orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

運用強化をルールの追加と読み間違えるほとんどの現場

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去年の東証障害から、今年はみずほの件と、金融システム障害が立て続けに起こっています。そこに日経新聞が「運用不備」「運用のゆるみ」と書きなぐり、運用に問題があるんじゃないかと言う話で盛り上がっているようですのでコメントをば。

そもそも「なぜなぜ分析」のような、根本原因の深掘りは既に行われています。その原因を解消するために何をするかで、もっとも手っ取り早くてコストがかからなくて、そして効果が薄いものに

~ルールの追加~

があります。これは本当にしょうもないなといつも思うので言及しておきたいです。

歴史の長い現場に多いのですが、ルールが年々追加されて、聖書みたいになっているケースです。しかも、分冊になっていて、AのルールにはBのルールに書くと書かれていて、そのBのルールが形骸化したりして、ルールの全体像をつかんでいる人はおらず、口伝で暗黙の現場ルールが育ってしまう、そんなケースを多く見ました。

そもそもですけど、ルールは、全文暗記しておかないと、機能しません。

もしくは、ルール以外のことができないように、現場を実装するしかありません。

両方とも、かなり非現実的なのです。

ルールを暗記するとしたら、毎週一回、メンバーが会議室に集まって、ルールの読み合わせを行うしかありません。そして私、この会議に参加したことがあります。大の大人が、ルールを音読するわけです。で、このコロナ禍で会議室で音読会なんて非常識です。じゃあ、テレビ会議で音読会でもやるんですかね。

ISOやISMSといわれるマネジメントシステムも、結構ルール主義的なところがあり、ルールは緻密に精密にできているけれど、現場の人はそんなルール読んじゃないというケースはとてもあります。

だから、世間一般で言われているような運用強化は、結構役に立たないと私は思っていますしそれを認識しないといけません。

ルールは大事で、そのルールをマネージャーが熟知しなければいけないところまでは、これは真実です。ただ、メンバーレベルにそのレベルの周知を全員に強いるのは、かなり難しい。それは国語力の問題もあれば、モチベーションの問題もあります。

運用強化で大事なのは、やっぱりリソースの問題です。マネージャーはルールを考えながら、これが現場で自然に行われるためには、どんなワークフローにするべきかを考えます。そのための手段が人、金、物、つまりリソースです。もしITを利用して禁止行為を人にさせないのなら、IT投資が必要です。人数をかけて監視の目を増やすのなら人材が必要です。アウトソースして外部で契約して行ってもらうのならお金が必要です。

企業統治として運用強化を考えた時、それはルールを追加して現場に負担を増やすのではなく、そもそもそうならないように仕組みから変えないといけません。しかし、それはお金がかかります。お金をかけないで済まそうとして、ルールを追加していった結果、分厚いルールブックが生まれてしまうのです。それをまたITで実装しようとして、無駄なソフトウェアやサービスを導入してしまい、その結果、カオスになっている運用現場は存在します。

だから、結局のところ、古い企業はさっさと市場から退場してもらって、新しい企業が新しいルールでスマートに実装していく。そんな考え方もアリなのですが、今の日本社会の在り方を考えると少し非現実的なので、なんとか、既存のルールをすべてクリアして、ゼロベースで運用を立て直してもらいたいものだと思います。

きっと、運用のゆるみ、じゃなくて、運用ルールの不備だと思います。不備があるのは、最近のアプリケーションの変更に運用が追い付いてないからだろうなと推察します。最近はなんでもかんでもアプリケーションで顧客需要を吸収しようとしますから、運用のほうはついていけないのは目に浮かびます。例えるなら、コンビニのレジ担当が一時期、コンビニのサービスメニューが増えすぎて戸惑っているみたいな話と同じですよ・・。もっと運用を楽にするためには、リソースが必要であって、レジ担当へのルール追加、じゃないですよね。