orangeitems’s diary

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ネットゲーム依存についての考察

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 ネットゲーム依存が正式に病気として定義されるそうです。

www.asahi.com

最終草案では、ゲーム症・障害を「持続または反復するゲーム行動」と説明。ゲームをする衝動が止められない▽ゲームを最優先する▽問題が起きてもゲームを続ける▽個人や家族、社会、学習、仕事などに重大な問題が生じる――を具体的な症状としている。診断に必要な症状の継続期間は「最低12カ月」。ただ特に幼少期は進行が早いとして、全ての症状にあてはまり、重症であれば、より短い期間でも依存症とみなす方針だ。

 ICDに盛り込まれる影響 

世界保健機関(WHO)が国際疾病分類(ICD)に病気として認めると、法律の根拠として用いられるようになります。例えば、以下のような表現となります。

発達障害者支援法の施行について(文部科学省)

これらの規定により想定される、法の対象となる障害は、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)における「心理的発達の障害(F80-F89)」及び「小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90-F98)」に含まれる障害であること。

かつ、医師がICDコードを根拠に「診断書」が出せるようになります。診断書にはICDコードを記入するのがルールですので、ICDに盛り込まれてないと医師が診断書を出せないのです(診断書記入例)。

したがって、うつ病等の精神疾患で診断書を会社に提出して休職するのと同じように、ネットゲーム依存で一定期間休職するような事例も現実的になってきます。法律がまず整備されていくことになるでしょう。2015年から企業で義務化されたストレスチェックの中でネットゲームに対しても触れていくのかもしれません。

 

ネットゲームは大きく分けて2つある

ネットゲームは大きく2つに分類されます。

(1)月額課金型 

毎月決まった金額を支払うことでプレイ可能になる方式です。一部、課金アイテムもありますが基本的には、毎月1000円程度で楽しむことができます。ほぼ全てのゲームがWindows前提で専用クライアントをインストールします。一部プレイステーション等のコンシューマーゲーム機にも対応しているゲームもあります。スマホやMAC、WEBブラウザではこのタイプのゲームはほとんどありません。

(2)アイテム課金型

無料でゲームを始めることができます。スマホアプリが中心ですがWEBブラウザでできるものもあります。初めの数時間は、ものすごい勢いでプレーヤーは成長します。そしてチュートリアルを一通り経験させゲームに引き込みます。数時間後、急にゲームを進められなくなったり、進められても時間がかかるようになってきます。その際に課金アイテムを購入すると、成長が促進するのでゲームを有利に進められるようになるという前提です。

どちらにしろ、1つのゲームタイトルに多数のユーザーが参加します。そのユーザーがちがSNSのようにフレンドとなり、一緒にゲームをしたり擬似的に仲間として参加したりすることで、コミュニティを形成するのも特徴です。

ハマったらどうなるのか

ネットゲームにおいて、大きな価値となるのが、自分が他のユーザーに対して優越しているかどうかです。

・他のユーザーが持っていない希少な装備をしている。
・各種のステータスが高く有利に進められる。
・プレースキルが高い。

月額課金型と、アイテム課金型で、優越するための方法が異なります。

月額課金型は、かけた時間が全てです。時間をかけるとキャラクターのレベルが上がりステータスが上がることはもちろん、いろいろなゲーム上のミッションをクリアすることにより装備も充実します。例えば、某有名ロールプレイングゲームの話ですが、ある敵を倒すと稀に取得できる装備がありました。この敵は、6〜12時間に1回しか現れず、かつ倒しても入手できるかどうかは抽選でした。なので、この敵が出るエリアにはたくさんのプレーヤーが常駐しており、複数プレーヤーからなるチームで数時間単位でシフトを組んで参加している人もいました。何しろ経験値にしろレアアイテムにしろ、かけた時間が大きく物を言います。

アイテム課金型は、お金が全てです。いくら時間をかけても、課金したユーザーには絶対にかないません。期間限定の特殊な装備が手に入るイベントを開催し、運営側は課金を煽ります。課金するユーザーとしないユーザーでの格差は歴然です。また、単に課金をしてアイテムが手に入るというより、ガチャとして有名な抽選方式でギャンブル的な嗜好が含まれているのも特徴です。

時間をつぎこむか、お金をつぎこむかの違いはあるものの、両方に共通して言えるのが、心理学における「部分強化」の法則です。ある行動(ガチャを引く、特定のモンスターを倒す)に対して、ある報酬(何かが得られる)が提供される可能性が、ランダム(いつもらえるかわからない)ほど、得られた時の快感が大きいというものです。まさにギャンブルと同じ理屈なのですが、ネットゲームでもこの快感に依存してしまうことで、依存症としての症状が現れます。

ネットゲーム提供会社としては、よりのめり込んでもらった方が売上が上がりますし、ユーザーも快感が上がるので、この時点ではWIN-WINの関係です。しかし、日常生活に影響をきたすくらいの状況が生まれた場合、ここでユーザーはネットゲーム依存となってしまい、いわゆる病気としての側面が生まれてしまいます。

ちなみに、ギャンブル依存症は、すでにICDには定義されております。

ICD-10では、「ギャンブル障害(Gambling Disorder)」に当たる「病的賭博 (Pathological gambling)」は「持続的に繰り返される賭博であり、貧困になる、家族関係が損なわれる、個人的な生活が崩壊するなどの、不利な社会的結果を招くにもかかわらず、持続し、しばしば増強する」と定義されている[3]

ICD-11では、「賭博に対する制御が障害されていることに特徴づけられる持続的で反復的な賭博行動で、個人的、家族的、社会的、あるいは、教育上、職業上、その他重要な事柄に明らか重大な問題が生じており、望ましくないことが繰り返し起きているにもかかわらず、他の活動以上に賭博の優先度が増しており、他の興味や日々の生活に比べて最優先である状態。これらの特徴や賭博行動のパターンが少なくとも12か月以上続いていることが診断の標準的条件だが、診断的特徴をすべて満たし症状が重度であれば12か月間は短縮可能」となる見込み

ギャンブル依存症 - Wikipedia

ネットゲーム依存症になるための基盤

ネットゲームといえば、パソコンで遊ぶ月額課金型が主流だったのですが、最近はスマホの基本無料のアイテム課金型が大きな存在感を示しています。

月額課金型は時間をつぎ込む、と言いましたが、いわゆる自分の部屋に引きこもり、睡眠時間を削ってのめり込むパターンがこれにあたります。そもそもこれができるためには、学校や会社に行くことを放棄しないといけません。社会人は非常に時間が限られていますので、物理的にできないのです。したがって、別の問題によって社会からドロップアウトした人が二次的にはまり込む、というタイプが大勢でした。

ところが、アイテム課金型の場合は、時間ではなくお金が必要です。これだと時間のない社会人でも、お金をつぎ込むことで快感を得られます。依存のための高い壁だった時間という障害を、超えてしまったわけです。これによる社会的な問題とは、生活に必要なお金を使ってしまうことです。よりギャンブルに近いと言えますが、一つ異なるのが、ギャンブルの目的はお金を増やすこと、ネットゲームの目的はゲーム内において他のユーザーと差別化すること、です。より社会的(ソーシャル)であると言えます。社会的な承認欲求を必要としている人が社会生活を送りながらはまりこんでしまう、というニュータイプな問題と言えると思います。

なりやすい人

これは、考察段階ですが、以下のような人がなりやすいと思います。

(1)社会的なフラストレーションが高い人

・会社で人間関係がうまくいっていない。
・家族(配偶者や子供、親族)とそりが合わない。
・専業主婦あるいはパートだが、お小遣い等まとまったお金がある。
・一人暮らしで、かつ一人の時間が多い。
・一定の収入があり、自由になるお金がある。

(2)あるソーシャルグループ間で、ネットゲームを同好し、優位性を争っている人

・プライベートの友達、会社の同僚(リアル)、もしくはSNS等で知り合ったグループなどで、同じゲームを媒介にして親密度を維持している。
・ゲームの優位性がソーシャル上での優位性となる。

ゲーム提供会社は、(2)を標ぼうして広告展開するわけですが(CMの作りとかもそうなってますよね)、社会問題化しているのは(1)なわけです。

社会承認欲求が得られる機会がネットゲームのみであり、そこに部分強化のようなギャンブル的テクニックが入り込んでくると、(1)の導線は出来上がるわけです。 

治療法

ギャンブル依存症との類似性から考えると、進んできたギャンブル依存症の社会的な対策を二次利用することになると思われます。法律や対応窓口、医療面の準備も含めて進んできていますので、これを学ぶべきかと思います。

まとめ

ゲーム提供会社は、(1)の存在を認めるべきです。パチンコ店に行ってものめり込み過ぎないような工夫を店側が取らないと生き残れないようになってきています。しかし、あまりにもゲーム提供会社がSNSの仮面を被っているので、対策を取っていないに等しいです。現在は、未成年が課金し過ぎないようにするぐらいのことしかしていないに過ぎません。

このままでは社会的にはお取り壊しになる可能性を秘めていると思います。特にICDに明記されるということは、医学的なお墨付きを与えることとなり、かなりインパクトがあると思っています。

ネットゲーム界隈にもシステムエンジニアは多数いると思いますので、ガチャガチャばかり言ってないで、行政と手を組んで先回りで対応するときだと思います。