サイトブロッキングする?しない?
漫画村閉鎖の件以来、海賊版サイトについては大手メディアでも大きく取り上げられています(とはいえ、また復活する可能性もありますが)。その後、裏で事が大きく動いていて政府とインターネットプロバイダーとの間で大きな対立となっているのをご存知でしょうか。
4団体が緊急の反対声明
政府が海賊版サイトへの拡大を検討しているインターネット接続を強制的に遮断する措置(サイトブロッキング)について、情報法の研究者やネット関連事業者らがつくる4団体が11日、反対を表明した。
インターネットコンテンツセーフティ協会
インターネットプロバイダ―中心の2011年に設立された協会です。安全なインターネット環境の実現に寄与すべく活動しています。会員には大手キャリアはもとよりGoogleやYahoo!も含まれています。
海賊版サイトは、あくまでも発信者への責任の追及や発信に利用されているサイトの閉鎖によるべきであり、仮にブロッキングという国民の権利に直接関係する手法を検討するのであれば、立法に向けた十分な議論がなされるべきです。
法人情報法制研究所(JILIS)情報通信法制研究タスクフォース
大学教授中心に情報に関する法制度の研究を行う団体です。2016年に設立された若い組織です。
著作権侵害サイトのブロッキング要請に関する緊急提言の発表(PDF)
このたび政府において検討されているプロバイダに対する著作権侵害サイトのブロッキング要請(以下、「本件要請」という。)には、以下の通り、法的に見て大きな問題があり、このような要請を行うことは差し控え、立法前の要請の可否、ブロッキングという措置自体の是非も含めて改めて冷静な議論を行うよう緊急に提言する。
モバイルコンテンツ審査・運用監視機構
モバイル事業者中心に2008年に設立された組織です。モバイルコンテンツの安全性を議論しています。
インターネット上の漫画海賊版サイトのブロッキング要請に対するEMA の意見 (PDF)
サイトブロッキングは、権利侵害行為と一切関わりのない人を含めて、すべての利用者の通信の宛先を監視し、アクセスを遮断するもので、憲法上の権利でもある通信の秘密及び国民の表現の自由、知る権利を侵害する可能性があります。(中略) フィルタリングを広く普及させることが、ネット上の青少年の安全の確保に資すると共に、著作権者の利益を守ることに資すると EMA としては考えています。
インターネットユーザー協会
消費者サイドからのインターネットに対する意見表明を行うための組織です。ジャーナリストなどがメンバーにいらっしゃるようです。
インターネット上で著作物を違法に配布する海賊版サイトへの対策として、政府がアクセス遮断措置(以下ブロッキング)を検討していることが報じられています。私たちはインターネット利用者の利益を著しく損なうこの検討を強く憂慮し、その実施に強く反対します。
政府は強行へ
著作権侵害を食い止める狙いがあり、13日にも知的財産戦略本部と犯罪対策閣僚会議の会合を開き、対策を決定する。
考察
民間の自主的な活動により漫画村などの海賊版サイトが、一般の人々にリーチしなければここまでの事態にはならなかったので、政府の緊急避難的措置を私個人としては支持します。一旦閉じた後に、どうあるべきかを各団体で議論し恒久措置を決めていただきたいと思っています。
システム障害の時でも同じなのですが、原因究明よりまずは一次復旧を急ぎます。そうしないと被害が波及し二次災害が起こり結果として影響が拡大するためです。なぜ発生したのかは一旦棚上げにして、まずは目の前の被害の波及を食い止めるべきだと思います。各団体は、サイトブロッキングがダメなら、どんな手段がふさわしいのかを提示しなければいけません。民間の各団体のこれまでの活動が不十分なため政府が緊急避難的な対策を取るのはごくごく自然なように思います。
まずは、各団体は、「食い止められなかった」事実を大きく反省してほしいです。どれだけ海賊版サイトが一般化し、漫画家などの著作権者が大きく傷ついたかを法的ではなく、道義的に考えてほしいです。
まずは明日13日が 1つの区切りとなると思います。状況の推移を見守りたいと思います。