orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

ITエンジニアの評価について考えてみる

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ITエンジニアの評価の話

「ITエンジニアの評価が低い本当の理由」というタイトルが誤解を与えやすいのかもしれません。日経xTECHの記事です。

 

tech.nikkeibp.co.jp

 日本では、いつのまにITエンジニアの待遇が悪くなってしまったのでしょうか?

 

内容についていろいろと引っかかりがあるので考察を置いておきます。

 

考察

ITエンジニアの評価が低いというときに、誰が評価しているのでしょうか。学生が就職先として評価したときでしょうか。それとも給与のことでしょうか。社内の立場でしょうか。

またITエンジニアと一言で言ってもたくさんの立場があります。IPAの情報処理技術者試験でも多くの区分がありますし、Web系/SIer系という区分、またデザインやUIに特化するとまたスキルも違ってきます。AIとなればデータサイエンスのスキルが必要で特に数学が重要となってきます。私の主業であるインフラエンジニアであっても歴史的にはニッチな分野と言われてきました。

ITエンジニアを大きなIT業界のくくりで見たとしても、評価が高い人から低い人までさまざまいます。SIerのいわゆるゼネコン的なピラミッド(多重下請)で上位にいるITエンジニアは給与が高い傾向にあります。いろんな職種の中でAI、もっとかみ砕けばデータサイエンティストや、それを設計・実装できるPythonプログラマーの評価が高いのは、それが売れるからです。一方で、COBOLや汎用機のような、もはや脚光を浴びることはないけれども使い続けられている分野のITエンジニアも、その希少性から評価を高く受ける場合があります。

何しろ競争社会なので、「お金を持っている人がお金を払ってでも望む技術を実装できる」ことに対して近づくことができる人が、お金をたくさん得られるようになっているのがIT業界だと思っています。逆に「誰でもできることを誰かと同じもしくは手間がかかるようにやる人」は需要が無くなっていき評価が下がるのは当然です。それは個人単位でもそうですし、会社単位でもそうです。

ITエンジニアの評価が低い理由、と言って理性的に回答するとすれば、誰ででもできるか需要がないことをやっているから、としか言いようがありません。これはIT業界が他の業界に比べて歴史が浅いからという裏返しでもあります。1996年当たりにインターネットが爆発的に普及しその後ADSL、光、4GLTEやスマートフォンとどんどんIT業界の市場規模が大きくなっていく中で育ったのがIT業界ですから、ちょうど就職氷河期から規制緩和の流れで成果主義が流行したこととリンクして業界全体が競争原理が強い傾向にあります。多くの人がIT業界から去るのを見てきました。逆に未経験でも勉強すれば戦力になる業界なので参入する人も多いです。こういう世界に対して、「競争が激しいからイヤだ」と学生の評価が低いのであれば、それはもうハイそうですかとしか言いようがないと思います。全員が評価が高くなる業界が健全だとは思いません。はじめからそういう方は来ない方がいいと思います。競争ですから、人より頭を使わないと勝てないのです。競争しないでもITエンジニアになれば高い給与がもらえるなんてそんな世界はアメリカにすらありませんしむしろアメリカは競争社会の本場のようなものなので、使えないと分かった瞬間に自分の机が無くなります。まだ日本のほうがゆるやかです。

また、「課長や部長などという役職に関する出世の意味は薄れていく」とありますがこれは絶対にそうはなりません。プログラムは指示すればその通りに動きますが、人間はそうはいきません。期待以上のことも行いますが、想定外のことも行います。人間を束ねて一人ができる以上のことを生み出すのはこれまでも、そしてこれからも貴重なスキルです。マネージャーの存在一つで組織の生産性が大きく変わるのを何度も見てきました。もし社長という立場で課長や部長など意味がないとおっしゃっているのなら、それは課長や部長に正しく権限を委譲できていないか、そうする必要がないほど小さい仕事しかしたことがないからだと思います。ITの仕事は人の心、メンタルヘルスなど関係ないという人が多かったことによって、たくさん心の病気を発症した人が過去IT業界で多かったのを知っています。今は随分改善されました。そもそも開発業務も随分生産性が上がりましたし、インフラもクラウド利用やハードウェアが壊れにくくなったことによって恩恵を受けています。

なお、「低い評価なら辞めればいい」というくだりについてもこれは議論としては乱暴に思います。やっていることが変わらなければ本質的にはどこに行っても同じ評価になりかねません。評価を変えるためには場所だけを変えるのではなく、自分がやっていることそのものを変える必要があります。そのためには、自分のやっている仕事だけではなくいろいろな分野について知る必要があります。昨今はベンダーのイベントがたくさん開かれたり、ユーザーイベントや技術者が集うテックフォーラムなどいろんな機会があります。TwitterでもITエンジニアと緩くつながって別の世界が存在することを確認することができます。また、自分が行う仕事の分野と違うことを、プライベートで行うこともできます。ブログを立ち上げたり、Githubでアカウントを開きオープンソースで開発を行ってみても良いでしょう。クラウドソーシングで小さな仕事を請けてみることもできます。いろいろな自分の変化を試すことにより新しいことができるようになった際、自分の会社の中で仕事の方法を変えてみると新しい評価が生まれるかもしれません。もしくはそこで他社への転職も必要になってくるかもしれません。副業の方が成功するかもしれません。

何しろ、評価が低い時に自分の変化をトリガーにしないと、単なる「ジョブホッパー」になってしまい短期案件しか関われない職務経歴書になってしまう恐れがあります。私は、「人材不足だから今評価が低い人は他社に移るだけで給与が上がる」なんて信じていません。むしろ人件費を上げるくらいならRPAやAIなどに投資して自動化を進めようと考えている企業が多いと思っています。単に移ることを考えるのは安易で、自分の付加価値をいかに上げていくか。そのためにどう投資するか。投資とはお金のことばかりではなく時間の使い方も含みます。下記、関連の記事を添付しておきます。

 

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まとめ

個人的には、IT業界は、優秀な人が評価がされやすい場所だと思っています。業界内にいれば別の会社でも技術が転用できるので、仮に不当に評価が低い場合は振りなおせる機会に恵まれやすいと思います。

ですから、自分の能力に自信があり競争に勝てば高い評価を得られることを望む人は、どうぞIT業界に参入して頂きたいし、それそのものが業界の魅力であると私は思います。一方で全員勝てる場所ではありません。勝てなかった人の経験談だけ集めると本当にひどい業界のように脚色できます。そんなストーリーもたくさんネットに落ちています。

以上は私が20年間見てきたIT業界のまとめです。人によっては違う景色が見えているかもしれませんがご参考になれば幸いです。