orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

「クラウドは信用できない」に対する基本的な考え方

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十年前のクラウド

十年前はクラウドなんて色物と思われていましたし、データセンターと物理サーバービジネスは百年とは言いませんがひとまずしばらくは終わらないと言う雰囲気でした。

ところが風向きが変わったのが東日本大震災です。私も東京の中心にたまたまいてそのすさまじさを味わったのですが、ああデータセンター一か所に預けておけば安心ということは無いなと。計画停電もあるし、津波の恐れもある。ビジネス継続性計画、いわゆるBCPという言葉がにわかに流行しだしたものでした。

人の記憶とは本当に都合が良くできていて(そもそも日本人の風土性というものもありますが)どんなにひどい記憶でも忘れるのが上手で、だんだんとBCPの話も下火になりました。というより、一旦経営者の指示でBCPを作ったものの、あまりにもコストがかかる話ばかりで稟議も通らない。良くて東京以外の地域のデータセンターにバックアップを送るぐらいでお茶を濁して終わり。

バックアップシステムを別の場所におけばコストは倍。それよりもクラウドを検討すればよいのではないかという方向にいつしか変わり、その中でAWSが特にシェアを伸ばしたのが記憶に新しい、です。

クラウドは信用できるのか?という議論はもちろんありましたが、一方で、自前のデータセンターこそ信用できないのではないか。クラウドなら何が起こっても運用は大企業が担ってくれるけれども、普通の会社でインフラ要員を何人も抱えるわけにはいかない。ビジネス継続性を言うのなら、データセンターの利用を倍に増やすのではなくクラウドに変えたほうが良い、そんな思考でクラウドがどんどんシェアを伸ばしていったと記憶しています。そのトリガーが大型地震だったというわけです。

 

障害が起きると、クラウドに対する疑問が再発する

一方で、じゃあ今回のAWS障害のように、移った先でデータセンターレベルの物理的なトラブルが起きましたと。そうするとまた議論は「クラウドは信用できない」に舞い戻るというのは本当に皮肉な話です。

インフラ基盤は今や企業のビジネス基盤そのものとなりつつあります。デジタル化を進めたらそうなるのは当然至極です。デジタルは雲の上で動いているわけではなく、地面の上に建物があって、その中に物理サーバーがあり光回線がつなぎ込まれて成立しているのですから。だからデータセンターでオンプレミス、でもクラウド、でも、実は同じ側面でしか話はしていないのです。

では、クラウドならば信用できるのか。いや、それはおかしいのです。クラウドがどんな物理基盤で動いていて、そのうえでどんなソフトウェアでクラウドを実現し、その保守体制はどうなっているのか。全てブラックボックスにして利用者側の側面だけを見せるのがクラウドです。障害が起こってみて初めて、電源機構やPLC、管理ソフトウェアがAWSで利用していることがわかりました。全ての情報を把握でき納得してこそ、信用できるという腹落ちまでできるのです。しかしそこは非公開です。じゃあクラウドは信用できない、というのはこれは一理あります。

では、何を持って社会はクラウドに信認を与えているのか。それはブランド価値や資本、実績と言った非常に抽象的な物差しで測っているのです。日本の食の安全。日本の治安。日本製工業製品の丈夫さ。それぐらいの抽象さでしか実はクラウドのことをユーザーは感じていないというのが大事なポイントだと思います。Amazonが、Microsoftが、Googleが、IBMが、Oracleがやることなら安全なんだろう安心なんだろう。だからこそ問題が起きると「あれ、何か思ってたんと違うかも」となるのです。

 

クラウドを信用して利用するためには

現在のクラウドは、ソフトウェアによりどんどん複雑化しています。2019年の今いきなり初心者がクラウド、例えばAWSやAzure、GCPなどの機能一覧を見るとそのメニューの多さにたじろいでしまうでしょう。また、使ってみたら結構クセがあり、もっと別のことを知らないと使いこなせないなんてことがたくさんです。そんなクラウドを、クラウドだから信用せい、というのは無理が多いと思います。特定のクラウドに対して多くの実績を持つ企業が必要になってくるのではないでしょうか。AWSを使うために直接AWSと契約して利用するのではなく。AWSと多く付き合った経験を持つ企業で、ちゃんと連絡が取れサポートしてくれる企業と付き合う。その企業がいろんな経験を持ってAWSを使いこなした実績をバリューとして届けてくれるから、AWSを信用できる。

 

AWS ←→ AWSソリューション企業 ←→ エンドユーザー

 

もちろん、AWSではなく別のクラウドでも同様です。

クラウドそのままでは信用できない。クラウドを使いこなしている企業を信用する。こう言った考え方が今後ますます重要になるのではと思っています。

・・というほど、クラウドはどんどん機能拡張し、迷路になっている。

クラウドは信用できない、という処方箋はクラウドそのものと付き合うのではなく、クラウドを使いこなす会社を見つけその会社を信用するということで解決できると考えます。