orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

漫画村運営者特定報道への所感

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漫画村の問題については本ブログ開設当初から状況を追い続けていましたので、運営者特定報道に関して、個人的な所感をまとめておきたいと思います。

 

対象のニュース記事

こちらの記事にて、運営者が特定されたかもしれないとの記載があります。

 

www.buzzfeed.com

著作権を無視した漫画の海賊版サイト「漫画村」の運営者とみられる人物を、日本の弁護士が特定したことがBuzzFeed Newsの取材でわかった。

米国での訴訟手続きを通じて、漫画村にCDN(コンテンツ配信ネットワーク)サービスを提供していたクラウドフレア社から、サービス契約者などに関する情報を得たという。今後は日本国内で刑事告訴、民事訴訟を行う構えだ。

 

画期的だったこと

クラウドフレア社が海賊版コンテンツの配布に対して、絶大なるエンジンであったことは言うまでもありません。昨日の「漫画塔」騒ぎでもクラウドフレア社のCDNが使われていました。Anitubeもクラウドフレア社でした。

そのクラウドフレア社が、利用者情報を保持しているのは言うまでもありません。実際に漫画村のような利用のされ方していると被害者から直接告発を受けたときに、どのような対応をするかは見方が分かれていました。そもそもアメリカの会社であるので、日本人がどう対応すればいいのか誰もわからなかったからです。

今回、以下の体制で臨んだと記事にあります。

1)原告は、匿名の漫画家
2-1)原告代理人は、カリフォルニア州弁護士の資格も持つリンク総合法律事務所の山口貴士弁護士
2-2)山口貴士弁護士が、米ロサンゼルスにあるロバート・W.・コーエン法律事務所へ協力を求める
3)弁護士と漫画家の間の連携は、インターネットユーザー協会幹事の中川譲氏

以上の状況で、アメリカで被告は「不明」としつつ、民事訴訟を提起したとあります。

上記を行ったうえで、アメリカの「証拠開示手続き(ディスカバリー)」を行い、その中でクラウドフレア社の利用者情報までたどり着いたとのことです。

このワークフローが今後の海賊版サイト摘発において、スタンダード化するのは間違いありませんしかつ抑止力となるでしょう。CDN運営会社はほかにもありますが、数は限られていますし、アメリカ企業がほとんどです。同じ手続きを踏むことができます。

 

まだ残る懸念

今回の件で特に思うのは、被害者が日本にいて、加害者もおそらく日本にいるというときに、アメリカの司法で解決しなければいけないという状況は喜ばしくないということです。アメリカの司法はアメリカの国民によって維持されている制度です。まだ日米は親密な関係なので良いものの、これが中国であったらどうでしょう。事情が異なってくると思います。得にMiomioは中国のサイトだったことが記憶に新しいです。基本的には日本の制度の中で全てが執り行われないと、日本人だけではどうしようもないというマズイ状況に甘んじてしまうことになります。

次の問題点ですが、おそらくこのアメリカの「証拠開示手続き(ディスカバリー)」について、非常に有効な手段なので日本でも採用しようという動きが出ることが予想されることです。今回は日本の世論も漫画村への対処の必要性については全員一致するところであったので、今回の一連のアメリカでの動きは画期的に見えます。もともと日本でもディスカバリーができていたら、もっと日本国内で迅速に事が運んだのでは、ということになります。クラウドフレア社は日本でもCDNのエッジサーバーを開設していることから、日本での活動があったのは明白だからです。しかし、このディスカバリーを安易に日本の司法へ取り入れてしまった場合、副作用も考えられます。民事訴訟を皮切りにいろんな契約情報を開示されたとき、安易にこれを今回の記事のように公開されてしまうようになるのは不安です。しかも、今回の民事訴訟は「取り下げ」で終わっています。証拠開示そのものが目的で、民事訴訟は手段というのは、濫用の危険性を含んでいると率直に感じます。

 

是々非々で最善の選択を

「秋の臨時国会で新法を・・」の方向性のもと、今年中には海賊版サイトに対する一定の対処方法が決まっていくと思います。ディスカバリーの件は、アメリカでの運用方法をより研究しつつ、全ての日本人の益となる形で決定されていくことを望みます。

ただ、まずは今回の件は、進展がありかつ今後の抑止となる事例で良かったと思います。関係者の努力は素晴らしいと思いました。

 

アメリカ人のみた日本の検察制度―日米の比較考察