orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

漫画週刊誌が、毎週無料公開したほうがよい理由

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週刊漫画誌の期間限定無料公開

西日本豪雨災害の影響で、週刊少年ジャンプ、週刊少年マガジン、週刊少年サンデーの、3大漫画週刊誌が期間限定の無料公開を決めました。

 

「週刊少年ジャンプ」32号をネット上で無料配信 西日本豪雨の影響を考慮― スポニチ Sponichi Annex 芸能

『少年マガジン』32号無料公開へ - エンタメ - 朝日新聞デジタル&w

『週刊少年サンデー』33号を無料ネット配信 豪雨による配送遅延で - ねとらぼ

 

災害による対応が表向きの理由ですが、裏テーマを感じます。漫画週刊誌を無料公開したときのPVがどれぐらいあるかの基本情報が取得できるということです。

 

漫画週刊誌がどんどん売れなくなっているのは周知の事実です。以下、まんがseekからの引用です。

 

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『ジャンプ』『マガジン』『サンデー』、三大マンガ週刊誌の発行部数推移〔1994年〜2017年〕 | まんがseek(漫画データベース)

 

漫画週刊誌の代表である週刊少年ジャンプが2017年200万部を割ったことがニュースになりました。

 

「週刊少年ジャンプ」、200万部割れ - ITmedia ビジネスオンライン

 

右肩下がりでどんどん読まれなくなっていっています。

この状況に対し、今回の無料公開でどれぐらいのPVが見込めるのか、各編集部は固唾を飲んで結果を待っているのではないでしょうか。もし想定以上のPVが集まった場合は戦略そのものを大きく見直す契機となりえるからです。

 

ライバルはスマホ

故任天堂元社長岩田氏が、2010年の株主総会にて下記の発言をされていました。

一方で私どもは、自分たちのライバルは何だと考えているかというと、「お客様の興味関心と時間とエネルギーを奪い合うすべてのものがライバルだ」と思っています。特定のものだけをライバルだと考えますと、「そのライバルにいかに勝つか」という発想になるんですね。こういう発想になりますと、「相手の長所をどうやって潰すか」とか、「相手のできないことをどうやってやるか」ということばかりになり、非常に近視眼的なものの見方に陥ってしまいやすくなります。

 

ジャンプ、マガジン、サンデーは長い間ライバル関係としてしのぎを削っていたのは間違いありません。しかし、実はここ最近はスマートフォン、またはモバイルアプリが、週刊漫画誌に対する強力な存在となっています。その証拠に、3誌全体で大きく部数を減らしています。このままでは週刊漫画誌全体が立ちいかなくなっていきますから、業界の中で争っているというのはもうすでに、的外れな戦略であることがわかります。

この部数激減の副作用は、単に売上減だけにはとどまらず、社会的な影響、今の言葉で言えばインフルエンサーとしての存在が希薄化することにつながります。今のジャンプ、マガジン、サンデーの連載作品のうち、誰でも知っているようなタイトルがどれくらいあるでしょうか。過去は週刊漫画誌から口コミで面白さが日本全体に浸透し、そこからテレビアニメ化をステップに、1タイトルの単行本が数百万部、数千万部発行されるなど、国民の文化として定着するまでになりました。しかし、そもそも週刊漫画誌自体を手に取らなくなればいくら面白くても、「誰も知りえない」ということになり、せっかく面白いタイトルが埋もれてしまうことになります。そうなると、優秀な才能も集まらなくなり漫画文化全体が衰退していきます。

まずは、ビジネスを阻害しない形で新しい漫画を世間に広く浸透させることが、今の衰退していく週刊漫画誌の状況を大きく変える方法になるだろうと思います。その一つの手段として、今回の無料公開で消費者がどれだけ乗ってくるかが注目になります。特に各種メディアも無料公開を大きく取り上げていますので、実験としては十分なシナリオです。

 

あまりリスクはない

今後定期に無料公開するとしても、リスクは少ないと思います。

無料公開してもしなくても、海賊版を取り締まるプロセスに違いはありません。無料だからといってもタイトル全部を無断転載してよいことにはなりません。かつ消費者も、利便性が良ければ公式サイトを見ます。

紙の発行も、今すぐやめる必要はありません。紙で買う人は買い続けると思います。ガラケーが無くならないのと同じ理由で、一定の需要があると思います。電子では無料公開し紙も売り続ければよいと思います。どれぐらい売れなくなるのかは今回の実験で数字が取れます。その意味で今回の結果は興味深いと言えます。

この、紙が売れなくなるリスクより、たくさんの人々が連載をフォローするということの価値のほうが相当に大きいと思います。日本全体に「あの漫画が面白い」ということが口コミで伝わり、そしてその人々が単行本やテレビアニメなどの展開に付いてくれば相当な売り上げが見込めることになります。例えば今やサンデーは発行部数は週30万部程度で、売り上げとしても1億ありませんので、こんな小さなビジネスを小さく守ってジリ貧になるよりは、1億2000万人の人口に向けて漫画タイトルの知名度を上げる方向に持っていくほうがどう見ても分があることになります。

無料公開することで、スマホの中での強力なコンテンツになります。ライバルはスマホ、と前段で言いましたが、むしろスマホを味方に付ける強力な手段になりえます。そこからスマホの中で単行本を購入できるようにする導線まで用意するのが次のステップになります。もちろん、取次もなくダイレクトに消費者に届けられることを考えると、紙よりも格安にする必要はあると思います。また、サブスクリプションなど読み放題とするのも1つの手段です。可能性はたくさんあります。

無料公開してもあまりリスクは感じられないし、むしろメリットの方が多いというのが私の意見です。

 

まずは結果待ち

無料公開の意義が、災害によるものという表向きの理由があるため、各出版社が無料公開の結果を公開してくれるかどうかはわかりません。ただ、間違いなく分析は進めるでしょう。このまま紙媒体の今までのやり方を貫き、日本文化の中で存在感がどんどん希薄になっていく道を選ぶのか、それとも現代に合わせた洗練された方法に適応させるのか、分岐点にさしかかっています。

ま、やってくれなかったら、新しいWEB漫画メディアがどこかで大きくなって、漫画家は全部そっちに移っていくのでしょうけども。個人的には、面白い漫画がフォローできる環境が早く整ってほしいと切に願います。

第一巻だけ無料で読めるアマゾン方式って、本当のその漫画の面白さを伝えられていないと思うんですよね。二巻から面白くなる漫画もたくさんあるのに。

 

 

まんがでわかるまんがの歴史 (単行本コミックス)