orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。



クラウドに突き進む世界は正常か

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クラウドに突き進む世界

クラウドとはもう5年くらいのお付き合いになりますが、昔はコスト削減のツールだと思われていました。日経新聞のバズワードから始まりましたので、一旦は各企業でもクラウド化の検討はやってみたわけです。今のAIと状況は似通っています。しかし、そのための要件には必ず「コスト削減」という文字が埋め込まれていて、現場としては、そうじゃないんだけどな、という思いを抱えつつ仕事をしていました。

もともと、クラウド(インフラ)の費用にはインターネット回線費用、サーバーラックのレンタル費用、電力料金、保守費用や運用管理にかかる費用などがまるっと含まれています。一方でオンプレミスで計算するときは物理サーバーやネットワーク機器の費用ばかりが注目されがちです。単純比較するとクラウドは高いなって、いう言葉を何度も何度も聞かされてきました。クラウドだって、結局はデータセンターの上にある物理サーバーで動かし、回線につないでいるのですから大きく安くなるはずがない、のです。むしろオンプレミスに対して付加価値があるのですから高くなってしかるべき、です。

その黎明期のころと比べると随分状況は改善し、経営レベルの人のマインドも様変わりしました。

 

tech.nikkeibp.co.jp

それまではサーバーの購入であれば自動的に承認されていたが、クラウドファーストのポリシーによって担当者に申請させチェックする体制に変えた。「なぜクラウドを使わずにハードウエアを買うのかを逐一確認した。クラウドを使うことによってリスクを減らし、障害に対する冗長性を上げ、顧客である住民に対する信頼性を上げることができた。処理性能も8倍向上した」(リードCIO)。

 

感覚的に、こういうことを言う経営者が増えたと思っています。

クラウドにすべきか、オンプレミスのままでいくべきか。

もはやそこで悩まないのです。決めです。

クラウドで仕事をしている私からすると、これはうれしい事実です。いち早くクラウドに旅立った私に対して、同業からは冷たい目線がありましたからね。

 

なぜクラウドか

私は全てをクラウドで勝負したいと思った契機を話します。

オンプレミスの運用をやったことがある人はご存知だと思うのですが、壊れないハードウェアはありません。しかも24時間365日動かすのが常ですから、人間のライフサイクルとは全然関係ないところで不具合が発生します。

これを少人数で対応するなんて無理です。寝てる時も旅行しているときもどこでも、ハードウェアトラブルがやってきて、これに縛られるのです。

正しく対応するためには24時間シフトで運用部門を持つ必要があります。しかし、これには相当お金がかかるのです。常に2名体制としたいときは、急病や退職などのリスクを考えると3名は必要です。3名シフトを1カ月やるためには、

24時間 x 3名 x 30日 = 2,160時間

の工数が必要ですね。一名あたりの月間労働時間を140時間と計算すると、15名体制の運用部門が必要です。運用エンジニアが月50万だとすると、750万円の人件費がかかる。

・・・とすると、随分体力のある企業じゃないと、オンプレミスの運用なんて手を出したらいけないのです。それに気づいたのが5年ほど前でした。

クラウドだったら、基本的にはハードウェアトラブルから解放されます。全てはクラウドベンダーにて対応してくれます。判断が必要な対応に関しても、Webで調整すればいいだけで現地に行く必要もありません。そうなると大きな運用チームは不要となります。私は小さなシステムを供給し、かつ運用をローコストにしたいと考えていたので、すぐに価値を感じることができたのです。

また、サーバーの固定資産管理、保守の管理など事務的な作業からも解放されたことも魅力です。半年に一度、固定資産台帳を持って、本当にその機械がその場所に設置されていて、動いているか一日かけて確認したものです。固定資産を計上しているのに実際は使われていなかったり存在していなかったら、おかしな話になってしまいますからね。また、保守も機械ごとに管理しているので、保守更新の際に本当にその機械は使っているか確認しなければいけなかったりと、オンプレ運用は事務仕事がたくさん隠れていました。それもクラウドになった途端に無くなった仕事です。

こんなふうに、機械や電力など、目に見えるコストではなく、運用面などの見えないコストが非常に下げられるのがクラウドの魅力で、それが世の中に幅広く知られることになったのだと思っています。

 

緊張感は増していく

最近は、盲目的にクラウドが選ばれるケースすら増えてきたように思います。

もはやクラウドにすれば何でも解決するという雰囲気すら漂ってきました。

クラウドに関わっている人間とすると、緊張感が増してきました。確かにここ最近は大きなトラブルがクラウドでは起こっていません。小さな問題は日々起こるのですが、メディア記事に登場するようなことは起きていません。

これは、クラウドが社会に対して信頼を積み重ねてきた結果でもあります。

この信頼は、クラウドに関係する人々すべての資産であり、それぞれがこのブランドを守って育てていかなければいけません。

また、むしろクラウドじゃない方がいいのではないか、ということを主張するケースも出てくるのではないかと思います。私は全てがクラウドにあるべきだとは全く思いません。適材適所であるべきで、超重要システムは以前としてオンプレミスであるべきですし、運用エンジニアもたくさんつけるべきです。

クラウドについても、一つのベンダーに依存したシステム構成は良くないとも思います。ついにマルチクラウドの必要性がそろそろ一般化してくるのではないかと考えています。クラウドサービスごとバツンと落ちることは今年に入ってからもいくつかの事業者で発生しています。マルチで同時に落ちることはそうそうありません。

このように、「突き進む」態度は危険だと思います。世の中の経営者が「クラウド!クラウド!」と言い始めていますので、いやいや落ち着きましょうよと言っておきたい今日この頃です。