orangeitems’s diary

クラウドで働くエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

「プロマネは技術者の仕事ではない」論に関して

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プロジェクトマネージャーは技術者の仕事では、ない?

なんとなく楽しみにしている日経xTECHの連載。極言暴論というタイトルがゆえに味が濃いのですが、定期的にSI業界を考える機会となっています。

 

tech.nikkeibp.co.jp

そのテーマとは「プロジェクトマネジャーは誰が担うのか」である。私の答えは随分前から決まっている。「プロマネは技術者の仕事ではない」。そう言い切っていた。技術者が担っても構わないが、SEやプログラマーといった技術者カテゴリーの仕事とは全くの別物なのだ。

 

考察

大手のベンダーのプロジェクトマネージャー専門であったような方とたまにコミュニケーションする機会があるのですが、ズレを感じるときがあります。

大手だけに、プロジェクトの進捗管理と顧客との折衝を専門に行う職域があり、それをプロジェクトマネージャーと呼んでいるということは知っています。しかし、どうにもそのプロマネに技術的なことを質問しても、メンバーに聞いてみると言うばかりでダイレクトに回答が返ってきません。一方でメンバーはプロマネに隠れるばかりで話ができません。

私は大手SIerが言うところの小規模案件しかやらないのですが、小規模案件において大型のプロマネは非生産的な存在だと思います。直接話をしたほうが断然早いからです。中央集権的にマネージャーを置かずとも、直接会話をし、その会話を顧客やベンダー含むプロジェクト全員で、Backlogなどの課題管理ツールで確認し同期しあったほうが生産的です。これは小規模だからこそです。

一方、大規模ウォーターフォール、例えば100人規模のプロジェクトであれば、専門のプロジェクトマネージャーは絶対に必要でしょう。複数のプロジェクトに分割しその進捗を横ぐしで把握、クリティカルパスが影響を受ける事象を中心に情報収集を行う。そんなノウハウは必要で、特に建設業はこの分野が優れていると思います。建設業におけるプロジェクトマネジメントのノウハウはIT業界の比ではありません。世界レベルの進捗管理ができるからこそ、世界で活躍する建設業が存在していると思います。

さて、IT業界においてSIといえばウォータフォール型のシステム開発でした。ところが、ここ十数年を反省するに、いざリリースしたもののビジネスが拡大するでもなく。そうこうしているうちにハードウェアの保守が切れそうでそれならシステムリプレースするか。というような消極的なIT運用が中心でした。おかげで、企業のITチームは年中システムのリプレース準備で疲弊し、本来のIT活用を考える暇もなくビジネスに寄与出来ない。おかげでITチームの社内における位置は低く、切り離して子会社化したりアウトソースして人数を減らすなど、あまり良い扱いは受けていないと思います。

しかし、デジタルトランスフォーメーションという言葉がアメリカからやってきて、今後はどうもデジタル中心にビジネスを作り替えないと、異業種が黒船的にやってきて、自社の安定的な市場を破壊的に侵食してくる、となりました。今までお荷物だったITが、急に自社ビジネスのやり方まで変えるというのですから、去年あたりからどの経営者も宿題をもらった感覚にあると思います。ITを使ってビジネスそのものを変革しないと、今後の競争で負けてしまう。

ビジネスにITを取り入れる、ということを本気でやろうとすると、ウォーターフォールの旧来のSIでは全く追いつかないのです。今までの常識だと平気で2年くらいかけてシステムを構築しようとするのですが、そんな調子だとデジタルに強い競合他社がやってきて1カ月で情勢が大きく変わってしまいます。社会環境の変化に合わせてビジネスをどんどん変えていかなければいけないとしたら、それは小さなプロジェクトを同時にかつ並列に動かし、どんどんリリースしながら、状況に応じて大きくしたり終了させたりしなければいけないのです。これが今のアジャイルブームにつながっています。

一方で、ウォーターフォールのシステム開発も残ります。基幹システムなど、あまり変化が不要で安定が重要な役割だと今だにウォーターフォールであるべきだと思います。ただ、パッケージシステムやSaaSなど、標準化されているものにいきなり切り替えて、カスタマイズ無しで業務自身を変えるというアメリカ流も今後流行していくものと思います。今後ウォータフォールが伸びることはないのではないかと考えています。

このような背景を考えると結局のところ、プロジェクトマネージャーの職域は、プロジェクトの中ではなく、顧客とプロジェクトの間にあるのではないでしょうか。

 

結論

ということで、若手の技術者がプロジェクトマネージャーを目指すというのは王道ではないということについては賛同します。ただし、必要な役割であるのは今後も変わらないと思います。顧客目線で考えて、アジャイルの小規模開発「群」全体を束ねるマネージャーも必要でしょう。全体が整合性を取り、顧客のデジタルトランスフォーメーション戦略と一致しないといけません。質より量、とばかりに、たくさんアプリケーションを作ってリリースしまくったとしても、収集がつかなくなりブランド価値を下げるだけとなってしまいます。

一方で、マネジメントするための基礎技術の理解については、技術者(システムエンジニアやプログラマー)としてのスキルは依然として必要だと思います。顧客(経営者)とプロジェクト(技術者)との仲立ちをするための理解力が必要です。これは伝統的なスキルパスである、プログラマー~システムエンジニア~プロジェクトリーダー~プロジェクトマネージャーというラインから離れていないと思います。

プロマネは技術者の仕事では「ない」「ある」、ではなく、技術者のスキルをもってプロマネに昇格するのは未だに「ある」。しかしそのときはすでに技術者ではないと思います。

単に小規模案件を回すだけなら、プロジェクトマネジメント専業の役割はいらず、そのための課題管理ツールをプロジェクト全員で利用すれば良いからです。

繰り返しますが、プロジェクトマネジメントは顧客(経営者)とプロジェクト(技術者)の間に立ち、両者を調整する役割となっていると思います。プロジェクトマネジメントは技術者の仕事ではないです。しかし、不要ではありませんし、技術者の持つスキルも必要で、顧客(経営者)の持つビジネススキルも必要となる、高い資質が必要な職域です。このような捉え方をするべきであり、ウォーターフォールの残骸のような捉え方をするべきではないと思います。