orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

2017年の国内インフラ市場統計が指し示す現在の状況

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2017年の国内企業ITインフラ市場の統計

2017年の国内企業ITインフラ市場の統計(IDC Japanの調査結果)が公開されています

2017年 国内エンタープライズインフラ市場 ベンダーシェアを発表

 

商談等、顧客との会話の際、市場動向を会話することがよくありますが、その基礎情報として上記の記事はよく読み込んでおく必要があろうと思います。

 

前提条件

この調査は、企業向けのサーバーおよびストレージを合算したものとあります。ネットワーク機器は含まれていません。ネットワーク機器のシェアは以下に公開されています。またここでいうネットワーク機器は「 企業向けおよび通信事業者向けのルーター、企業向け無線LAN機器、コンシューマー向けを含むすべてのイーサネットスイッチの合計」とありますので、ここに含まれないアプライアンス機器(ファイアウォールやロードバランサー)は、上記の「国内エンタープライズインフラ市場」に含まれるものと思います。

国内ネットワーク機器市場シェアを発表

 

考察

いくつか、私の気が付いたことをまとめておきたいと思います。

 

1. クラウドが伸長しているにもかかわらず、プラス成長していること

妙な話で、クラウド化が進めば進むほど、サーバー機器は売れなくなるという伝説が固く信じられていました。しかしふたを開けてみると市場は小さくなっていません。AWSやAzureがあれほど成長しているにも関わらずです。

これは、企業におけるITの主戦場は未だオンプレミス側にあるということを指し示していると思います。むしろ、クラウドはアドオンであり、オンプレミスとクラウドを組み合わせて最適化していくことのほうが「普通」であることを指し示していると思われます。クラウドにはクラウドに適切な利用用途、例えばビッグデータ解析や突発的なトラフィックの処理、IoTの情報収集やAIの活用、サーバーレスなどがあり、オンプレミスの延長線上でうまく使っていくことを、各社で考えている状況であると思います。

一部のクラウドベンダーが言っているような、全てをクラウドが飲み込んでいくようなアピールを真に受けると、トレンドとはずれてしまうことを知る必要があります。適材適所が今のところ最善策と言えると思います。

 

2. メインフレーム強し

x86サーバーを2013年に早々と中国レノボ社に売却してしまったIBMのシェアが、8.6%もあり、しかもシェアは伸長していることについて意外な方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。IBMは2017年にはz14という新製品のメインフレームを出荷していますし、以前はAIXやAS/400から発展したPower Systems、ストレージなどの製品もまだまだ取り揃えています。

エンタープライズ分野に目を向けると、メインフレームはオープン系に押されて斜陽のアーキテクチャーのように見られがちですが、現場は全くそんな状況ではないということです。かつ、過去のメインフレームのイメージとは全く違い、Linuxが動きますし、Javaやapache、コンテナやKubernetesまで動きます。下手にオープン系に手を出すより、メインフレームの方がハードウェアとしては堅牢というのは事実です(だが高い)。

一方で、下記のニュースのように、メインフレームを持たないNTTデータがオープン化虎視眈々と狙っていたりします。

NTTデータ、金融勘定系パッケージをメインフレームだけでなくオープン基盤でも提供 | IT Leaders

Microsoftやユニシスもメインフレームの切り崩しを行っていて、地方銀行勘定系のAzure化の話は話題になりました。

ASCII.jp:「勘定系をパブリッククラウドで」は地銀の声、BankVision on Azure計画の始り

大きな目で見ると、メインフレームの今の市場はなかなか手堅いなという印象です。

 

3. なんだかんだで富士通が強いこと

官公庁は国内ベンダー志向が強く、富士通とNECが寡占していることは知っていましたが、その中でも富士通は強いなと。これはSI部門がハードウェア含めて一括して案件が取れているということを示していると思います。かつ、公共だけではなく民間もカバーしているのがNECとの差ではないかなと思います。今までのSIの文化が今後も継続していくかはわかりませんが、現状日本でビジネスすると官公庁ではなくても、富士通の名前が出てきます。たしかにシェアが4分の1もあるとそうなるようなあという感想です。一方でNECは公共に閉じて強い印象があります。

 

4. ODM Directという不気味さ

数年前からうわさにはなってきたのですが、ODM Directのシェアが増加してきていきます。ODM Directとは何?という記事については、下記をご一読ください。

既存メーカーを中抜きする“ODMダイレクト”市場に成長の可能性:IDC調査 - ZDNet Japan

ユーザー企業ごとにカスタマイズしたサーバを開発、製造する メーカー(Original Design Manufacturer:ODM)を直接ユーザー企業に出荷する “ODMダイレクト”市場

 

具体的な例として、KDDIがODMメーカーからサーバーを購入している記事があります。

KDDI Cloud Blog | だれも教えてくれないODMサーバの導入ノウハウ

 

サーバーベンダーからしてみれば面白くはないビジネスですが、クラウドも結局は提供側から見ればオンプレミスですので、ODMのシェアがじわじわ増えているのはこのためであろうとも思います。

市場の変化はこのODM Directのシェアを見ていればわかると思います。10%を超えてくると益々勢いが出てくるものと思います。ここは今後注目です。

結局のところODM Directが大きくなると、やっていることはDELLのサーバー部門と変わらなくなるような気もしますが。

 

5. HPEとDELLの争いは面白い

企業向けサーバーの選択時に、HPにするかなDELLにするかなっていうのはここ数年良くある出来事でした(少なくとも私の場合)。SIerが好んでHPEをカバーしているというのは何となくよくわかります。HPEの強みは何といってもパートナーのエコシステムがしっかりしているという点です。HPEが直接お客様をフォローしなくても、地場のSIerがフォローしてくれるということです。DELLはパートナービジネスに切り替えたのはまだ最近です。

【大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ】デルのパートナービジネスは今度こそ本気なのか? 8月に就任した松本光吉副社長インタビュー - クラウド Watch

DELLという会社はここ数年、VMwareやEMCの買収をはじめとしてM&Aでかなり人事面も含めて大変動してきましたので、SIerとしては困る面がありました。日本のサードパーティーは中小企業も多く、担当者はあまり変わりませんので、パートナーのエコシステムを持つHPEが強いのもわかるなあという感想です。対面でのつきあいを大切にする日本では、DELLよりHPEがSIerにウケるのもわかります。

今後はDELLもパートナーシップを強化していく・・というより、しています。

パートナーと共に驚異的な成長をこれからも──Dell EMC Business Partner Forum 2018 Tokyo:好調でも満足せず、パートナーと共にさらなる高みを目指す - @IT

端から見ていると、数字は嘘を付かないなあという印象です。

 

補足

こういうニュースを見ると、メインフレームを個人的に欲しいなあと思うのですが、この記事を思い出しますね(笑)。

大学生にしてIBM製メインフレームを自宅に設置&IBMにスカウトされた「メインフレームキッド」のニッチな生き方とは? - GIGAZINE

宝くじの一等賞金くらいないと買えないですしね・・。関われるエンジニアがうらやましいです。

 

進化する銀行システム 24時間365日動かすメインフレームの設計思想 (Software Design plus)