orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

搾取型ブラック企業への参入障壁が上がっている

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搾取型ブラック企業をつくろう

Wantedlyにこんな記事があるのかと感心しました。

単なる求職サイトではなく、オピニオン記事もあるんですね。

 

www.wantedly.com

『ブラックな会社つくりてぇ~』という全国のブラック社長候補生たちにお届けする【悪の教科書】と言うテイでいきますか。【今だったらこうやる】的な。

 

私は数年前までこの搾取型ブラック企業(おそらく)に在籍していましたので、感想を書いてきたいと思います。

 

私の思い出

就職氷河期と、この搾取型ブラック企業のビジネスモデルは、かなり時代にフィットしていました。私は会社の中でそれをずっと見ていました。

何しろ正社員になりたい勢がかなりの需要で、だからこそ新人を大量に採用することが簡単でした。単純に言えば千人規模の会社だったのに百人採用していました。それも毎年です。

そうするとどんどん社員数が増えていくかと思いきや、なんと毎年微増です。つまり離職率が高い。ここに書かれていることと同じです。入社数年で辞める人も多いし、三十代で辞める人もかなりいました。おかげで、会社の平均年齢も毎年変わりません。

そこから幹部になれる人はほんの一握りです。その幹部たちはIT業界にいながらITに通じているわけでは決してありません。人心掌握に優れた人たちです。紹介記事にあるように、もう毎日毎日毎日クレームの嵐です。でもそのクレームを直接幹部が処理するわけではありません。営業がはいつくばってお客様のクレームをなだめつつ、最後の一押しのために出場するだけです。幹部連中はおそらくこう言っていたと思います。「抜本的に改善しましょう。体制を全部変えましょう。こちらで人選しますが実績のある優秀なメンバーを連れてきます。」。結局は営業メンバーたちをうまく指導しつつ、最後は自分が火事を消すことができる。そんなメンタルタフネスの超人たちが幹部になれるのですが、彼らの給料はとても高いです。一般の技術者が地を這うような給与なのに比べて、相当に優遇されていました。

さて、その商品たる技術者たちは、自社オフィスに帰ってくることは一年に一回。下手すると全く帰っていない連中もいました。まさに疎結合。自分の社員の顔を全く知りません。常駐先に馴染む日々です。会社の業績と自分の活動が全くリンクしないし、そもそも自分の活動を評価するべき上司は、自社オフィスにいますからもう何が何だかわからない状況に置かれます。そして自分がいくらでどんな契約で常駐先に売られているか全く教えてくれない。営業曰く「技術者はそんなことに気を遣ってはいけない。なぜならそれは営業の仕事だから。営業は営業の仕事をする。技術は技術の仕事に専念してほしい。」だそうです。今考えると、無茶苦茶なことを言われていましたが、これは明らかに誤りです。何の契約をしているかわからない仕事をやらされる羽目になるということです。結果、顧客の言いなりになる都合のいい常駐SEを大量発生させるプログラムだったと思います。

ちなみにその会社も、自社サービスをちんまりやっていました。会社の売上からすると1%に満たず、本業じゃないのですが、ホームページにはあたかもその仕事が本業であるかのような印象を受けます。プレスリリースもその仕事のことがたくさん書いてあります。だから、紹介記事はすごくリアリティーのある話だなあと思いました。

また、一人の優秀な技術者に未経験者を数人つけるのも鉄則。一人の技術者は赤字になっても構わないので、他の未経験者を常駐先に受け入れさせると儲かります。そもそも未経験者なので給与水準が低い。これを月30万~50万で突っ込めばそれはもう儲かるサブスクリプションです。彼らを優秀な技術者が現場で教育していって、中には優秀な技術者も育ったり。そうした場合は他の現場に移すんです。「優秀な技術者」として。そうすると給与は低いが他のお客様には高く売れます。

 

新規参入が難しくなっている

で、上記のことは私の経験談なのですが、今の時代これを新規参入して一から立ち上げられるか。これは結構難しい時代になっていると思います。新卒の数が年々減少しているからです。就職氷河期の時はまだしも今は新卒側もたくさん情報を持っていますから、簡単にはキラキラ情報には騙されにくくも無くなっています。

しかし、一つだけこの状況をハックできる方法があるのです。「上場」です。できれば東証一部まで上場していると完璧です。新卒たちは上場企業かどうかというステータスに非常に弱いです。東証一部企業に内定が決まった!という文字面が大変いいですよね。紹介記事が、人集めの戦略としてキラキラスタートアップ戦略を上げていましたがこれで大量採用するのは大変厳しいです。上場企業と言う看板で堂々と人集めをしているので、上場している会社がこの時代でも勝ち残っていっています。その信用力を武器に、そこから草の根SES会社に再度丸投げもしていると思います。毎日のように幹部は丸投げできる草の根SES会社の幹部と応対していました。東証一部の会社数は2018年末現在で2128あるそうです。二部やJASRAQ、マザーズなどを含めると3655。この中に紛れ込むことさえできれば、新卒採用をスムーズにこなすことができます。

ちなみに、東証一部に上場していようがどうしようが、給与水準は低いです。社員の待遇と、上場しているかどうかは全く関係ないですから、就職活動をしている方はお気を付けください。言えるのは、ビジネスモデルが安定していて毎年の決算が安定していることぐらいです。

しかし、上場することそのものは非常に難しいことですから、結局のところ参入障壁は昔よりも上がったと思います。また就職氷河期のような状態がやってきて、新卒の就職率がぐんと冷え込むような状態がくるのであればチャンス(?)とも言えると思いますが人口減の時代、無理があるのではないかと思います。

ということで、参入障壁が上がっているため、既得権益のある既存のSES企業が焼け太りしていくというのが私の未来予想図となっております。

 

備考

昔似たような話を書いたことを思い出しましたので、ご紹介しておきます。

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