orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

横浜市「RPAの有効性検証の成果について」を読んで、仕事とは何かを思い知らされる

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もう他人事ではいられないRPAの絶大なる効果

昨日のエントリー、富士通の早期退職/ジョブ再配置に関する記事の反響はとても大きく、社会全体で仕事とは何かを見つめなおす契機ともなりそうだと思いました。

一方で、もう一つ気になるニュースを見かけました。

 

it.impressbm.co.jp

横浜市、NTT、NTTデータ、クニエのは2019年3月18日、RPA(ロボットによる業務自動化)の有効性を検証する共同実験の結果報告書を公表した。報告によると、RPAを試験導入した事務で、平均84.9%、最大99.1%の作業時間削減効果を確認した。横浜市は、共同実験の成果を踏まえ、RPAの本格導入に向けて引き続き検証を進める。

 

99.1%が削減ということは、その仕事って「まぼろし」だったのではないかと思うほどです。その業務を定常的に実施していた職員は確実にいるわけで、「RPAによる人減らし」は、破壊的な威力を持って現場を荒らしに荒らしているとしか言いようがありません。

と、煽ってばかりいるのも気が引けるので、実際のこの横浜市から出ている報告書を読みに行きました。

 

www.city.yokohama.lg.jp

横浜市と日本電信電話株式会社、株式会社NTTデータ、株式会社クニエは、データやICTを活用した効率的・効果的な行政運営の推進や、積極的な働き方改革や長時間労働是正の取組を実現するために、2018年7月に締結した包括連携協定に基づき、「RPAの有効性検証に関する共同実験」を実施しました。

 

せっかく公表されているのですからぜひ見てみよう。・・・と思い読んでみたら、なんだか胸が詰まりました。RPAのヤツ・・ひでえでやす。。。

 

報告書の内容

この報告書、いらすとやの絵が散見されるのが玉に瑕ですが、わかりやすい文書なのでたくさんの人が読むべきと思います。特にまだ社会に出ていない学生の方、オフィスが今こんなことになっているんだよということを早めに気が付ける文書です。私はたくさんの職場を知っているだけに、リアル過ぎて少し涙が出てきましたよ。

報告書を開いた後8ページ目までは基本的な内容なので斜め読みするとして、9ページ目から急にペースアップします。下記の図を見てください。

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この3番目。

勤務時間集計事務

・市職員の勤務時間を集計している事務。〇〇システムで出力されている帳票から対象職員を手入力で集計表に転記している作業。

・利用環境:〇〇システム、Excel

・マニュアル有無:無し

 たくさんの報告書を作成してきたから私から言わせると、「SAMPLE」はサンプルではないっ。絶対この仕事ずっとやってきた人いるでしょう横浜市!?(主観)。勤務時間集計システムからクエリーして、Excelに勤務時間の集計を作成する仕事!。

このアウトプットは労務管理上必要なのはわかるし、〇〇システムをカスタマイズする予算もないから、定期的に作らされていたんでしょうね・・。

もちろん、労務管理は立派な仕事なんですが、労務管理に行きつくまでにシステムをさわってExcelに転記するという仕事は創造的な仕事では決してない・・ですよね。この業務に長期間ハマっていた人がいると思うと。

 

10ページまで行くと、正体を現す、横浜市のヤバい業務たち。

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票から表に転記する!

ファイルにパスワードかけてメール!

メールアドレス申請を見て、メールアドレスを作り、発行!

番号入力!クエリー!確認!

クエリー!まとめて一覧表!

エクセル見ながら画像をローカルに保管!(ローカル・・・)

ダウンロード!グループウェアに登録!

 

・・・と、これを律義に日々取り組んでた方もいらっしゃる。まじめに仕事に取組み正確かつ迅速にアウトプットし、誇りを持つ。

正しいことではあるのですが、この仕事、何のスキルにも・・ならない。

SIerはシステム化でこう言ったことを要件化しシステムに実装するのですが、システムが定型であるのに対して、業務要件は日々変化していきます。その影でこんな非人間的な仕事がはびこり、人間の労働力を奪っているのかとひとしきり感傷的になります。

11~14ページはこれらの業務をワークフロー化した図ですね。マニュアルがない場合はこれらを、口伝で人から人へ伝説のようにOJTしてたんですね・・。ありがちな話だ。

15~17ページは半分宣伝になっていますが、実際のRPAの世界を垣間見るには良い資料かと思います。身の回りに適用できそうな仕事があれば想像を膨らませてもいいでしょう。ただこれって、SIでもなんでもなく、人の行動をマクロ化しているだけですが。だからこそ現場の人も食いつくのでしょうね。

18~21ページは、RPAをワークフローに適用した結果。まあそりゃそうなるでしょうな・・。

22~25ページは各業務ごとの効果判定。90%台の削減率を見ると、現場は何に対して消耗していたのか哲学的に自問自答してしまいそうになるのではないでしょうか。

あとの考察はおまけのようなものだと思います。もはや事実に驚愕すると同時に、たくさんの澱んだ仕事があるということを知らなければいけません。

 

めでたしめでたし・・ではない

1980年代からオフィスのOA化、OA化と言ってももう誰もおぼえてないですかね。コンピュータが会社に入ってきてオフィスオートメーションが始まりました。SIerがたくさんシステムを作ったのですが、結果的に「システムから転記する」「一覧にまとめる」「クエリーして抜き出す」という仕事が大量に生まれました。システムは人間の活動に対して柔軟性が欠けており人間側で吸収していたということですね。

それが謎の定型業務に切り取られるという悲劇、そして非正規職員に押し付けられ、非正規職員は生産性の向上はミッションではないので置き去りに。そんな日本が俯瞰で見えてくるような報告書です。

ここから一番大変なのは、この澱みに長期間ハマってしまった大量の人々をどのように、「ロボットには代替できない業務」へ転用するかということです。経営者は勝手に、人間的な想像力の必要な業務が「働く誇りや働き甲斐にも繋がる」と考えがちなのですが、果たしてそうなのでしょうか。定型化されたルーチンを正確にこなすのが生きがいの人だってたくさんいると思います。あまりきちんとした絵が描けていないまま、90%超の仕事が削減されていくのですから、ぜひ労働者はこの事実を正確に把握し自分の身の置き所を考えていかなくてはいけません。「ジョブの再配置」で済んでいるうちはまだ平和だと、痛切に思います。