orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

「RPAは人員削減のためではない」は経営サイドの常套句

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RPA導入は現場のケアが大事だということ

RPAによって現場の繰り返し作業が効率化されることは周知の事実となっていますが、これを導入する最大の障壁の一つは、現場が素直に理解し使ってくれるかだと思います。頭ごなしに導入を進めて大失敗した現場が山ほどあります。

通常のシステム開発であれば、経営サイドの一声で導入が決定し現場は運用テストにお付き合いしながら慣れていくだけ、なのですがRPAは毛色が違います。

RPAは、現場の仕事のアクセラレータです。これまで当たり前だと思っていた仕事に手を入れます。最終的に何が起こるかと言うと現場の仕事が無くなります。無くなった先に何が待っているか。自分の身の危険につながるため、現場の人々は頭では理屈はわかっていても防衛本能が働きます。

仕事をこなすためのエンジン自身がその改善をためらうのですから、実はテクノロジー以上に人間のケアの方が大切な技術であると言えます。でないと、自分の墓を自分で作っていることになりかねないのです。

RPAで生産性を上げない社員には早期退職してもらうしかない、というような圧力はむしろ防衛本能を強化する方向に働いてしまい、悪い現場の結束を招いてしまうのではないでしょうか。この仕事はRPAには任せられない、現場は回らない、いろんな言葉でRPA導入担当者の意欲を削いできます。

 

RPA導入事例とセットで語られる「RPAは人員削減のためではない」

事例を見てみましょう。

 

biz-journal.jp

2020年度末までに17年度比で国内損保事業の従業員数を4000人減らすとしていますが、この要員削減の大半は定年退職などによる自然減です。そのため、リストラといわれる希望退職の募集はしていません。

 ここ数年、「本来必要な業務かどうか」という観点から、ゼロベースで業務の見直しを行っています。さらに、AIや、ロボット技術を使い業務プロセスを自動化するRPAなどの活用により、業務効率化や生産性向上の取り組みが進み、多くの時間を創出できるようになってきました。これにより、自然減による減少に対して、多くの人員を採用しなくても、お客さまへの対応品質を維持し、新しい取り組みをすることが可能になってきたと考えています。

 

tech.nikkeibp.co.jp

ニチレイロジグループが物流事務の働き方改革でRPAを導入している。RPA適用が難しい個別業務も含め、目標の2倍の作業を自動化した。女性社員の支持を取り付け、手厚い導入支援体制を敷いて成果につなげた。

※有料記事中に、「人員削減のためではない」というセミナーを実施した内容が記載されています。

 

www.uipath.com

「当社では業務の性質上、かなりの緊張感をともなう作業が多くあります。そのような中で従業員のストレスを軽減し、より良いパフォーマンスを発揮できる環境を作ることを目的としてRPAの導入を決定しました。何よりも重視したのは、『RPAは人員削減のためのツールではない』という共通認識を持った上で、業務プロセスの見直しを前提とした自動化で、業務の質的改善や高度化を図ることを目指しました。」

 

www.nikkei.com

定型的なパソコン(PC)作業を自動化する「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」は導入して終わりではなく、現場で使い始めてからが本番だ。現場の担当者を味方に付けて、導入成果を引き出すためにはどうすればいいか。

※有料記事中に、「人員削減のためではない」と業務担当者へRPA導入担当が説得した内容が記載されています。

 

成功事例を読めば読むほど、現場が不安を抱くことがセットで付いてきます。

 

終身雇用を捨てる世の中で説得力はあるか

昔の、「就社」的な定年まで一社で正社員として働き、年功序列にて身分が保たれていた時代ならまだ経営サイドが「人員削減のためではない、生産性向上を行って現場を楽にする」という言葉も踊ったでしょう。

しかし、いざ景気が今後悪くなったときに、RPAで工数が削減され余裕のある現場に待っているのは間違いなく一番は「非正規雇用の雇止め」です。それでもダメなら終身雇用の解消へ手を付けるという道筋は実はもう引かれていると考えています。

終身雇用終了の話は、経団連会長やトヨタ社長の発言から話題となったわけですが実際、大企業が社内制度を大きく変更したわけではなく、前振りです。まだ大きな経済失速が顕在化したわけではないので、いざそうなったときには終身雇用に手を付けざるをえないと宣言しているわけです。

一方でそれを行うための間引きの原資として、RPAで社員の工数をしっかり削減しているのですから、戦略的にこの世の中は、大不景気に対する耐性を整え始めていると言わざるを得ないと考えています。

もし、「RPAは人員削減のためではない」という経営サイドの発言をありのままに解釈し、そして工数削減ができた現状に対して経営サイドと一緒に手を取り合って喜び、そこで立ち止まっている現場の人は考えるべきです。理詰めによる本当の人員削減はそのあとに環境によってやってきます。そうなったときにでも社会が必要とするスキルを、工数が削減され余裕ができて喜んでいるうちに学んでおくことをお勧めします。