同じことの繰り返し、ループする議論
議論するときに、
「この案はダメです。こうだからです。もっと考え直す必要があります。おわり。」
という意見を見かけます。このパターンは一見理論的に見えますが、何も先に進まないことが多く非生産的なやりとりに終始してしまいます。
・・・という記事を見かけました。
この手の記事について、私はいつも最後の段落を見ます。ここに、サイトブロッキングではなく、・・・ということをやればいい、と書いてあることを長く期待してきました。
漫画をはじめとした優良なコンテンツ産業・文化の発展には、知的財産権の保護は大切であり、権利を侵害するウェブサイトへの対策は重要であるというのは共通の認識である。
しかし、海賊版サイトに掲載された漫画などの違法コンテンツについては、ブロッキング以外の対応を検討・議論すべきだ。ウェブサイトからのコンテンツの削除や、コンテンツ掲載者を特定した上での対応などが本質的な対応である。
そのためには、権利者・政策立案者だけではなく、通信事業者や市民社会などさまざまな当事者が参加する、開かれたマルチステークホルダーモデルにおいて、正しい技術の理解と利用に基づいた上で、適切で有効的な対策が実施されるべきだ。コンテンツ産業を含むインターネットの全体の発展に貢献するためにも、諸刃の剣ともなりうるブロッキングによる対策については、一度考え直した方がよいだろう。
適切で有効な対策が実施されるべきだというのが本旨です。それが具体的にどのような方法かが書かれていません。大変残念です。
残念なポイント
むしろサイトブロッキングの短所を塞ぐような技術的支援のほうがまだ、話が前に進むというものです。
コンテンツの削除やコンテンツ掲載者を見つけ出すことが、CDN事業者やDMCAを無視するホスティング業者の存在により、困難を極めたことに対して目をつぶるのでしょうか。それだけ技術に精通しているにも拘らず、あえてサイトブロッキングの短所にだけクローズアップするだけの理論の組み立て方には、辟易しているところです。
インターネットの発展を望むのであれば、もっと技術的な側面からサイトブロッキングの短所を具体的に解決するような方策を提案したほうが、生産的ではないかと思います。もちろん対案があればそちらを主張すべきです
今のところ日本において、主体的に海外に物理的に存在する違法コンテンツを遠ざける方法は、短所や抜け道が存在すれどサイトブロッキングの手法が最も主体的であると思います。本件、法制化されていないので、秋に新法案が提出されるという流れです。そのための議論ということであれば、サイトブロッキングではない、新しい行動可能な方法を提示しないで、意味がない意味がないと言っていても何も進まないのではないでしょうか。
どうすればいいか
このところ、感情的に「サイトブロッキングは無理筋」という論が減ってきて安心してきたところに、また再燃するような記事に出会ったので反応しました。Interrop Tokyoなどを見ていると、優秀なネットワークベンダーやネットワーク技術者がたくさんいますので、彼らが有効な方法を知っているんじゃないかなあという印象です。単に、お金が流れていないだけではないかと。
いっそのこと、サイトブロッキングに代わる根本的な対策を公募にして、採用された案に対して10億くらいの報奨金を与えれば、何か出てくるんじゃないでしょうか。非営利団体や専門家にコメントを拾いに行っても、いくばくかのお金ではイノベーションのない常識的な意見しか出てこないのも当然ではないかと思います。海賊版問題が10億で解決するのなら安いものだと思います。
目的はサイトブロッキングではなく海賊版の取り締まりにありますので、もし新しい手法を見つけましたら、また記事に書きたいと思います。個人的には、様々な問題あれどもサイトブロッキングが今のところ現実的な案と考えています(ですから、サイトブロッキングを覆すような画期的な案を探しているのです)。