の機械を買った時に、もちろん100万円のお金は無くなりますが、決算書にはマイナス100万円とはしません。まだ機械には価値があるので、例えば5年間(60か月)でゼロになるように処理をしようとすると、一か月で17,000円弱をずつマイナスにしていきます(その他いろんな計算方法はありますが一例です)。減価償却と言いますね。

で、減価償却する前提として、売上を上げるための機械でなければいけません。どこかの会社がアメリカの会社を大金で買って、それを減価償却して決算してたけど、でもその会社、全然儲かんないや~、ってことがわかり、まだ減価償却していない残りの分を一括で償却(マイナス計上)することがありました。おそらく、日本の会社は新型コロナの件で「減損処理」ってのをたくさんやらなければいけなくなるはずです。今持っている設備が、減価償却期間に売上が見込めない。だから資産からマイナスする。いやいや、世の中復活して儲かるかもしんないじゃん。と思うかもしれませんが、会計監査はビジネス上の売上推移を見ています。ずーっと売上が上がんないのに、減価償却していない資産(残存簿価と言う)が過大だと、そりゃおかしいよね、って突っ込まれてしまいます。

さて、話は逸れましたが、技術者はだからこそ、サーバーなどの機械についてちゃんと動いているか確認しないといけない。これを資産棚卸作業と言います。資産管理表というリストを経理と共有していて、一つ一つの機械に資産管理番号を付け、テプラなどでシールを印刷。物理的に機械に貼っていきます。だから、データセンター中のありとあらゆる機械にはシールが貼られているはず。そのシールを手掛かりに、資産管理表の一行一行を見ながら、想定しているサーバーラックにあるかどうかを確認していくのです。また、電源が上がっているかも確認します。

 

この作業がですね、機械が数十台であればまだいいんです。

私が担当したリストは千台以上ありました。

しかも、「ない」んです。あり得ますかね。二つの「ない」があります。

・リストにはあるけれど、物理的に機械がない
・物理的な機械はあるけれど、リストにない(シールも貼ってない)

機械を臨時で別の場所に移動したら起こりえます。または、保守でサーバーを入れ替えた場合も起こりえます。新規構築や廃棄のタイミングでも起こります。何しろ設置、移動や交換、廃棄については、本来は資産管理表の更新が前提ですが、千台万台あり、かつ作業を下請等々がやったり繁忙期でとにかく完成させなければいけない、などがあると、更新もままならなくなります。

データセンター設立当初から、理由と思想を知って、技術者が資産管理をコツコツ毎回の物理作業のたびにこなしていれば、棚卸作業なんて短時間で済むはず・・なのですが、私がそのデータセンターに参加した当初は、もう、表がめちゃくちゃ・・でしたね。

また、サーバー前面にシールを貼る箇所がなく奥まったところに貼られていたり、サーバーラック内で複数の機械を詰め込み過ぎて暗くて見えなかったり。あとケーブルがスパゲッティーになっていて機械が見えない!なんてこともありました。

そして、絶望的なのは、資産の管理単位が「サーバー単位」ではなく、「購入したタイミング」であること。増設したメモリーはハードディスクが、別の資産管理番号になっていて、それが装着されているかどうかを外観からは確認しようがないというのも心が折れました。メモリーにシールを貼るわけにもいかないでしょう?。

あと、「サービスに使われているか?」というのもどんどん微妙になっていきました。仮想化です。機械の上で何のOSが動いているかは仮想化によって切り離されたので、資産管理上のサービスに使われているか、も外観ではわかりにくくなってしまいました。

当時は、数週間かけて、A3用紙に数十枚あった資産管理リストをきれいにしていった思い出があるのですが、多分あのリスト。また陳腐化し、適当にチェックつけておしまいにしている可能性もあるなあなんて思い返しています。

 

 

パブリッククラウドの今

まあ正直言って、パブリッククラウドにすると利用料だけ払っていればよく、資産管理をする必要が全くない。

とは言え、パブリッククラウドで使っているリソースが、本当にサービスに使われているかの棚卸は必要かと思います。無駄なサーバーを借りて放置したら、お金が逃げていくだけ、です。

ただ物理的な管理からは逃れられるし、管理画面やAPIでリストも瞬時に作成できますから、相当生産性は良くなります。

「オンプレミスのほうがパブリッククラウドより安い」なんて言っている人は、このような運用コストの低減までは計算していません。オンプレミスの面倒を見ていた時は、やたら人件費がかかっていたことを思い出します。「いやだからといって、クラウドにしたからと言って、IT部員解雇できないでしょ。その分の給与は減らないから運用コスト減らないよね」なんて意見を聞いたことがありますが、技術者の技術に見合わない作業に給料を払っている可能性大です。資産管理なんて、本来インフラエンジニアの技術とは乖離しています。むしろ事務処理スキルに近いです。何をあんなに時間を取らなければいけなかったのか。

あの頃、めちゃくちゃ忙しかった割に、技術的なことより、手続き的なことに忙殺されていました。勉強にはなりましたけど、ね。

クラウドの世界にいて、あのときやっぱり一番不毛だったなと思うことは、資産管理でしたね。

他にもいろいろ思っていることはありますが、長くなりましたので別の機会にします。