orangeitems’s diary

クラウドで働くエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

さようなら終身雇用 これは運命だったのです

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終身雇用制度は今日終了となりました

終わりです。

 

www.nikkei.com

日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は13日、都内で開いた記者会見で終身雇用について「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べた。

豊田会長は「今の日本(の労働環境)を見ていると雇用をずっと続けている企業へのインセンティブがあまりない」と指摘。現状のままでは終身雇用の継続が難しいとの考えを示した。

 

経団連の会長が言っても誰も信じないから、トヨタの社長がかぶせるように二回言うわけです。日立が言ってもIT分野寄りですから、それより自動車の方が説得力がありますよね。製造業ですし天下のトヨタ。

ああ、終わったなあ、自分の社会人人生が終わってないのに終身雇用制度の方が先に終わっちゃった。

 

ある研究者によって予見されていた2019年の状況

読んで驚くこと間違いなし。今をさかのぼること19年前。2000年の文章です。

 

www.nagaitoshiya.com

農業革命(食料生産革命)によって農業社会が、工業革命(Industrial Revolution 産業革命)によって工業社会が成立したように、今、情報革命によって情報社会が生まれつつある。この論文では、情報革命が経営形態にどのような変化をもたらすかを論じたい。第一節では情報革命とは何かを、第二節では情報革命によって生産形態がどう変化するかを、そして第三節では情報社会では経営はいかにあるべきかを論じる。

 

ぜひ、全文をお目通しいただきたい。

繰り返しますが研究者、永井俊哉氏の「2000年の」文章です。

永井氏のプロフィールは以下の通りです。

 

amzn.to

永井俊哉(ながいとしや): 著作家。インターネットを主な舞台に、新たな知の統合を目指す在野の研究者。専門はシステム論。1965年、京都生まれ。1988年、大阪大学文学部哲学科卒業。1990年、東京大学大学院倫理学専攻修士課程修了。1994年、一橋大学大学院社会学専攻博士後期課程単位修得満期退学。1997年、初めてウェブサイトを立ち上げる。1999年、日本マルチメディア大賞受賞。現在、ウェブサイト「永井俊哉ドットコム」を運営している。

 

全文をお読み頂くとおわかりの通り、余りにも「今(2019年)」を言い当てていませんか。2000年ころにITバブルが起こり情報革命と言う言葉がバズったのですが、結局はバブルの名のとおり幻滅期を迎えました。そのころの情報技術はまだ、発想の通りに実装できるほどハードウェアもソフトウェアも追いついていなかったのです。

約20年経過し、ついに日本は情報革命により経営と雇用を変えざるを言えなくなったと言えるのではないでしょうか。

 

特に印象的な文を引用し、ご紹介します。

 

情報社会では、量よりも質が問題となる。農業でも、いかに食料を安く大量に生産するかではなくて、いかに様々な良い品種を開発して消費者の多様な好みに合わせるかが問題となるので、バイオテクノロジーやマーケット情報の調査に力が入れられる。このように情報社会では、農業や工業を含めてすべての産業が知識集約的産業となる。逆に言えば、第三次産業であっても、知識集約的でなければ没落する分野が出てくるということである。情報革命によって物づくりがなくなるわけではないのである。

 2000年に今が見えているような表現で、凄まじい。クラウド・IoT・AIなどによりまさに実装が始まったのが現在と言うことになろうと思います。情報革命のスピードが想定よりゆっくりだったため、日本経済もここまでは生き延びられてきた。

でも、もう来てしまった。

 

情報革命の進展に伴って、オートメーション化が進む。ロボットは労働者を単純肉体労働から解放し、情報機器は労働者を単純事務労働から解放する。イントラネットは、経営陣と第一線で働く労働者を直接結びつけ、中間管理職をリストラに追いやる。ワープロの普及はタイピストを不要にし、パソコンの導入は業務をペーパーレス化して書類整理やコピーの仕事を簡素化し、携帯電話の一般化は電話の留守番役を無用にするなど事務職員/秘書の仕事はなくなっていく。インターネット通販と電子マネーの普及は、生産者と消費者を直接結びつけ、宅配会社を除く流通業を没落させるであろう。製造業であれ、非製造業であれ、頭を使わない産業は、情報革命によって消滅していくのである。

RPAによる間接労働・単純労働の自動化。中間管理職の廃止。キャッシュレス化・フィンテックによる旧来の銀行業の危機。宅配会社は没落しないこと。小売側が自身で流通網を持ち、取次・卸を没落させること。

全部当たっている。ちなみに、Amazon.comの日本語サイトがオープンしたのが2000年11月。この論文は2000年1月。どうでしょうか、この文章の切れ味は。

 

最近では官僚的停滞に陥っている大企業よりも、中小のベンチャー企業の方が、収益性が高かったりすることが多いが、これも情報社会の主流が資本節約的だからである。

 未来にでも行ってきたんですかね・・。

 

これまで日本の企業は、欧米で開発された新製品をよりやすいコストで量産して利益を上げてきた。だが、例えばパソコンソフトをオンライン上で頒布する場合、複製のコストはほとんどゼロだから、従来の戦法は役に立たない。

 従来の戦法を取ってきた会社は、軒並み中国にやられてしまい虫の息ですね。

 

工場の工程で個人が勝手な振る舞いをすることは許されない。だから工業社会では協調性と従順性が要求されたが、それはもはや時代遅れである。

そう、時代遅れ。こう言い切れる時代がついに到来したと言えます。

だって、終身雇用が崩壊したんですもの。

会社の言うことを守ったとしても、会社は守ってくれませんよ。

今の世の中に潜む同調圧力は正直、日本の足かせだと思っています。

どれだけ人と違えるかが、勝ち負けを分ける。

 

情報社会では、すべての職業がこうした研究職や芸術活動に近づいていく。

私もそう思います。もはや働いた時間と成果が比例しない時代です。

時間ではなく結果が重視されます。 

 

産業の知識集約化に対応するために必要な経営変革のポイントは、

終身雇用の廃止
能力給の割合の拡大
スペシャリゼイション
アウトソーシング

の四つである。

このくだりで、終身雇用の廃止を予見しています。2019年を見通していたことが明らかです。

 

なお情報化社会の特徴である社会の高齢化に対応するためには、定年制を廃止するべきである。60歳を定年とすると、60歳超の有能な人材が生かせないだけでなく、60歳までの雇用が既得権益化してしまう。解雇するかどうかは年齢によってではなくて、会社への貢献度のみによって判断されるべきである。

 今はこうなっていませんが、おそらくこのようになるでしょう。

70歳まで定年が伸びるような話が話題になっています。こうなると定年という言葉自体が無意味化します。

 

スペシャリストとは、専門馬鹿のことではない。個人レベルであれ企業レベルであれ、いくら業務の対象領域が狭くても、業務そのものに付加価値がなければ競争力があるとは言えない。競争力の要となるスペシャリティとは、視野の狭さではなくて、同業者を差別化する個性である。

まさに・・おっしゃる通り。

そして、同業者を差別化できる個性を最大化できる会社に勤めるために、転職は一つの方法と言えます。一つの会社で一生を終えることにこだわると、リスクになる時代です。

 

日経連の「新日本的経営システム等研究プロジェクト報告」(1995年5月)は、終身雇用や年功序列賃金の大幅な見直しを求め、

・幹部候補となる「長期蓄積能力活用型」の常勤社員
・専門分野を担当させる「高度専門能力活用型」の任期制契約社員
・それ以外の「雇用柔軟型」のパートタイム労働者や派遣労働者

に分類して、雇用を三グループ化させていくことを提言した。

このくだりもすごいですよね。高度プロフェッショナルってまさにこの二番目のことでしょう。NTTグループもこの制度を採用したと聞いています。

 

ところが大企業はプライドが高くて中小のソフトハウスを直接相手にしない。その結果の下請け・孫請け・ひ孫請けは、たんに責任の所在をあいまいにするだけでなく、コスト高につながる。上級でない一般SEの人月単価は、東京地区で80万円、地方では50万円から60万円だが、大企業のメーカーだと、同じ仕事でも170万円から200万円かかってしまう。アウトソーシングを必要としないところに大企業のメリットがあった。逆に言えば、アウトソーシングの時代には、ピラミッド型大組織の優位が崩れるということになる。

2000年からここまで見通せていたのか・・という。

最近は下請け・孫請け・ひ孫請けが力をつけつつあり、直接大企業の案件を取りに行く事例も増えていますね。。。

 

今改めて、真のグローバル・スタンダードは産業の知識集約化であることを認識しなければならない。そして日本経済を再生するには、経営者は量的拡大から質的向上へと目標を変える必要があると強調したい。

 ・・・ということを、トヨタ社長はやんわりと国民に伝えているわけですね。

 

まとめ

この文章の通りとなるならば、おそらく日本型雇用というものはここ数年で大きく変わります。変わらざるを得ないのです。2000年に予見された未来がようやく現実になってしまったのです。情報革命なんて来なければいいのに、とはもう言えません。もう電気のない生活はできないように、情報のない社会など訪れません。

であれば、もう日本社会もようやく適応していかなければいけない。

 

終身雇用制度は終わったのです。

終わりたくなかったけれども、終わらざるを得なくなった。

仕事は3つに分かれます。正社員。任期型契約社員。パートタイム/派遣。どこに所属するかは個人の能力に依存します。高度であればあるほど、業務時間は関係が無くなり結果が全てになってきます。

結果とは、競合他社との差別化です。資格や賞は意味を持ちません。

大企業はピラミッド型構造からフラット構造に変化します。高給なだけの中間管理職は不要になります。一方で、低所得のワーカーは急増するでしょう。

 

おそらく今回ご紹介した論文、ITバブルの崩壊とともに一度、多くの日本人に忘れられたのではないかと思います。しかし長いモラトリアム期間を経て、ついに日本全体で知的集約化へ舵をきらなければいけないということだと考えています。ぜひ、論文全文をお読みください。金言です。

トヨタ社長の終身雇用制度終了宣言の持つ意味は大きいのです。